コロナ禍におけるコンタクトセンターの在り方
2021.10.06 2024.05.07 衣笠 雄海
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2021.10.06 2024.05.07 衣笠 雄海
新型コロナウイルスの影響により、昨今コンタクトセンターでは様々な感染防止対策が取られています。コンタクトセンターでのワクチンの職域接種を行っている企業もあれば、センターのファシリティや働き方にも対策を講じているセンターもあります。
しかしながら、一般的には明確な感染防止の取り組み基準が定義されていないことから、現時点では各社様々な対策を講じている状況です。ここでは、第三者目線でコンタクトセンターを診断する視点から、コロナ感染対策のポイントを解説します。
コロナ禍において、多くの人が集まるコンタクトセンターは感染防止策の徹底を図り、クラスターを防止することを求められています。コンタクトセンターの業界団体である日本コールセンター協会(CCAJ)から2020年5月に『コールセンターにおける新型コロナウイルス感染症対策に関する指針』が発表されており、各社で様々な感染防止策を実施しています。
コロナ対策における取組は大きく2つに大別されます
上記の対策を予め策定しておき、PDCAを回し続けることが重要となります。
各社それぞれの解釈のもとにデスクトップリサーチや、他社事例を基に独自の感染防止策を講じています。しかし、防止策を講じた後にはその取り組みが一過性に終わったり、作った仕組みが形骸化しているといった事例をよく耳にします。また、コンタクトセンターにおけるコロナ対策の究極の形である「在宅コンタクトセンター運用」を導入するにしても、システム基盤の制約や運用整備、人事制度の改定など整備までのハードルが高く、思うように進まないことが多々あります。
こういった問題を解決するために、外部の知見を借りて自社のコロナ対策の見直しを行い、感染予防と対策を徹底しているセンターも増えています。ここでは、そのコロナ対策アプローチと対策のポイントを紹介します。
コロナ対策は、一般的に物理的な対策(消毒液の設置やパーテーションの設営等)と、その物理的対策を有効に機能させるための行動・マインド面の醸成の両輪で動かすことが重要となります。
最近では、新型コロナワクチンの職域接種なども対策が行われていますが、コンタクトセンターにおいてコロナ発生を最も減らす有効な手段としては、人と人との接触機会をなくす「コンタクトセンターの在宅化」が挙げられます。ただし、在宅コンタクトセンターの運用はシステム制約や運用範囲の整備など、様々なハードルをクリアしなければならず、コスト面も含めてクイックに進めることが難しいという課題が挙げられます。そのため、まずはコンタクトセンターの中で実現が可能な物理的な対策を講じた上で、中期的に在宅運用に向けた整備を進めているケースが多くあります。
コンタクトセンターにおける物理的なコロナ対策としては、入退室フロアでの消毒液の設置や非接触の体温計、ヘッドセット・キーボードの個人貸与、休憩スペースでのアクリル板設置が代表的です。
ただし、それらの物理的な対策を行うだけではなく、実際に適切な運用が遂行されているかが重要なポイントとなります。例えばフロアに入室する際に接触感染防止のためのアルコール消毒のボトルを設置している場合でも、そのボトルの中の消毒液が空になっている、または設置はしているが周知徹底されておらず、従業員の何名かは消毒を行わずフロアに入室している。といった事象が発生する場合があります。
そういったことを防ぎ適切に運用が遂行されているかを把握するためには、第三者によるチェックを行うことが効果的です。様々な手法がありますが、事前にコンタクトセンターの担当者に物理的対策の実施項目に関するアンケートやチェックシートを聴取した上で、実際に現地調査とコンタクトセンターの従業員に対するインタビューなどを行うことで、従業員のマインド面を含めた施策の運用状況を正確に把握するとが可能なります。
また、在宅コンタクトセンター運用を実施していない、または一部限定的に実施しているセンターの場合であれば、在宅コンタクトセンター運用の実現度合いも併せて調査することも必要となります。
主な調査の視点としては以下となります。
従業員の在宅運用に対する協力度の調査では、現時点でどの程度の在宅運用のポテンシャルがあるか(自宅で在宅コンタクトセンター運用に応じてくれる人がどれくらいいるか)を把握すると共に、在宅運用における課題がないかを把握します。これは、マネジメント層の先入観から在宅運用の方が従業員にとって魅力的であると考えている場合でも、実は従業員からすると必ずしもそうでないケースがあります。
実例としていくつか例を挙げると、「自宅に個室がないため、家族の会話が電話口に入らないか不安である」、「突然自宅のインターフォンがなった場合に困る」、「在宅でずっと仕事を続けていると孤独感を感じる」など、実際に調査を行ってみると上記の理由などから、実は半数の従業員は在宅勤務を好まないという結果となった例もあります。
一方で、在宅運用時の応対品質調査については、構築する環境にもよりますが、実際に在宅環境で試験的に運用し、トライアルを通じて運用上の課題を抽出することが効果的です。調査では主にコンタクトセンターのKPIとなる数値、例えば生産性(AHT、CPH等)や品質(NPS、お客様満足度調査等)やシステム環境(音声品質、システムレスポンス等)が、コンタクトセンターでの運用と在宅環境においてギャップが生じていないかを調査し、実用レベルにあるかを判断します。
この2つの調査を通じて出た課題に対して、運用とシステムの両面から対策を講じることが重要なポイントとなります。
コロナ対策は、様々な軸で対策を講じる必要があるため、状況把握や抽出した課題を整理するための「フレームワーク」が重要となります。弊社ではコロナ対策においては、日本コールセンター協会(CCAJ)のガイドラインを基に以下のフレームワークに基づき評価を行っています。
「コールセンターにおける感染防止対策の徹底」は、主に共有部での消毒状況や飛沫感染防止施策、コロナ感染時(濃厚接触含むの対応基準、センター内への展開方法などを含めた接触感染の防止施策が徹底されているかを評価します。
「緊急事態宣言下におけるセンター事業運営」は、在宅運用への検討状況、有人から無人対応への切り替え、採用・研修などの非対面化の取り組み状況を評価します。
「従業員への適切な配慮ならびに雇用の維持」は、在宅運用の推進、特別休暇の整備、従業員の雇用維持の取り組み状況を評価します。
「コールセンター従業員の感染対策」は、従業員の健康相談窓口の設置状況、休憩室など感染リスクが高い環境への配慮などの状況を評価します。
その上で、評価は3つのレベルに分けて判断しています。①該当する項目の取り組みや課題対策が徹底されており、かつ感染リスクを回避する施策が打たれているのか、②一般的にコンタクトセンターで求められる基準で実行されているのか、③一般的にコンタクトセンターで求められる基準で実施できていないものなのか、を1つ1つ総合的に評価しています。
コロナ対策がしっかりとできている部分については、現在の対策が形骸化しないよう引き続き運用管理を行います。逆に実施できていない部分については、早急に対応する、といったように対策の優先度をつけ着実に実行していくことが重要となります。
コンタクトセンターのコロナ対策は様々な感染防止策があり、どこまで対策を講じても完璧な状況にすることは不可能です。それ故にコンタクトセンターの担当者の負担は大きく、終わりのない取り組みとなります。しかしこのベンチマーク情報を参考に物理的、行動・マインド面のコロナ対策を講じ、第三者によるチェックを通じて取り組むべき優先課題の明確化と対策を着実に実行することで、コンタクトセンターのコロナ感染リスクやクラスター発生リスクを最小限に抑えることができます。
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