コンタクトセンターの転換期:コンタクトセンター業界は、生成AIの台頭によってサービスの在り方も変わろうとしています。もはや従来のリアクティブなコンタクトセンターでの応対にとらわれることなく、企業は予測的、共感的、最適化されたアプローチへとシフトしています。
このブログでは、CXone Mpowerの成り立ち、画期的な「Mpower」のコンセプト、プラットフォームの爆発的な成長、そしてグローバルでの影響力について、コンタクトセンターでの応対業務に対する考え方を一変させるような驚くべき事実とともにご紹介します。
NiCE社の歩み、CXoneとは?
コンタクトセンター業界に携わっている方であれば、NiCEが1986年に設立されたことをご存知かもしれません。NiCEの設立は、単なるスタートアップ企業の誕生ではなく、独自のイノベーション文化の象徴となっています。
設立当初は、高度な通信技術と情報処理技術を活用した技術開発に注力していましたが、1990年代初頭、NiCEは電話音声録音システムの開発に着手します。これが一度目の転機となり、同社の民間市場への本格的な進出の第一歩となりました。金融機関や航空会社、保険会社など、通話記録が重要な業界において、NiCEの技術は瞬く間に注目を集めコンタクトセンターの一躍を担う存在となりました。
CXoneの誕生は、NiCEが2016年にinContactを買収したことで業界に衝撃を与えるとともに、二度目の大きな転機となっています。当時多くの専門家は、オンプレミスのコンタクトセンターは今後も存続すると考えていました。しかし、当社は今後クラウドベースのカスタマーエクスペリエンス(CX)が重要視されると見込み、クラウドシフトへと大きな舵をきりました。そしてこの決断は会社の大きな成長と業界シェアを獲得するための非常に重要なきっかけとなりました。
2021年9月:CXone 日本市場へリリース
クラウド型カスタマーエクスペリエンス(CX)プラットフォーム「CXone」の日本国内提供を正式に開始しました。
このタイミングは、コロナ禍によるリモートワークの普及や、非対面チャネルの需要増加といった社会的背景と重なり、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するソリューションとして当時大きな注目を集めました。
「CXone」は、オムニチャネル対応、AIによるワークフォース最適化、顧客分析、ナレッジマネジメントなどを統合した、クラウドネイティブなCCaaS(Contact Center as a Service)プラットフォームとして、弊社は日本市場に新たな選択肢を投じることができたのではないだろうかと考えています。
2024年6月11日、NiCEは「CXone」を「CXone Mpower」へとリブランディングしました。
◎ご存じでしょうか。
CXoneを導入する前は、30種類以上のIVRアプリケーションを使い分けていた企業もありました。CXone Mpowerは、すべてを単一で効率的な拡張可能なプラットフォームに簡素化し、コスト構造と顧客満足度の両方を実現します。
CXone Mpower: 次世代AI CXプラットフォーム
CXone Mpowerとは?
CXone MpowerはNiCEの最も先進的なAI自動化プラットフォームで、企業が顧客と関わる方法を変革するために構築されています。
CXone Mpowerの真価は、「Workflow」「Agent」「Knowledge」という3つの柱にあります。
この章では、それぞれの柱がどのように連携し、カスタマーサービスを革新しているのかをわかりやすくご紹介したいと思います。
1. Workflow(ワークフロー)― 顧客対応の“流れ”をAIで最適化!
CXone Mpowerのワークフローは、単なる業務の流れではありません。
AIが設計・構築・運用までを一貫してサポートし、顧客対応のプロセスを自己最適化していきます。
- 設計:あらゆるサービスロールに対応するワークフローをゼロからデザイン
- 構築:カスタマーサービスとバックオフィスシステムとをシームレスに接続
- 運用:AIメモリが過去のデータを学習し、常に最適な対応を実現
<ポイント>:人手では追いつかない複雑な業務も、AIが自動で最適化します。
*グローバル先行リリース機能
2. Agent(エージェント)― AIと人間が“最強タッグ”を組む!
CXone Mpowerでは、AIが人間のエージェントと協働することで、対応スピードと品質を飛躍的に向上させます。
- 設計:AIと人間が連携する体験を設計
- 構築:過去の会話データを活用して、AIエージェントをすばやく育成
- 運用:AIコパイロットがリアルタイムでエージェント応対を支援し、生産性を最大化
<ポイント>:AIが“補助”ではなく“相棒”になる時代へ!
3. Knowledge(ナレッジ)― 情報を“知恵”に変えるAIの力!
ナレッジの柱では、社内外の膨大なデータをAIが整理・活用し、文脈に応じたインサイトを提供します。
- 設計:ナレッジ、データ、AIモデルを統合して自動化を設計
- 構築:セキュリティとガバナンスを確保しながら、ナレッジベースを構築
- 運用:必要な情報を、必要なタイミングで、必要な人に提案
<ポイント>:情報の“迷子”をなくし、顧客対応の質を底上げします。
<カスタマーサービスを革新するCXone Mpowerの主要な機能>
- AIワークフロー:カスタマーサービスとバックオフィスのチームをシームレスにつなぐ自己最適化プロセス。
- スマート・エージェント:AI Copilotが効率を高め、人間のエージェントに力を与え、スムーズなやり取りを実現します。
- ナレッジ・マネジメント:自動化されたデータモデルにより、卓越したサービスのための洞察をリアルタイムで提供します。
CXone Mpowerは年間数十億のインタラクションを処理し、フォーチュン100社の企業が業界を超えてCXを向上できるよう支援します。
開発ストーリー:なぜ "Mpower "なのか?
CXoneからCXone Mpowerへとリブランディングをしましたが、Mpowerとはどういうことなのかということをここでご紹介したいと思います。
「CXone Mpower」という名前を初めて聞いたとき、「Mpowerって何?」と思った方も多いのではないでしょうか。
実はこの“Mpower”には、弊社が描く次世代のカスタマーエクスペリエンス(CX)戦略が凝縮されているのです。
「Mpower」は、“Empower(力を与える)”と“AIの力(Machine Power)”を掛け合わせた造語となっています。弊社が掲げるビジョンは、AIと人間が協働し、顧客と企業の関係をより深く、よりパーソナライズされたものに変えていき企業のブランド力を向上し、顧客満足度を高めることです。
3つの中核機能でCXを再構築
CXone Mpowerは、以下の3つの革新的なAI機能を統合し、従来のコンタクトセンターの枠を超えた“インテリジェントCX”を実現します。
- Copilot:エージェントの“右腕”としてリアルタイムで支援。顧客の感情や意図を理解し、最適な対応を提案します。
- Autopilot:セルフサービスの自動化を担い、チャットボットや音声ボットが自然な対話で顧客課題を解決を支援します。
- Actions:顧客の行動履歴や文脈をもとに、リアルタイムで最適なアクションを提示します。CXの“次の一手”を導く。
CXone Mpowerがもたらす価値
顧客体験の一貫性とパーソナライズ
チャネルをまたいでも、顧客の履歴・感情・ニーズをAIが記憶し、文脈を理解した対応が可能となります。
業務効率の飛躍的向上
AIがルーティン業務を担うことで、エージェントはより複雑で価値の高い対応に集中することができるようになります。
意思決定の高度化
リアルタイム分析と予測により、マネージャーや経営層も迅速かつ的確な判断が可能になります。
「Mpower」という名前は単なるブランディングではなく、企業がカスタマーサービスにAIを活用する方法の根本的な転換となることを私たちは期待しています。
<CXone Mpowerで実現できること>
- Mpower=AIによるエンパワーメントの実現
- ビジネスをコントロールし、最適化・予測し、カスタマーエクスペリエンス(CX)を向上
- 顧客とのインタラクションが単に応答的であるだけでなく、インテリジェントでプロアクティブなものへと改善
CXone Mpowerは非効率を断ち切るために、分断されたシステムを統合し、顧客第一革命を起こすために開発しました。
弊社CX部門プレジデント、バリー・クーパーはこう語っています:
「CXone Mpowerは、組織がCXのすべてを達成できるようにする“聖杯”であり、企業のあらゆるニーズに対応します。これはNiCEが過去10年間に推進してきた絶え間ないイノーベーションの集大成であり、すべてのソリューションを単一の革新的な製品に統合したものです。CXone Mpowerは、CXoneのインタラクション中心のプラットフォーム、NiCEの最高峰のソリューション、そしてEnlightenのCX専用AIを融合した、豊かな融合です。従業員の能力を最大限に引き出し、AIを活用した卓越したインタラクションを推進し、全体的なパフォーマンスを飛躍的に向上させます。」
つまり、Mpowerとは単なる製品名ではなく、企業と顧客の関係を根本から変える“力”そのものなのです。
◎結果は?
グローバルでは顧客満足度(CSAT)が最大40%向上し、サービスコストが最大50%削減することを実現しています。
CXone MpowerはどのようにCXを変革しているか
この章ではグローバルでの事例も含めてどのようにCXを変革しているのかについてご紹介したいと思います。
CXone Mpowerは、金融、ホスピタリティ、リテール、そしてそれ以外の分野でも、ゲームチェンジャー的な成果を生み出しています。
それぞれ特徴的な業界での事例を含めてご案内したいと思います。
【エンタメ業界】 Disney Streaming:4ブランドのCXを一元管理
- 導入背景:
Disney+、Hulu、ESPN+、Star+という複数のブランドを展開するDisney Streamingは、ブランドごとに異なるCX基盤を持っていたため、運用の複雑さと顧客体験の一貫性に課題を抱えていました。複数のブランドを一元管理するためにCXoneが採用されました。
導入効果:
- 4ブランドのCXプラットフォームを統合することでデータを一元管理/li>
- 顧客満足度(CSAT)を大幅に向上
- オペレーションコストの削減と対応スピードの向上を同時に実現
ポイント:マルチブランド運営の効率化とCXの一貫性を両立!
【コンシューマー業界】ネスプレッソ:自己解決率が12倍に!
- 導入背景:
世界中に顧客を持つネスプレッソは、問い合わせ対応の負荷増大と顧客の自己解決率の低さに悩んでいました。
導入効果:
- AIによるナレッジベースの最適化
- 顧客の自己解決率が12倍に向上
- コールセンターの対応時間を大幅に短縮
ポイント:AI活用で“問い合わせ前に解決”するCXを実現!
【医療・保険業界】グローバル保険会社:対応品質とコンプライアンスを両立
- 導入背景:
複雑な規制対応と高い顧客期待に応えるため、正確かつ迅速な対応が求められていました。
導入効果:
- AIによるリアルタイムガイダンスでエージェントの対応品質を均一化
- コンプライアンス違反のリスクを大幅に低減
- 顧客満足度とNPS(ネットプロモータースコア)が向上
ポイント:規制対応とCX向上を両立する“スマートな保険対応”!
【ホスピタリティ業界】マリオットホテル:6,500人のエージェントが一体化
- 導入背景:
20拠点・8,400以上のホテルを支える巨大なCX体制が、レガシーシステムの限界に直面していました。
導入効果:
- CXone導入によりシステム更新時間を大幅短縮
- ベンダー数を削減し、運用の複雑さを解消
- グローバルスケーラビリティを実現し、46百万件の年次インタラクションを効率化
ポイント:世界規模のCX統合で、柔軟かつ高品質な顧客対応を実現!
【金融業界】MoneyGram:グローバルな送金体験を刷新
- 導入背景:
世界200か国以上でサービスを展開するMoneyGramは、多言語・多通貨対応のCXに課題を抱えていました。
導入効果:
- CXone導入により顧客対応の一貫した品質とスピードを向上
- AIによる問い合わせ分類とルーティングで、対応時間を短縮
- 顧客満足度とエージェント生産性が大幅に改善
ポイント:複雑な国際金融サービスでも、CXの質を標準化!
まとめ:成果が証明する、CXone Mpowerの実力
業界や規模を問わず、CXone Mpowerは「顧客満足」と「業務効率」の両立を実現しています。
AIと人の力を融合し、“今”の顧客に最適な体験を届ける。それが今CXone Mpowerが選ばれる理由となっています。
国内でも多くの企業様からお問い合わせをいただいており、すでに導入いただいている有名企業も増えてきました。
日本の皆さんに発表できるのを私たちも今から心待ちにしています。
CXone Mpowerの未来
コンタクトセンターは今、かつてない変革の渦中にあります。生成AIの進化、顧客の期待値の高度化、そして人材不足という社会的課題も重なり、従来の「受け身の対応」から「先回りする体験」への転換が求められています。
また多くの企業のDX化が加速する中、コンタクトセンターは単なる「問い合わせ窓口」から、企業と顧客をつなぐ戦略的な接点へと進化しています。
今後は、AIと人間の協働による“ハイブリッド型CX”が主流となり、リアルタイム性・パーソナライズ・自己解決支援が求められる時代へと突入するでしょう。
このような背景の中で、CXone Mpowerは単なるツールではなく、未来のCXを形づくる“戦略的基盤”としてすでにグローバルで注目されています。特に注目すべきは、AIが単に業務を自動化するのではなく、人間の判断力や共感力を補完し、さらに強化する存在として機能する点です。
たとえば、AIが顧客毎の過去の行動や感情を記憶し、次に起こるであろうニーズを予測して、エージェントにリアルタイムで提案する。あるいは、顧客が問い合わせをする前に、最適な情報を自動で提供する。こうした“プロアクティブなCX”は、もはや未来の話ではなく、CXone Mpowerによってすでに実現されつつあります。
また、CXone Mpowerは拡張性と柔軟性にも優れており、業界や企業規模を問わず導入が可能です。クラウドベースであるため、リモートワークや多拠点運営にも対応しやすく、変化の激しいビジネス環境にも柔軟に適応できます。
前章でもご紹介した事例が示すのは、CXone Mpowerが業界や国境を超えて成果を出しているという事実です。
では私たち日本市場の企業の皆さんへ、CXone Mpowerはどんな価値をもたらすのでしょうか。
日本では、少子高齢化による人材不足や、顧客の期待値の高度化が進む中、限られたリソースで高品質なCXを提供することが急務となっています。
CXone Mpowerは、さまざまなチャネルからのカスタマージャーニーを一元管理し、AIが過去のやり取りを記憶して最適なタイミングで最適な対応を提案することで、エージェントの負担を軽減しながら、顧客満足度を向上させます。
さらに、ナレッジの一元化と自動化により、新人でもベテラン並みの対応が可能になり、属人化の解消にもつながります。これは、特に日本のようにサービス品質を重視される市場において、大きなアドバンテージとなるでしょう。
さらに、今後は生成AIの進化により、より自然な対話、より深いパーソナライズ、より高度な意思決定支援が可能になると予測されます。
CXone Mpowerは、こうした未来の技術革新を取り込みながら、常に進化し続けるプラットフォームです。企業がCXを競争優位の源泉とする時代において、CXone Mpowerは単なる選択肢ではなく、未来のCXを共に創るパートナーとなる存在です。
日本の皆さんへ──CXの未来は、すでに始まっています
CXone Mpowerは、単なる「効率化ツール」ではありません。それは、顧客と企業の関係をより深く、よりスマートに進化させる“未来のCX基盤”です。
今こそ、日本企業も「守りのCX」から「攻めのCX」へとシフトする時ではないでしょうか。
CXone Mpowerとともに、顧客に選ばれ続ける企業を目指してみませんか。
まとめ
CXone Mpowerは、AIと人の力を融合し、顧客との関係をより深く、よりスマートに進化させる革新的なプラットフォームです。
今後のCXは、予測し、共感し、最適化する“プロアクティブな体験”が主流となります。
日本企業がこの変化をチャンスに変えるためには、従来の枠にとらわれない発想と、柔軟なテクノロジーの活用が不可欠です。
CXone Mpowerは、その第一歩を支える最適なパートナーとなると私は信じています。
未来のCXは、すでに始まっています。今こそ、共にその一歩を踏み出しましょう。
*日本語訳担当: ナイスジャパン株式会社 Partner Sales Manager 道下理世
執筆者紹介

シンガポールで5年間ASEAN地域と戦略的アカウントを担当した後、北アジア(日本、韓国、グレーターチャイナ)でNiCE社の発展に注力し、AIとクラウドを活用したCXトランスフォーメーションを推進している。コンタクトセンター業界には20年以上従事しており、現在は東京を拠点にイノベーション、地域成長、カスタマーサクセスの強化に注力している。
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