内製コンタクトセンターの課題を可視化するためには

 2025.01.24 2021.09.14

コンタクトセンターの運営形態は大きく2つに大別されます。自社で内製運用を行うパターンとアウトソーサーに運用を外注するパターンです。アウトソーシングはそのアウトソーサーの知見と自社内ビジネス知見を組みあわせ、運用の高度化・最適化を実現します。一方、内製コンタクトセンターでは、品質、効率、顧客満足の点で課題を抱えており、コンタクトセンター担当者が改善を試みるものの、状況が変わらないことも多くあります。ここでは、内製コンタクトセンターの高度化に向けて、課題の可視化、解決の視点を運用事例をもとに整理します。

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内製コンタクトセンターによくありがちなこと

内製コンタクトセンターの担当者の方が抱える課題は、

  • 問題が次から次へと発生し、解決すべき本質的な課題が特定できず、個別事象の対処に追われている
  • やることが多すぎて、落ち着いて考え、対策を講じるためのリソースやスキルが十分にない
  • 状況を解決するために導入すべきツールやシステムに関する情報が足りていない、あるいは多岐に渡っていて、製品を特定できない
  • 各種改善施策を企画しても、現実の制約事項を理由に現場からの賛同を得られず、なかなか改革や改善が進まない
  • それらの状況に反して、市場の技術革新やトレンド情報に基づき、上司からは革新的なコンタクトセンターへの変革要求が強く、現場と会社の期待との間で板挟みになっている

などがあります。

これらの状況に対して、担当者は市場から情報を集め、現場の声を聞き、妥協点を見出し、手探りで解決手段を講じ、PDCAサイクルを回すものの思ったような成果が得られず、八方塞がりな状況になっていることをよく耳にします。なぜ、ことのような状況に陥ってしまうのでしょうか?それは内製運用では、課題を体系的に整理する術がなく、個々の経験と勘に頼らざるを得ない状況のため、システムやツールを提供するSierからの情報を鵜呑みにしてしまうなど、主観的な判断に基づいて改善アクションを取ってしまうことに起因します。

こういった問題を解決するため、内製運用の継続を前提としつつ、課題解決のために外部の第三者の知見を借りて改善・改革に着手する企業が増えています。第三者の専門家によって、課題を体系的に整理し、解決のための運用の施策や、効果的なシステム・ツールを導入・活用することで、内製運用の良さを活かしながら、不足している知見を補完することで大きな成果を生み出すことができます。

第三者の知見は多様で、いろいろあります。そこには多くの企業での運用経験に基づいた成功・失敗体験が多く含まれ、個社の経験よりも多くの情報が存在します。実効性のある解決策やシステム関連の知見を活用することで改善の効果を最大化します。ここでは、その第一歩となる課題整理のフレームワークを活用し、コンタクトセンターの課題を体系的に可視化する方法を紹介します。

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課題整理のためのフレームワーク

コンタクトセンターでは多くの問題が起こり、解決すべき課題は山積しています。その状況で、問題を認識しているだけのセンターと、課題を体系的に整理しているセンターとでは、理想の姿実現との距離に雲泥の差があります。組織が目標とするものと現状との間にある今起きている現象を「問題」と言い、 目標と現状とのギャップを埋めるためにやるべきことや問題解決の方向性を総合的に体系立てて整理した内容を「課題」と言います。

つまり、認識している「問題」を「課題」として整理できれば、あとはその具体的なアクションの手段・タイミング・担当者を決めれば、課題は解決に進みます。一方で「問題」の認識だけだと実施すべきアクションの方向性や優先度が定まらず、解決のアクションは行き当たりばったりになります。

課題の整理をするために役に立つものが、業務コンサルティングの「フレームワーク」となります。「フレームワーク」とはある事柄に対して、共通して考えるべきポイントをパターンとして落とし込んだもので、思考を整理するには有効な手段です。コンタクトセンターの問題・課題整理のためのフレームワークはいくつかありますが、ここではその1つのを紹介します。

そのフレームワークは以下の6つの要素からなります。

  • 戦略
  • プロセス
  • 組織/体制
  • 人員/スキル
  • システム/ツール
  • マネジメント

「戦略」は、コンタクトセンターの明確なミッションは設定されているか、ミッションはスタッフまで浸透しているか等を中心に状況を評価します。

「プロセス」は、業務フローが明確になっているか、人によってプロセスが異ならないか、無駄な業務や重複する業務が存在しないかを確認します。

「組織/体制」は、各組織の役割は明確か、各組織は有機的に機能しているかを見極めます。

「システム/ツール」は必要なシステムやツールが用意されているか、システムやツールの使い勝手は良いかをチェックします。

「マネジメント」はPDCAにもとづいたマネジメントプロセスが有効に機能しているか、パフォーマンスは適切か見極めます。

このフレームワークを使って、コンタクトセンターの問題や課題を整理することで、抜け漏れ、重複なく整理することができ、問題の体系化、課題の構造化を進めることができます。
ここで注意すべき点として、各フレームワークで整理された問題は必ずしも同じフレームワークのアクションプランに分類されるわけではないことです。

例えば、「人員/スキル」のフレームワークで「メンバーのスキルレベルにばらつきがある」と問題を特定した場合、「特定メンバーに対して、教育研修をする」という「人員/スキル」のフレームワークで整理する課題もあれば、「知識を補完するためのナレッジシステムを導入する」という「システム/ツール」のフレームワークで整理する課題もあり、問題、課題の関係、包括的な視点で整理が必要です。

課題解決に向けたアウトソーサーの知見活用

フレームワークは有効ですが、利用しただけでは課題整理と改善活動をうまくできるわけではありません。内製運用の場合、既存運用への執着やしがらみに捉われがちで、課題整理・アクションプランの策定を、保守的・現実的にしてしまうことが多く見られるからです。

例えば、年間の中でも繁忙月、月間の中でも繁忙日、1日の中でも繁忙時間がある業務において、現状では固定的に人を配置しているため、繁忙時間に合わせた人員配置は不可能という前提で課題解決を諦めてしまいがちです。しかし、アウトソーサーの知見を借りれば、どうやったらその繁閑に合わせた人員配置ができるのか、あるいは繁閑状況に関わらず一律のサービス水準でコンタクトセンターの運用を提供すべきかなど、前提自体をベンチマークを踏まえて検討する等、現状の制約に捉われずに課題解決を図ることができます。

このように、内製コンタクトセンターとアウトソーサーによる外注コンタクトセンターでは、課題整理や改善アプローチの考え方や発想自体が異なることがあります。もし内製コンタクトセンターの課題整理において、担当者のアイデアだけに頼ることに限界があるなら、課題整理や改善の方向性の検討にアウトソーサーの知見を借りることも可能となります。

アウトソーサーの中には、コンタクトセンターの運用とは別に現状分析・課題整理・解決方針策定を含めたコンサルティングサービスを提供している場合もあります。そのサービスを利用することも内製コンタクトセンターの改善手段の1つとなり得ます。

アウトソーサーによるコンサルティング

アウトソーサーのコンサルティングサービスは、センターの課題整理から着手します。既存センターの生産性や品質評価指標、欠勤率や退職率等の定量データ分析、インタビューやアンケートなど多面的なアプローチで定性的な問題や課題も把握します。

そこでは、確立された方法論や視点に基づき、包括的な課題整理を実施し、ベンチマーク・デスクトップリサーチ・他社事例を含めた改善のアイデアが盛り込まれ、解決の方向性を導きます。システム・ツール選定においても、Sierのように自社製品の販売のみを前提とせず、市場から優位性のある製品を選定し、それを使いこなす利活用知見を有しているため、分析・設計・構築・導入・定着化まで、アウトソーサーにソリューションによるセンター高度化を依頼する例も増えています。

アウトソーサーが実施するコンサルティングの特長として、改善の打ち手となるアクションプランが現実的に実現可能で実効性を伴っているとが挙げられます。アウトソーサーは、日々お客様の運用を担っており、課題整理や改善アクションが実際の運用になった場合に、実行可能かどうかについて多様な経験をもっているからです。コンサルティングの後続として、内製業務の一部を切り出しアウトソースを依頼される場合も多く、実際に実現できないようなプランでは自身の首を絞めることになり兼ねないからです。
そのため、コンサルティング会社が描く改善プランよりも圧倒的に実現性が高いと言えます。

また、解決の方向性を見つけるには、改善機会討議というディスカッションが有効な手段となります。アウトソーサーの一方的なアイデアの押し付けではなく、ベンチマーク、他社事例、ノウハウ・方法論を前提に数多くの改善アイデアを洗い出し、その企業のコンタクトセンターの特性を踏まえた現実的な改善機会の絞り込みを行っていくことで、より納得感をもって解決案を導き、その実効性を高めることができます。

なお、アウトソーサーによっては実施したコンサルティング内容を現場に根付かせたり、導入したシステム・ツールを使いこなすための問合せ対応や設定支援を含めた総合的定着化サービスも行っています。状況に応じて、それらのサポートプランを活用することもセンターの課題解決や高度化に有効な手段となります。

まとめ

内製コンタクトセンター改善は、その改善手法に対する知見やアイデア、製品や利活用の情報が限定的であるため担当者の負担は大きく、求められる勉強量は想像以上のものとなります。そのため、フレームワークの利用が有効で、それによって問題・課題を包括的・体系的にまとめることができます。しかしそれだけでは既存業務の制約に縛られれることが多く、内製だけでは本質的な解決の方向性が得られません。アウトソーサーの意見やコンサルティングサービス、ソリューション導入や定着化サービスをうまく活用し、プロの知見を借りて改善の道筋をつけることもセンター課題解決と高度化に有効な手段となります。

執筆者紹介

久保 睦
久保 睦
2001年に入社後、通信、金融、通販、メーカー、サービス業のコンタクトセンターを中心に80社以上のコンサルティング、立上げ支援、ソリューション導入企画・設計・構築、アドバイザーを担当。現在は、企業の付加価値向上、CX向上、DX実現に向けたコンタクトセンター活用のプランニングなどビジネスコンサルティングを中心にプロジェクト管理、統括責任者として多数の実績あり。
Salesforce 認定アドミニストレーター
デジタルチャネルCX調査 2024ー2025年版

株式会社ベルシステム24

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