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要約の基本手順とコツ
文章を正しく要約するためのステップや、論理構成を崩さない要点抽出の方法、禁止事項がわかります。 -
コンタクトセンターで求められる要約スキルと活用場面
会話内容の要約が業務品質・顧客満足に与える効果が理解できます。 -
要約AIの仕組みと主要ソリューション
特徴、導入メリット、コンタクトセンター向け自動要約システムの機能と活用例がわかります。
要約は、ビジネス全般で重要視されており、コンタクトセンターもその代表的な現場の一つです。要約とは、情報の中から本質を抽出し、相手にわかりやすく伝えるための知的スキルです。
正確な要約を行うには、その定義や目的を理解するだけでなく、文章を意味段落に分けて構造を把握し、キーワードや要点を抽出するなど、手順を踏むことが欠かせません。
本記事では、ビジネスで活用できる要約力を高めるために、その意味、手順、そして実践のコツについて解説します。
要約とは?
要約とは、情報の中から重要な要素を抽出し、読み手に伝わりやすい形に再構成する知的作業です。要約の目的は、冗長な情報を削ぎ落とし、筆者の主張や結論を明確に提示することで、読み手が短時間で内容を理解できるようにすることにあります。
「要」は物事の中核を、「約」は情報を整理・短縮することを意味します。要約は、筆者の意図を損なわない範囲で余計な情報を取り除き、最も伝えたい部分に集中して伝えるための重要なプロセスです。
要約と要点・要旨との違い
要約は、「要点」「要旨」「概要」「あらすじ」などと混同されやすい概念です。正確な理解のためには、これらの類似概念との違いを把握することが欠かせません。本節では、それぞれの意味と特徴を比較し、要約との使い分けの基準を明確にします。
要約と要点との違いは何?
要点とは、文章を構成する各段落の中心的なポイント、いわば文章を形づくる「部品」を指します。要点を押さえることで、各段落の役割が明確になり、文章全体の構造を理解しやすくなります。
一方、要約は、抽出した要点を元の文章の論理構成に沿って再構成した「完成形」です。したがって、要点を的確に捉えることは、質の高い要約を作成するための不可欠な前提スキルといえます。
要約と要旨との違いは何?
要旨とは、筆者の主張や結論を中心に据え、読者が短時間で本質を把握できるように簡潔にまとめた内容です。要旨を読むことで、読者は長文をすべて読む前に、文書全体の主張や方向性を効率的に理解できます。
要約と要旨はいずれも情報を短くまとめる点で共通していますが、目的と構成に明確な違いがあります。要約は筆者の論理展開を保ったまま全体を縮小して再現するのに対し、要旨は筆者の主張を中心に再構成する点が特徴です。
押さえておきたい要約の仕方・手順
要約を正確に行うためには、分析から再構成までの手順を理解することが重要です。正しい手順を踏むことで、情報の取捨選択や論理の整理を的確に進められます。要約の手順は以下の通りです。
- 文章の概要を把握して意味段落に分ける
文章全体の構成を把握し、内容に基づいて意味段落(同一テーマのまとまり)に分ける - キーワードと要点を抜き出す
重要語句(キーワード)と要点を含む文(キーセンテンス)を抽出する - 簡潔でわかりやすい文章に整える
不要な情報を削除し、構造を整理して簡潔で明瞭な文章に再構成する
文章の概要を把握して意味段落に分ける
はじめに、文章全体に目を通して全体像を把握します。テーマ・主張・根拠・結論の4点を意識しながら読み進めることで、文章の構造をつかみやすくなります。この段階は、全体の概要を把握するための“スキミング(概読)”の作業です。
全体の構成を理解したら、内容のまとまりごとに意味段落へ区分します。意味段落とは、セマンティックユニット(semantic unit)と呼ばれる内容上のまとまりであり、同一の主題に関する文を一つの塊として整理したものです。
たとえば、旅行記なら「ご当地グルメ」「観光名所」「旅行の感想」などに分類できます。ビジネス文書では、顧客対応記録や議事録などを「問題の要因」「対応内容」「結果・提案」といった要素に分けることができます。
一つの意味段落には、複数の形式段落が含まれる場合もしばしば見られます。
キーワードと要点を抜き出す
ビジネス文書を要約する際には、重要なキーワードとキーセンテンスを正確に抽出します。キーワードとは、文中で中心的な意味を持つ語句(多くは名詞や専門用語)であり、社名・製品名・サービス名などが該当します。
一方、キーセンテンスとは、筆者の主張や理由、結論を含む文であり、段落全体の要旨を示す中核的な文です。キーセンテンスは、意味段落の終盤や逆説表現の直後、または強調部分の前後に配置されることが多く、これは筆者が主張を際立たせる位置として意図的に配置する傾向があるためです。
キーセンテンスを抽出する際は、一言一句をそのまま抜き出す必要はなく、意味を損なわない範囲で簡略化して構いません。
また、論説文では具体例や体験談を省略するのが一般的ですが、ビジネス文書やレポートでは、根拠となるデータや事例を要点として保持することが重要です。
簡潔でわかりやすい文章に整える
再構成の段階では、これまで整理した文章を短く明確な形に整えます。短文化の際には、構文の整合性や接続語の流れにも注意を払いましょう。
まず、不要な部分を削除します。情報の重複や、なくても要点が伝わる文を省くことで、主旨を明確にできます。次に、一文一義を意識します。要約文では特に論理の簡潔さが重要であり、一文に複数の情報を詰め込むのは避けるようにします。
また、箇条書き(リスト化)を活用することも有効です。文章で長く説明するよりも、読み手が視覚的に整理しやすく、理解しやすくなります。たとえば、次のように表現を変えることでより簡潔にできます。
商品発注時に必要な情報
- 会社名
- 担当者名
- 連絡先
- 発注内容
- 支払方法
箇条書きは、不要な要素を省きつつ、情報を明確に提示するのに効果的です。
押さえておきたい要約のコツと注意点
要約の質を高めるには、重要なコツと注意点を理解しておくことが欠かせません。これらを意識することで、長文でも短く、論理的で伝わりやすい文章に再構成できます。要約を効果的に行うためには、論理構成や整理のフレームワーク(たとえばAREA法)を理解しておくことが重要です。
以下では、ビジネス文書や教育現場など幅広い場面で活用できる、要約のコツと注意点を紹介します。
AREAを意識してまとめる
AREAとは、論理的かつ簡潔に要点をまとめるためのロジカルライティングの基本フレームワークです。Assertion(主張)、Reasoning(理由)、Evidence(証拠)の3要素を構成し、最後に再びAssertion(主張)を提示する流れで構成されます。
このAREAの流れは、主張→理由→証拠→主張という順に整理され、読者に論理的な説得力を与えます。最初と最後に主張を繰り返すことで、要点が強調され、読者に明確な印象を残す効果があります。特に、要約文や報告書の構成を整理する際に有効です。
適宜リライトする
リライトとは、意味を保ちながら表現を再構成し、可読性を高める作業です。冗長な表現を簡潔に言い換えたり、理解しやすい語句に置き換えたりすることで、より伝わりやすい文章に仕上げられます。
元の文章をそのまま公開することは、著作権侵害にあたる場合があり、引用や要約の際には出典を明記するなどの配慮が必要です。こうしたリスクを回避し、企業の信頼性を守るためにも、リライトは欠かせません。
また、議事録やAI書き起こしデータ、社内メモ、顧客対応ログなどもリライトによって読みやすく整えることができます。固有名詞や専門用語など、意味が変わるおそれのある語句を除き、不要な部分は別の表現に置き換えましょう。
元の文章から構成は変えない
要約では、論理構成を変えないことが重要です。構成を入れ替えると、筆者の意図や論理展開が変化し、内容が誤って伝わるおそれがあります。
たとえば、元の文章が「AはBである。なぜならばCであるから。」という構成である場合、これを「Cであるため、AはBである。」と入れ替えると、主張と根拠の強調順が変わり、意味が異なって伝わる可能性があります。
要約は、本文を短く簡潔にまとめるだけでなく、筆者の論理構成を保ちながら整理する必要があります。特に、学術的・業務文書の要約ではこの点が重要です。
なお、要旨を作成する場合は、筆者の意図を損なわない範囲で構成の入れ替えが認められます。
自分の解釈を含めない
要約では、元の文章に書かれている筆者の主張・論点・根拠の範囲内で内容を短く整理することが重要です。そのため、要約者自身の解釈や意見、推測などの新しい情報を加えてはいけません。
たとえば、元の文章が「AはBである。なぜならばCであるから。」という内容であるにもかかわらず、要約で「おそらくAはDともいえるだろう」と、本文に含まれていない推測(D)を追加してしまうと、それはもはや要約ではなく、要約者の独自解釈となってしまいます。
要約は、元の文章が持つ主張や根拠を保持したまま、その範囲内で言葉を言い換えて簡潔にまとめることが求められます。
コンタクトセンター等のビジネスで求められる要約
要約は、ビジネスにおける情報共有や意思決定を支える重要なスキルです。なかでもコンタクトセンターでは、お客様との会話内容を正確に把握し、要点を抽出して記録・共有するために要約力が強く求められます。
本章では、コンタクトセンターで発生する要約の具体的な場面や、要点抽出・会話内容整理・応対ログ作成などの実務で役立つ対処方法について解説します。
お客様の会話を要約して寄り添う
コンタクトセンターでは、お客様の意図を正確に把握し、会話内容を要約して寄り添うことが求められます。これは、相互理解を深め、誤解を防ぐために重要です。お客様の話を聞いたうえで「こういうことですね?」「つまり、こちらでよろしいでしょうか?」と確認する行為は、意図確認と共感の姿勢を示すうえで効果的です。
お客様の会話を要約する目的には、次の2点があります。
- 傾聴の姿勢を示し、お客様に安心感を与える
- 要約内容を共有し、認識に齟齬がないかを確認する
適切な要約によって顧客の意図が明確になり、問題解決までのプロセスがスムーズになります。その結果、対応時間の短縮や、顧客満足度の向上といった効果も期待できます。
対応の内容を要約して残す
コンタクトセンターでは、お客様対応が完了した後に、対応内容を要約して応対ログとして記録する必要があります。これは、「前回のやり取りの把握」「類似トラブルの確認」「引き継ぎの円滑化」「再発防止の分析」などを迅速に行えるようにするためです。
記録の担当者は企業によって異なりますが、お客様対応を行ったオペレーター本人が要約を作成するケースも多く、場合によってはQA担当やスーパーバイザーがまとめることもあります。
そのため、オペレーターには長い会話の中から必要な情報を抽出し、簡潔に記録へ落とし込む要約力が求められます。記録の質はその後の対応品質にも直結するため、正確な要点整理が重要です。
要約AIの活用で要約業務を省力化!
業務で文章や会話内容の要約が求められる場合には、自動要約モデルを活用した要約AIを導入する価値があります。要約AIは長文から重要情報を抽出・整理し、要約業務の時間削減や記録作成の効率化に大きく貢献します。特にコンタクトセンターでは、応対ログの自動生成や会話内容の短時間把握に役立つため、導入効果が高い領域です。
本章では、要約AIの仕組みや特徴、さらにコンタクトセンターの実務に特化した要約AIの活用方法について解説します。
ビジネスで活躍する要約AI
要約には、文章全体の構造を把握して要点を抽出し、論理を保ちながら再構成する技術が必要であり、時間と労力を要します。要約AIを導入することで、こうした作業を大幅に効率化でき、業務負荷の削減につながります。
ただし、AIは入力文脈が不足していたり内容が曖昧だったりすると誤った要約を生成する場合があります。ビジネス用途で正確性を確保するためには、目的や業務領域に特化した自動要約システム(抽出型・生成型など)の活用が有効です。
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通話(コンタクトセンター対応)〜要約までを効率化するソリューション
コンタクトセンターでは、通話内容の把握や記録作成の負荷が大きいため、業務に特化した自動要約システムを導入する価値があります。これらのシステムには、リアルタイムの通話テキスト化、話者分離、ノイズ抑制、キーワードや意図の抽出といった機能が備わっており、通話内容を正確に整理することが可能です。
自動要約システムを導入することで、オペレーターは通話内容を迅速に要約でき、応対ログ作成の効率化や再説明回数の削減につながります。また、業務負担を軽減できるため、働きやすい環境づくりを支援する要素にもなります。
コンタクトセンター向けの自動要約システムについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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また、ここでは代表的な自動要約システムの例を2つ紹介します。
- QuickSummary — 通話内容の抽出・整理に特化した要約支援ツール
- CoreExplorer/TS — 会話分析・ログ自動生成など応対品質向上を支援するシステム
QuickSummary
QuickSummaryは、AIを活用して通話内容を自動で要約するシステムです。クレンジング機能(ノイズ除去・句読点補正など)、重要発話の抽出、キーワード抽出、発話分類といった機能を備え、コンタクトセンターでの後処理業務を効率化するために設計されています。
QuickSummaryの主な特徴は次のとおりです。
- 低コストで利用可能 — 導入しやすい価格帯で利用できる要約AIシステム
- セキュリティ配慮(機微情報の除外) — ChatGPTなどのLLMに処理させる前にAIが機微情報を除外し、入力トークン数も削減
- 重要発話抽出の高精度化 — 会話の要点を効率的に抽出する多様な機能を搭載
QuickSummaryを利用することで、通話後の要約作成を自動化でき、後処理時間の削減や要約品質のばらつき防止につながります。
参照元:QuickSummary2.0 AI自動要約システム | AI SQUARED
CoreExplorer/TS
CoreExplorer/TSは、音声認識データに含まれるノイズや不要な発話を除去し、そこから重要部分を抽出する抽出型(extractive)要約AIです。話者分離やクレンジング処理を行ったうえで、会話内容の要点を効率的に抽出できます。
CoreExplorer/TSでは機械学習を活用しており、企業ごとのマニュアル、過去のFAQ、顧客対応データなどを学習させることで、ドメイン知識に基づいた重要文判定が可能になります。これにより、従来は多くの工数を要していた要点抽出作業を大幅に効率化できます。
参照元:CoreExplorer/TS|日立ソリューションズ東日本
まとめ
要約とは、文章や発話内容から主張・論点・根拠といった重要情報を抽出し、論理構成を保ちながら再構成する作業です。一般的には、文章の構造を把握し意味段落を整理したうえで、キーワードや要点を抜き出し、簡潔で分かりやすい文章へまとめるという手順で行います。
コンタクトセンター業務では、お客様の会話を適切に要約することで、意図の把握が容易になり、再説明の減少や対応時間の短縮につながります。また、対応内容を要約して記録することで引き継ぎがスムーズになり、結果としてお客様からの印象向上にも役立ちます。
一方で、ビジネスにおける要約は難易度が高く時間もかかるため、抽出型・生成型の要約AIなど、自動要約システムを導入することが有効です。導入コストは発生しますが、業務効率化やオペレーターの負担軽減、生産性向上につながるメリットがあります。
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- ノウハウ
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- 業務改善・高度化






