成功事例に学ぶ!自動応答の正しい使い方
久保 睦
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久保 睦
皆さんは最近、日常生活の中で、消費者として、コールセンターへ電話しましたか?それとも、webやアプリで自己解決しましたか?なんらかの自動応答による便利な解決を体験しましたか?
まだまだ発展途上といえる自動応答について、ユーザー観点で現状を整理することで、さらなる実用化について考えてみたいと思います。
自動応答、ここでは特に、ChatbotやVoicebotを指しますが、これらが万能のツールではないことは、実際の導入事例などから既に明らかであると考えられます。「なかなかたどり着けない」「たどり着いたと思ったら期待した情報が得られなかった」「最初からやり直し」「結局有人窓口に転送」・・・など、不便なシーンもあります。
一方で、有人のコールセンターが万能かというと、そうではありません。もちろん、自動応答よりも柔軟な回答、寄り添った対応、安心感などが期待できます。我々もコールセンターを運営していますので、有人センターを否定するつもりはありませんが、たとえば応対品質に関する課題としては、処理ミスや誤案内、品質のばらつきなどのリスクを有しています。また、勤怠や退職、急な入電増への対応力、24/365対応の難しさなど、人材リソースを維持し、品質を担保するためには、多大な運用管理工数が必要になります。
以上から、自動応答を活用する目的は、『有人センターの弱点を補うこと』という考え方ができると思います。
ユーザー目線でいうと、要望やお困りごとに対して、スピーディーかつ正確に解決できることが重要であり、そのための最適なチャネルが有人センターとは限りません。有人センターでは実現が難しいサービスを提供することも、自動応答なら実現できる可能性があります。
逆に、有人センターで対応すべき部分も含めて、広く自動応答で代替しようとすると、機能要求レベルは高まり、柔軟性や網羅性、認識率などに視点が向いてしまい、「結局有人には敵わない」という議論に陥ってしまいます。場合によっては、最終的に自動応答に入ったお問い合わせの多くが有人センターにスイッチ、転送されることになり、CXの観点でもコストの観点でも、期待した成果をもたらすことは難しくなってしまうでしょう。
以上から、それぞれの強み、弱みを整理し、活用の範囲をしっかり見定める必要があるといえます。
では、進んでいるケース=成功しているケースについて見てみましょう。日本の中でも自動応答が受け入れられ、定着している事例について、成功のポイントを考えてみたいと思います。
ここでは、荷物の再配達申込を例に挙げたいと思います。
通販市場や個人売買市場が急拡大し、運輸事業では大口から小口へ、ビジネスが大きくシフトしました。特に個人宅への配達では不在が発生しがちで、再配達の連絡が爆発的に増加しました。そこからの経緯は省略しますが、今では、再配達の電話をかけることもほとんどないと思います。不在表にはQRが備わり、webやアプリ、LINEなどで、簡単に再配達の申込が完了します。
再配達の発生件数は、実に年間5億件といわれています。その多くの電話が、他のチャネルに置き換わることは、センターにとっては革命的な成果といえます。
また、最近では、配達日を事前に案内するサービスや、置き配サービスを導入することで、再配達自体の発生を低減する対策も積極的に推進されています。
ただし、「今日もう一回来れますか?」「さっき来たのか!いまならすぐ戻ってきてくれるかも」というシーンは、自動応答のサービスレベルの範囲外となります。なぜなら、イレギュラーだからです。明日以降、もしくは、自動応答利用タイミングから、対応可能な日時のリスト提示をし、イレギュラーは自動応答の範囲外と定義することで、ほとんどの再配達申込を自動化できています。
このケースで、自動応答がうまく機能し、社会に大きく受け入れられることとなった結果は、以下のようなポイントや条件によるものと考えることができます。
人からIVR(自動音声とプッシュ入力)へ、IVRからweb(Chatbot)やSNS・アプリへ、ユーザーの身近なデバイス変化に合わせて、非常にポジティブに自動応答が活用され、進化しています。
ユーザーも企業側も、前述した自動応答のメリットを享受できている好事例として、自動応答の活用を考えるヒントが多く得られると思います。
さて、ここで本題の、『自動応答が進まない理由』に近づいていきたいと思います。
自動応答の活用には、ユーザー側のメリットが重要とお伝えしました。それが提供できて、多くのユーザーに活用されて、そこではじめて企業側の目的を達成することができます。そうでなければ、有人センターの弱みをリカバリすることはできませんし、自動応答に掛けるコストのリターンも享受できません。
私もこれまで多くの自動応答の設計、導入に携わってきましたが、一方で、商談中に「これはうまくいかない」と、クライアントと議論を繰り返し、根本的に軌道修正したケースもありますし、残念ながら導入に至らなかったケースもあります。
事業内容やサービスによって自動応答の対象は異なりますが、共通して課題となる3点についてご紹介したいと思います。
こういったユーザーに対して、どのような自動応答を提供することが、電話よりも満足できるユーザー体験として受け入れられるか、検討する必要があります。
以上が、共通して検討が不足する傾向にある部分です。
シナリオ、認識率、離脱率、情報網羅性、メンテナンスなど、自動応答そのものの機能や品質ももちろん重要なのですが、意外とその前の導線や、対象となる問い合わせ選定、ペルソナの設定なども非常に重要であると考えられます。
我々も『音声認識・分析ソリューション』や『自動化アセスメント』といったサービスを駆使しながら、自動応答のスコープを十分に議論し、策定するように取り組んでいます。
自動応答の発展には、自動応答ソリューション自体の機能や技術の進歩が必要な点は否定できません。今後は生成AIの実用化などにより、自動応答も革新的な発展を遂げるでしょう。
ただ、今回お話したとおり、ユーザーが享受できる利便性について解像度を上げることができなければ、いくらプロダクトやソリューションが発展し、それらを提供しても、「結局有人には敵わない」を覆すことはできません。同時に、導線の編成や工夫も、改めて真剣に考えるべき重要な要素です。
ユーザーの特性やお問合せ内容を改めて分析してみましょう。そして、自動応答やその他チャネルのそれぞれが、何を提供し、何に対応するためのものか再整理しましょう。
その中で自動応答に対しては、「いかに有人センターの品質に肉薄し代替するか」ではなく、「有人センターではカバーできない何を提供するか」を追求することで、自動応答にしかできない顧客体験を提供することができるようになると思います。

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