顧客満足度を高めるためには、「顧客がサービスをストレスなく利用できているか」を知る必要があります。実態の把握に役立つのがCES(カスタマーエフォートスコア)と呼ばれる指標です。顧客が感じたストレスや手間を表すCESを計測・分析すれば、改善点を明らかにできます。
カスタマーエフォートスコア(CES)とは?
CESとは、Customer Effort Scoreの略で、「顧客努力指標」を意味します。これは顧客がサービスを利用する際に、どのくらいの努力やストレス、手間が必要だったのかを表す指標です。
CESは高いか低いかで、顧客が抱えるストレスや不満の度合いを判断できます。CESのスコアが高いほど、顧客にとってよくない状態を示します。例えば「サービスが使いづらい」「案内が不親切」などと感じる場合は、CESが高い、すなわち顧客満足度が低い状態です。顧客満足度が低い状態が続けば解約・退会につながる可能性があるため、CESをひとつの指標にしながらサービスを改善していく必要があります。
CESとリテンション率の関係
CESと深い関わりのある用語に、「リテンション率」と呼ばれるものがあります。これは顧客の再訪率や定着率、継続率などを表す指標です。両者には相関関係があり、CESが下がるとリテンション率が上がる傾向にあります。サービスがより使いやすくなり、CESが改善されると、顧客の再訪率や定着率が上がるという関係性です。
リテンション率が上がれば収益の安定を見込めるほか、新規顧客を獲得するためのコスト削減や、ロイヤルカスタマー(サービスに大きな信頼を寄せてくれる顧客)を増やすことにもつながります。カスタマーサクセスを実現するためには、CESだけでなくリテンション率にも着目する必要があります。
CESとNPSとの違い
CESと一緒に検討されるケースが多い指標に、「NPS(Net Promoter Score)」があります。これは顧客ロイヤリティを測る指標であり、NPSが高いほど、サービスの継続や他者への紹介につながる可能性が高くなります。CESとの違いは以下の通りです。
- CES:製品・サービス使用時の顧客の労力・手間の指数
- NPS:特定のブランドに対する愛着・信頼を測るための指標
CESは「顧客自身が満足したかどうか」を重視しているのに対し、NPSは「他者に勧めたいかどうか」に着目する考え方です。どちらがより重要というものではないため、測定の目的にあわせてうまく使い分けるのが効果的です。
NPSの分析方法や具体的な活用方法は、以下の記事で解説しています。こちらもあわせてご参考にしてください。
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カスタマーエフォートスコア(CES)の重要性
ほかにもさまざまなカスタマーサクセスの指標が存在するなかで、なぜCESが特に重要視されているのでしょうか。
リピーターを獲得するため
CESが重要視される理由のひとつは、リピーターを獲得するためです。不満を顧客が感じれば、サービスの解約・退会につながり、リテンション率が低下します。特に、サブスクリプション形式の料金体系を採用している企業にとって、いかにリピーターを獲得するかは大きな課題です。顧客に長期間継続してサービスを利用してもらうことが重要になるため、CESを改善し、リテンション率を上げる対策を講じる必要があります。
より良い顧客体験を提供するため
CESが重要視されるのは、より良い顧客体験を提供するためでもあります。顧客体験とは、顧客がサービスに接するすべてのプロセスを指します。大まかなプロセスは以下の通りです。
- 商品・サービスの認知
- 購入・契約
- 使用
- アフターフォローや問い合わせ
- リピート購入
上記のすべての段階で好ましい体験を提供できれば、顧客と良好な関係を構築可能です。その結果、長期間自社のサービスを利用してもらえるようになり、リテンション率の向上を見込めます。
自社の問題点を解決するため
CESが重要視される背景には、自社の問題点を解決する目的もあります。顧客の期待を上回るサービスの提供を目指す企業は少なくありませんが、実はファン化には「問題なくサービスを利用できる環境を構築する」ほうが効果的であるとされています。つまり、ポジティブな要因を増やすより、ネガティブな要因を減らすほうが顧客満足度は高まる、という考え方です。ネガティブな要因を減らすにはまず問題点を把握する必要があることから、顧客が抱えるストレスや不満の度合いを示すCESが重要視されています。
カスタマーエフォートスコア(CES)が高くなる3つの原因
CESが高くなる原因には、主に「商品・サービスへの不満」「営業・広告への不満」「お客様対応への不満」の3つが挙げられます。どのような不満がCESの悪化につながるのか、具体的な例を参考にしながら確認してみましょう。
1. 商品・サービスへの不満
商品・サービスへの不満の代表的な例は、「サービスの内容や、利用の仕方が複雑でわかりにくい」「Web上の説明書がわかりづらい」などです。商品やサービス自体のわかりづらさが、顧客の負担を大きくしているケースが多く見られます。そもそもサービスの利用者が増えない場合には、「Webでの申し込みや変更手続きが面倒」といった要因も考えられます。
2. 営業・広告への不満
営業・広告への不満には、「広告が多すぎて煩わしい」「営業がしつこい」など、顧客の望まないアプローチが代表例に挙げられます。ダイレクトメールや営業電話はビジネスに欠かせない販促方法ですが、アプローチの仕方には注意が必要です。過剰だと受け取られるとサービスのイメージが悪化し、顧客離れにつながります。
3. お客様対応への不満
お客様対応への不満の代表的な例は、「窓口の営業時間が短くて問い合わせがしにくい」「コールセンターへの電話がつながらない」「質問への回答がわかりづらい」「お客様窓口の担当者の知識が不足している」などです。サービスの内容について不明点が出た際に、的確な回答がスムーズにもらえなければ、顧客は負担を感じてしまいます。
カスタマーエフォートスコア(CES)の測定方法
CESはアンケート調査で測定するのが一般的です。ここでは、測定用アンケートの具体例と計算方法を紹介します。
測定用アンケートの例
CESの測定では、サービスの使用感を顧客に質問する7段階アンケートが用いられます。評価項目の例は以下の通りです。
▼7段階アンケート(質問)の例
1:まったく努力しなかった:問題なくスムーズに解決できた。
2:ほとんど努力しなかった:わずかな手間はあったが、すぐに解決できた。
3:少し努力した:少し手間取ったが、なんとか解決できた。
4:やや努力した:手間取ってしまい、時間がかかった。
5:努力した:かなり手間取り、解決に時間がかかった。
6:非常に努力した:非常に手間取り、解決できなかった。
7:まったく解決できなかった:何をしてもうまくいかず、解決できなかった。
初期設定や問い合わせなどの特定の行動を起こすのに、どの程度のストレスや負担を感じたのかを測定するのが、7段階アンケートを実施する目的です。
アンケートの計算方法
アンケートの結果は得票率を用いて算出します。計算例は以下の通りです。
▼計算
- CES=選択肢1・2の合計得票率-選択肢5・6・7の得票率
例:選択肢1・2の得票率が90%で、選択肢5~7の得票率が5%の場合、90‐5=「85」がCESとなる
最高値は「100」、最低値は「-100」です。100に近いほどCESは「低い」、-100に近いほど「高い」と判断し、いかにこの数値を100に近づけて顧客満足度を高めるかが重要になります。
カスタマーエフォートスコア(CES)調査の注意点
誤った方法では思うような効果を得られない可能性があります。CESを調査する際は、以下の4つのポイントを念頭に置きましょう。
アンケートは顧客体験の直後に実施する
アンケートは顧客体験の直後に実施するのが鉄則です。利用直後であればサービスに対する印象や不満に感じた点が鮮明に残っており、精度の高いフィードバックを期待できます。反対に、顧客体験から間隔が空きすぎると記憶が曖昧になる可能性があるため、アンケートを実施するタイミングには注意が必要です。
アンケートは「全ての顧客に対して同一条件で実施する」ことが重要です。条件がバラバラでは、顧客がサービスのどこに不満を抱えており、どんな改善が必要なのかを正確につかめません。
最適な質問を行う
アンケートでの質問の仕方には注意しましょう。ここぞとばかりに多くの質問を投げかけると、顧客の負担が大きくなってしまいます。アンケート自体を面倒だと認識され、答えてもらえないリスクもあるため、質問数をしぼり、簡潔かつわかりやすい質問にすることが大切です。
また、質問が漠然とした内容にならないよう注意が必要です。例えば「ご満足いただけましたか?」のような簡単すぎる質問では、顧客が何に満足したのかを分析できません。「サービスの初期設定をスムーズに進められましたか?」「問い合わせの方法がわかりやすいと感じましたか?」など、フィードバックをもらいたい部分を具体的に提示するようにしましょう。
測定は定期的に何度も実施する
CESの測定は1回で終わるのではなく、定期的に何度も実施するのが理想です。繰り返し実施すると、「顧客がどこに不満を抱えているのか」「改善策が有効だったのか」を正確に把握しやすくなります。
顧客の増加やニーズの移り変わりによって、前回の測定では見えなかった不満点が浮き彫りになるケースもあります。些細な変化がCESや顧客満足度に影響するため、測定を繰り返し実施して、より良いサービスへと改善し続けることが肝心です。
自動的に測定できる仕組みを作る
CESの測定は繰り返し実施することが重要ですが、一人ひとりに手作業でアンケートを送信するのは非効率です。顧客の導線にあわせて自動的にアンケートを表示させるなど、効率的に測定できる仕組みを作りましょう。自動化すると作業の負担を軽減できるうえ、多くの顧客に対して同じ条件でアンケートを実施できるメリットもあります。
CESを改善させる5つのポイント
CESを改善させるには、以下の5つのポイントを押さえる必要があります。自社の環境やサービスの問題点を踏まえ、適切な対策を講じて改善に努めましょう。
- 問題点の改善
- サポートデスクの強化
- ヘルプの充実化
- 顧客対応・問題解決の迅速化
- 社内体制の整備
ポイントごとに詳しく解説します。
1. 問題点の改善
サービスに対して、顧客が不満に感じている部分の特定と改善が欠かせません。「問い合わせの方法がわかりにくい」「サイトの表示が遅い」といった問題点を見直すことで、CESの改善につながります。
顧客の声を拾いあげるには、CES計測のためのアンケートが効果的です。7段階の項目で評価してもらうと同時に、どこに不満点を感じたのか具体的に記載してもらえば、改善すべき点を早期に発見できます。
2. サポートデスクの強化
サポートデスクの強化も、CESを改善させるのに役立ちます。特に、問い合わせの手段が電話のみ、メールのみといった場合は見直しが必要です。文章での説明が難しい場合に電話は効果的ですが、それほど複雑ではない質問にはメールやチャットのほうがスムーズに対応できる可能性があります。
このように、顧客の抱える問題によって適切な手段は異なります。顧客自身が最適な問い合わせの手段を選択できるよう、SNSアカウントや問い合わせフォームなどを導入し、複数のチャネルを設けることが大切です。
3. ヘルプの充実化
顧客が行き詰まった際、わざわざ問い合わせなくとも自己解決できるように、ヘルプを充実させることも重要です。具体的な方法としては、FAQツールやチャットボットなどの導入が挙げられます。
例えばFAQツールは、よくある質問への回答をサイト上に公開するツールです。事前に用意された回答を参考にして問題を自己解決できるため、コールセンターへの問い合わせを減らせるメリットがあります。
チャットボットは、人工知能を取り入れたシステムが人間の代わりに会話形式で質問に対応してくれるツールです。人間が業務を行う従来のコールセンターでは、営業時間外の対応が難しい問題点がありました。その点、チャットボットであれば、24時間365日いつでも自動で回答するため、顧客の時間待ちによるストレスを軽減できます。
4. 顧客対応・問題解決の迅速化
顧客対応・問題解決の迅速化も、CESを改善するうえで欠かせない要素です。株式会社PR TIMESが15歳~84歳の男女853名を対象に実施した調査によると、問い合わせフォームを利用してから回答をもらうまでに我慢できる時間は、「24時間以内」と回答した人が約70%でした。つまり、24時間を超えてしまえば、多くの顧客が大きなストレスを感じます。そうすると「もういいや」「ほかのサービスを利用しよう」といった考えに至る可能性があるため、迅速に対応するための環境の構築と、オペレーターの対応力向上が欠かせません。
参照元:株式会社株式会社PR TIMES「お問い合わせフォーム対応時間に関するアンケート調査」
5. 社内体制の整備
「問い合わせてもたらい回しにされる」「何度も同じ質問をされる」などのケースは、CESを悪化させる要因になりかねません。顧客にストレスを与えず、スムーズに問題の解決に導くためには社内体制の整備が重要です。社内体制を整備する方法のひとつに、CRMシステムの導入が挙げられます。
CRMシステムは、顧客情報の管理を行うシステムです。顧客の個人情報や問い合わせ履歴を管理できるほか、情報をもとに顧客にあわせた対応をとることも可能です。情報を蓄積しておくことで、顧客に何度も同じ質問をしてしまうような失敗を避けられます。
CESの改善に役立つ「BellCloud+®」
どのような方法でCESを改善していくべきかわからない場合は、支援システムをうまく活用しましょう。支援システムを活用すれば、担当者の負担を軽減しつつ、顧客対応における問題点を改善できます。
例えば、ベルシステム24が提供する「BellCloud+®」は、コンタクトセンター業務に役立つさまざまな機能を搭載したクラウド型次世代コンタクトセンター基盤です。30年以上にもおよぶコールセンター業界のノウハウを集結した高い信頼性があります。
【BellCloud+®の主な機能】
- チャットボットやボイスボットを利用した自動応答機能
- 電話応対の会話内容をテキストに変換できる音声認識機能
- 顧客やオペレーターの感情を視覚的に把握できる感情解析機能
- ビジュアルIVR(Webサイトやアプリから最適なチャネルに誘導するシステム)の実装
- オペレーターのコンディションの可視化
BellCloud+®は在宅勤務にも適しており、オペレーターは自宅のPCから上記のような機能を利用できます。多様化した現代の働き方に対応しつつ、災害などの緊急時にも業務を停止することなく運用できる点が魅力です。
まとめ
CESは、顧客がサービスを利用する際にかけた手間や、感じたストレスを表す指標です。CESの改善によって顧客満足度が高まるため、サポートデスクの強化やヘルプの充実化などに努め、サービスを利用しやすい環境を整える必要があります。「BellCloud+®」のようなシステムを導入し、CESの改善を目指してみてはいかがでしょうか。
この記事の推奨者
Salesforce 認定アドミニストレーター
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