音声を科学するとは?品質・業績をあげるメソッド公開

 2023.01.23  2023.11.14

音声認識の導入はコールセンターにどのような影響をもたらすのか。
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は実際に導入しているコールセンターの担当者の経験談をもとに、効果をあげるためのメソッドをご紹介します。

音声を科学するとは?品質・業績をあげるメソッド公開

なぜコールセンターに音声認識が必要なのか

ユーザーのニーズ、テクノロジーの進化によってビジネスにおける競争環境は日々めまぐるしく変化し続けています。VUCAの時代と言われる現在、先を見通し変化するための羅針盤となっているのが「データ」です。いまではビジネスにおいて、データ活用は競争力を決定付ける一要素になっています。
変化するスピードこそ現在の市場環境では重要です。
感覚を頼りにトライアンドエラーを繰り返していては、市場のスピードについていくことはできません。
データ活用とはデータを元に意思決定したり、進むべき方向性を判断することだと言えます。判断するためには、信ぴょう性の高いデータである必要があります。
コールセンターのオペレータや管理者は、実際に日々お客様対応をしている経験から、入電の状況、お客様の反応からなるコールセンターの状況についての感覚がとても鋭く、事実と大きくかけ離れていないケースが少なくありません。しかし、その感覚だけでコールセンターの状態を判断したり、方向性を決めることはとても危険です。

例えば、あるオペレータはユーザーに必要なアナウンスがいつもできていると自負しており、管理者はそのオペレータの通話録音を月に数本モニタリングし問題がない、過去クレームがないとすれば指導する必要はないと判断します。この状況では実際にはアナウンス漏れがどれくらい発生しているかを検知できません。仮にこのオペレータが5割しかアナウンスできていないとしたら、そのことに気付くタイミングは、たまたまアナウンスをしていない音声をモニタリングする、もしくはクレームや何かの異変があった時になります。
音声認識を導入すると、オペレータの通話録音を全件チェックしアナウンス漏れを即座に検知することができるのです。

また、受注や契約などの獲得を目的としたコールセンターでは、獲得率が高いオペレータとあまり獲得ができないオペレータの違いを感覚で判断し、獲得ができないオペレータに対して指導していくことは時間と労力がかかるうえに、指導内容が正しいかどうかわからない、オペレータの納得度も低い、その結果なかなか成果が上がらないというケースがあります。
音声認識を導入することで音声データを要素分解し、さまざまな視点から獲得率の高いオペレータとそうではないオペレータの応対を比較することで違いを明らかにすることができ、適切な指導を行うことが可能となります。
労働人口が減少の一途を辿る昨今において、迅速な育成、適切な指導はコールセンター運営、品質維持という側面においても企業が手を打たなければならない課題のひとつです。

それだけではありません。
例えば、お客様のニーズが変化した場合でも音声認識を導入することで感覚ではなく、データにより発見が早まり、確かな意思決定ができるようになります。

このような理由から音声を科学的に検証し、データとして活用する手段として音声認識を導入することは、高い品質を維持し、更には向上させ競争力を高める武器になります。

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音声認識を導入する場合によくある悩み

ここからは当社で実際に大規模センターに音声認識を導入した管理者の話から導入プロセスでの注意点を見ていきましょう。
まず音声認識をはじめて導入する場合に、どういった壁があったのかを聞いてみたところ、

  1. 導入方法がわからない
  2. 導入効果を上げるために何をすべきかわからない
  3. オペレータの困惑

という声があがってきました。

①導入方法がわからない

あるコールセンターでは音声認識の導入の経験をもった管理者はおらず、とにかく試行錯誤、手探りの状態だったと言います。これは例外ではなく多くの企業で、音声認識導入の経験を持った人材が社内に存在しないため、導入ステップ、タスク、スケジュールなど導入プロジェクトの立上時点で立ち止まってしまうことはよくあることです。
このケースは当社の専門コンサルタントからの導入サービスを活用し、自社での主体性を保ちつつ導入できたそうです。
そのため導入ステップにおける初期設定や辞書登録やチューニングなど、初期構築は導入はスケジュールに沿ってスムーズに進められました。
このケースからもわかるように音声認識導入においては、業務だけではなく音声認識システム導入の知見、経験スキルを持った人材の存在が必要だということがわかります。

②導入効果を上げるために何をすべきかわからない

これもよくある悩みです。
音声認識を導入し音声がテキストとなって蓄積される点だけでも便利と言えます。
しかし、それはあくまで「ないよりもあったほうがよい」というレベル。
導入価値をあげるには、データ活用の手法をおさえておく必要があります。
データ活用の手法とは、課題→原因の仮説立案→データ検証→改善策立案→実施のサイクルを常に回し、そこから見えてくるファクトを元に運用に変化を加え、スパイラルアップしていくことです。

③オペレータの困惑

音声認識導入によって全ての音声が可視化され、管理されていることに戸惑いを感じるオペレータは一定数います。
それは心理的なものであって、物理的に電話対応のやりにくさを感じることはありません。
しかし、この心理的な事象を見過ごすことはできません。離職やモチベーション低下につながっては導入したことが逆効果になってしまいます。
一方で当初から音声認識が入っているコールセンターの管理者は、オペレータからそのような声があがったことはないと言います。
オペレータの困惑を防ぐためには導入タイミングもヒントがありそうです。
音声認識導入に適したタイミングとは、コールセンターの方向性を見直し大きく方向転換する時期、もしくはコールセンターの組織や運営を再編する時期が適していると音声認識導入を経験した管理者は語っています。
その理由は「なぜ音声認識が必要か」をオペレータが理解できているからです。

②③でわかること。そうです。音声認識導入はあくまで手段であり、目的ではないではないのです。
センターをどのようにしたいのか、それは何のためかという上流の設計がしっかりなされているかが効果をあげる大きなポイントとなります。

導入後の施策って?具体的に何をすればよい?

音声認識活用で多くあげられる施策としては、

  1. 品質評価
  2. 業績貢献

です。
ここでは①品質評価②業績貢献の施策について事例を交えご説明します。

①品質評価

音声認識を導入後、はじめに実施した施策について管理者に聞いてみたところ、「品質の自動評価」という答えが返ってきました。
音声認識導入後初期に品質評価に着手することはスタンダードな取り組みです。特に200席以上という大型のコールセンターにおいては、300人以上ものオペレータが在籍しており、そのすべてを人海戦術でスピーディーに評価することは困難です。
そのため音声認識を使って、自動評価をすることで大幅な工数の削減、時間短縮を実現します。

しかし、全てを自動的に切り替えるのではなく、QA担当による人での評価と音声認識での自動評価をハイブリッドをおすすめします。その場合、音声認識による自動評価は品質担保のため、人での評価は満足度をあげるためと目的を変えて実施します。
品質低下やルールの逸脱を自動評価により早期に検知することは、品質を担保することができクレームを未然に防ぐことができます。一方、お客様に満足いただけているか、満足いただける応対ができているかについては人での評価が適しています。人での評価時間を確保するために、品質担保のための評価は音声認識に任せ自動化するという使い方です。
自動評価は、QA担当者の欠勤、退職というリスクを抱えることなく、全通話をチェックできるためいつでも同じ品質を担保することが可能です。
また、全通話を機械的に評価することで、自身ができていないことが明確になるため、オペレータが評価に納得できるというメリットもあります。たった1通話のモニタリングでQA担当者にできていないことを指摘されるよりも、可視化されたデータに基づき自身のできていない点を確認することで自らが改善の必要性を感じることができるです。

ただし、データで可視化されることで逃げ場がなくなるという心理的なプレッシャーを感じてしまう可能性も秘めているため、VOE(Voice of Employee)を集め、管理者がオペレータと積極的に対話しケアすることも重要です。

②業績貢献

コールセンターで抱えるKPIで重要視される業績に貢献するための施策はすぐにでも取り掛かりたい領域ですが、なかなか難しい点もあります。
難しい点の1つとして考えられるのが仮説立案です。仮説が課題の原因と大きく乖離している場合には分析結果も改善施策も的はずれになってしまいます。
そのため、音声認識導入において、①品質評価に留まることが多くあります。
ここでは、②業績に係わるKPIを向上するために音声認識を活用し、成功した事例をご紹介します。
事例でご紹介するセンターでは「獲得率」を重要KPIとしています。
「獲得率が低い」場合は、「トークスクリプトどおりにご説明できていない」、「お客様からお断りされた場合の切り返しトークができていない」という仮説を立て、音声認識からテキスト化したデータの検証を進めました。

検証結果では、やはりトークスクリプトどおりにご説明ができていないケースが多いことが判明しました。
ここで今一度アナウンスの徹底を呼び掛けたところ、大きく数字を押し上げることができました。
また、切り返しトークの内容がお客様に適したタイミングやご提案でできていないことが多いことも見えてきました。
例)お客様の課題:次回の日程が合わない(平日は都合が悪いです)→切り返しトーク:次回の担当者についての説明(次の担当者はベテランです)
ここでお客様のニーズを汲み取り、そのニーズにあった適切な切り返しトークを指導しました。

このように、仮説→検証→改善施策実施→検証を繰り返し行うことで、音声認識を使い業績を上げることが可能です。

音声認識活用メソッド

音声認識を導入した経験談を聞いているうちに音声を科学し品質や業績をあげるためのメソッドが見えてきました。

そのメソッドとは、

  • コールセンターをどのような状態にしたいのか、何を達成したいのか上流から設計する
  • 音声認識で自動化に適している領域、人で行うことが適している領域を分けた運用を設計し実施する
  • 自動化によって捻出した工数を更に成果をあげるための施策に充てる
  • 仮説のまま改善施策を立案するのではなく、仮説の確からしさについてデータを用いて検証する

導入直後から大きな成果をあげることは難しいため、コールセンターの課題やどのような状態にしたいのか明確なビジョンを持って、仮説立案→検証→改善を繰り返し「やり続ける」ことで成果を積み上げることができます。

音声認識を導入してそのデータを活用するということは、コールセンターのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することと同義です。
DXを推進するうえでは、専任チームや専門部署を設置する企業もあります。残念ながら、そのような組織があっても、なかなか進まないという悩みを抱える企業も少なくありません。
DXを推進するためには、トップダウンで方針を打ち出し啓蒙していくこと、専任者が熱意をもつこと(もつ環境があること)が必要です。

まとめ

音声認識の導入はあくまで、センターを理想の状態するために何が必要かを明確にするの手段の1つです。
理想の状態にするためには、理想の姿を明確にし、現在と理想とのGAP、そのGAPを生んでいる課題を洗い出す必要があります。
音声認識を導入することで、その課題を早く、確実に改善することができるようになります。
理想の姿を具体化するコールセンター戦略の策定、現状を明確にする課題の可視化は自社で行うこともできますが、第三者に依頼することが有効です。
ベルシステム24では、多数のプロジェクトに参画し、推進してきた実績のあるコンサルタントが伴走し、戦略策定、課題の可視化をサポートします。

また、2 はじめての音声認識導入する場合によくある悩みでもご紹介したように、音声認識導入の知識を持ったコンサルティングも可能です。
少しでも気になるという場合はお気軽にお問合せフォームよりご相談ください。

執筆者紹介

菊池 寛子
菊池 寛子
新卒から10年以上ダイレクトマーケティング業界でフルフィルメント、通販事業の業務設計を担当し基幹システム・CRM構築などのPjtに参画。その後BPO業界に転身し、企業向けサービス、ソリューションの企画・開発を経験。現在はオウンドメディアでのデジタルマーケティングの運用を行っている。
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