音声認識とは?AIを使った仕組みや活用事例、
おすすめの音声認識ソフトを紹介

 2022.05.20  2024.06.24

音声認識とは、音声データから会話の内容をテキストに起こす技術のことです。AI技術の進化に伴い、音声認識技術の精度は飛躍的に進歩しており、ビジネス用途においてもコールセンターや製造業など、さまざまな分野で活用が進んでいます。本記事を読むことで、音声認識の基本的な仕組み、導入するメリット・デメリット、そして実際の活用例を知ることが可能です。

音声認識とは?AIを使った仕組みや活用事例、おすすめの音声認識ソフトを紹介
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音声認識とは?

音声認識とは、人間が発した音声を解析し、その発言内容をテキストデータに変換する技術です。身近なところでは、スマートフォンの音声入力にもこの技術が使われています。従来の音声認識は、技術的な限界から、曖昧な発音や日常会話における不明確な表現の理解が難しいという課題を抱えていました。

しかし現在では、AI技術の一部である自然言語処理(NLP)を活用することで、音声認識の精度が大幅に向上しています。自然言語処理は、人間が日常的に使う言葉をコンピューターが理解し、情報処理できるようにする技術です。この自然言語処理によって精度が向上したことで、音声認識技術は従来以上に多くの領域で活用が進みつつあります。

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音声認識技術の仕組み(デコーディング)の流れ

音声データをテキスト化することを「デコーディング」と呼びます。デコーディングは大まかに、四つの工程を経て実行されます。各工程で行われる具体的な内容は以下の通りです。

1. 音響分析:音声をデジタルデータに変換する

元の音声データから特徴量を抽出し、AIが認識するのに適したデータへ整形します。この作業が「音響分析」です。具体的にはアナログ信号である音声をデジタル信号の波形データに変換し、音素を抽出し、ノイズを除去します。

2. 音響モデル:データから音素を抽出する

元の音声から抽出された特徴量が、どの音素に近いのかを見つけ出します。この作業が「音響モデル」です。音素とはその言語における最小単位の音で、日本語の場合は母音や子音、撥音の組み合わせを指します。
音響モデルでは主に、時間経過で変化する特徴量を確率モデルで捉える「隠れマルコフモデル」という手法が用いられます。

3. 発音辞書:音素とデータベースを紐づける

音素を発音辞書と連結して、単語単位に組み立てます。「発音辞書」とは、音響モデルから導き出された音素が、どの単語と近いかを照らし合わせるためのデータベースのことです。

4. 言語モデル:適切な文章へと組み立てる

「言語モデル」とは、発音辞書で特定した単語と単語、品詞などの出現頻度をモデル化したものです。文章をN個の文字または単語に区切る「N-gramモデル」がよく利用されます。ここでは、文章の学習データを大量に蓄積・処理して出現頻度を記録し、認識対象とするデータと照合して、出現する確率が高い文章に整形します。

近年は音声認識にAI技術(ディープラーニング)を取り入れている

現在の音声認識技術では、「ディープラーニング(深層学習)」というAI技術が広く活用されています。ディープラーニングとは、人間の脳の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」というモデルを基に構築されたAIの機械学習技術です。ディープラーニングを用いることで、AIはデータを多層的に分析し、複雑な情報もより的確かつ効率的に学習できます。

音響モデルとして「ディープニューラルネットワーク(DNN)」を取り入れた「DNN-HMM」が、言語モデルとしては、N-gramと「リカレントニューラルネットワーク(RNN)」が併用されるようになっています。

さらに、音響モデルや言語モデルを組み合わせるのではなく、ひとつのニューラルネットワークにより音声認識を実現する「End-to-End」モデルも登場しており、今後の主流になる可能性が高いともいわれています。

音声認識をビジネスに活用するメリット

AIのディープラーニングが活用されるようになったことで、音声認識技術の精度は近年著しく向上しました。

今や、音声認識技術は一定品質の音声であれば認識率90%を超えるまでに進歩しており、人間と同等のレベルにまで達しています。画像認識と並び、実利用が進んでいます。

次に、音声認識技術をビジネスに活用することで、どんなメリットがあるのかお伝えします。

業務効率化につながる

第一に期待されるメリットは、音声をテキスト化する作業の効率化です。例えば、従来なら議事録を作成する際、録音された音声を人間が聞いて手動でタイプし、テキスト化していました。しかし、こうした文字起こし作業は単純ながら、非常に多くの手間と時間がかかります。

その点、音声認識技術を使えば、人間が手作業しなくても音声を自動でテキスト化できます。人間がすべき作業は、すでにテキスト化された文章を必要に応じて整形することだけです。そのため、音声のテキスト化に要する時間や作業負担を大幅に削減できます。また、ハンズフリーで音声をテキスト化できるので、手がふさがっている状態でメモや記録を取れることも利点です。

昨今では日本政府も音声認識技術の利便性を認識しており、省庁で実施される会議や打ち合わせに必要な議事録の作成作業を効率化するために実証実験を進めています。

参照元:総務省|AIを活用した音声認識技術による自動文字起こし及び自動要約の実証実験 

業務の正確性が上がる

業務の正確性が向上するのも音声認識活用の大きなメリットです。先の議事録作成を例に挙げれば、人間が手作業で行う場合、音声の聞き取りとキーボード入力を同時にこなさなければいけません。これは特にタイピングが苦手な人にとっては難易度が高く、聞き漏らしや入力ミスが多くなりがちです。

しかし、音声認識技術を使えば、ハンズフリーで音声をテキスト化できるので、人間はその文章と音声を照合するだけでよくなります。つまり、音声認識ソフトが文字起こしした内容を、人間がダブルチェックする形です。そのため、タイピングが苦手な方でも、素早く正確に作業を終えやすくなります。

顧客満足度の向上につながる

コンタクトセンター/コールセンターにとって、音声認識技術は顧客満足度を向上させるための手段としても有効です。まず、音声認識技術を使えば、顧客とのやり取りをリアルタイムでテキスト化できます。これにより、問い合わせ内容をスムーズにCRM(顧客関係管理システム)へ格納することが可能です。

このCRMに格納されたデータは、次に同じお客様から問い合わせがあったとき、過去の問い合わせ内容を迅速に照会するために活用できます。また、データが蓄積されれば、「どのような問い合わせが多く寄せられているか」「オペレーターはお客様へどのように対応しているか」といった傾向や事実の分析精度も向上します。分析結果は、今後の製品・サービスの改善や、オペレーターの対応品質の向上に役立てることが可能です。これらの作業によって、結果的に顧客満足度の向上を実現できます。

音声認識のデメリット

上記のように、音声認識を利用するメリットは数多くあります。しかしその一方で、音声認識の活用に際してはデメリットもあり、とりわけ以下の点に注意が必要です。

標準語以外(方言)の認識に弱い

発音辞書は一般的に標準語をもとに作成されているため、例えば方言や独特の言葉遣い(若者言葉・スラングなど)は、サンプルが少なく認識が困難な場合があります。また業界用語や社内の特殊な用語も、正確に認識できない場合があります。

出力テキストからは発話者の識別ができない

音声認識においては、音声データを一括で波形データに変換して解析するので、出力されたテキスト上では発話者が区別されません。音声処理アルゴリズム上で話者を区別する技術の発展が待たれている状況です。

また、複数人が同時に発話する環境で録音された音声は、特徴量を抽出しにくくなります。

音声認識の活用例

音声認識は、ビジネスの多様なシーンで活用可能です。ここでは、その具体例をご紹介します。

議事録作成

音声認識を活用することで、議事録の作成を効率化できます。議事録作成に際して最も手間がかかるのは、音声を文字起こしする作業です。特に、議事録作成に不慣れな方や、タイピングが苦手な方は、この作業に多くの時間を取られてしまいます。

その点、音声認識ソフトは、文字起こしの手間と時間を大きく減らしてくれるので、議事録を作成・共有するスピードを早めつつ、担当者の業務負担を軽減できます。特に社内会議が多く、議事録作成の機会が多い企業や部署にとって、大きな恩恵をもたらします。

音声データのテキスト化

音声データをテキスト化する機会は、議事録の作成時以外にも数多くあります。例えば、商談記録の作成です。商談中の会話を録音し、そのデータを後で文字起こしすることで、商談内容を正確に記録できます。これにより、担当者の記憶に頼ることなく、詳細な商談記録を残せます。

また、コンタクトセンター/コールセンターにおいても、顧客からの問い合わせ内容をリアルタイムで文字化し、対応履歴として記録することが可能です。先述したように、このテキストデータは、問い合わせ内容の分析やオペレーターの応対品質向上に活用できます。
このように、これまで労力などの問題で記録していなかったことも、音声認識技術を使えば手軽にテキストデータ化し、分析材料とすることが可能です。

自動翻訳・通訳

音声認識技術は、外国語の自動翻訳や通訳にも応用可能です。音声認識技術は自動翻訳機などにも使われており、国際的な会議や商談、あるいは外国人客への対応や海外出張中の日常的なやりとりなど、さまざまな場面で活用されています。オンライン会議システムの中にも、音声認識技術を使ったリアルタイムの翻訳に対応しているものがあります。

このように、従来は通訳者が必要だった場面でも、自動翻訳機で代替できることが増えつつある状況です。これにより、外国語話者が乏しい企業でも、人件費を節約しつつ、ビジネスのグローバル化を進めやすくなっています。

ボイスボット

音声認識技術が搭載されているツールとしてはボイスボットも挙げられます。ボイスボットとは、人間のように対話ができるAI(対話型AI)を活用した自動音声応答システムのことです。スマホなどに搭載された音声アシスタントもボイスボットの一種に含まれます。

最新のAI技術を用いたボイスボットならば自然な応答ができるので、コールセンター/コンタクトセンターに導入すれば、顧客対応の一部自動化が可能です。これによって、オペレーターが人手不足の企業でも問い合わせ対応を迅速化し、顧客満足度の向上につなげられます。よくある質問や比較的簡単な問い合わせはボイスボットが対応し、それ以外の質問はオペレーターに引き継ぐ体制を構築することで、効率的な顧客対応を実現できます。

ボイスボットの詳細な情報については、下記の関連記事をご覧ください。

【業界別】音声認識の導入事例

多様な業務に活用できる音声認識は、すでに幅広い業界で導入されつつあります。以下では、その一例として、金融業・医療・製造業の三つの業界でどのように音声認識が実際に活用されているのかをご紹介します。

金融業(クレジットカード事業)

あるクレジットカード会社では、コールセンター業務にリアルタイム音声認識技術を導入しています。音声認識技術の導入により、通話しながらリアルタイムで音声をテキストに変換・表示できるようになりました。オペレーターがゼロから入力する手間がなくなり、時間削減と業務効率化を実現しました。

なお、電話の場合は伝送時の帯域を制限しているため、通常の音声よりも認識しにくい特殊な信号となります。そのため、電話音声用に学習した専用のモデルを使用すると、認識精度が高くなります。

医療・病院

ある病院では、音声認識技術を活用した音声入力を業務に導入しています。キーボード入力をせずに済むので、PC操作が苦手な医師もスムーズにテキストを入力できるようになりました。変換ミスを減らしつつ入力スピードも速くなったことから、電子カルテのほか紹介状や報告書作成にも活用されています。

製造業

ある自動車工場では、完成した製品の監査業務における入力ミスや、担当者の負担軽減などを目的に音声認識システムを導入しました。従来は、人が計測した情報を紙に記載した後、さらにそれをPCに転記していたため、時間がかかるうえ転記ミスも発生していました。

システム導入によって、測定業務の結果を音声で入力できるようになり、転記プロセスそのものも削減されました。導入から3カ月後には、業務時間をおよそ3分の2にまで削減することに成功しています。

音声認識ソフト選びで確認すべき五つのポイント

音声認識を実現するソフトウェアには多くの種類が存在します。自社に適した音声認識ソフトを選ぶためには、以下で紹介する五つのポイントを意識するのが重要です。

1. 音声認識の精度

音声認識ソフトを選ぶうえでまず確かめたいのが、音声認識の精度です。製品によって音声認識の精度は異なります。精度が低い製品を導入してしまうと、結局手作業で修正する手間が増えてしまいます。無料で利用できるトライアル期間を設けている製品であれば、事前に精度を確認してから導入を検討してください。トライアルがない場合は、インターネット上の口コミなどをチェックしてみましょう。

2. 登録単語数

十分な数の単語が登録されている製品を選ぶことも重要なポイントです。音声認識ソフトは、音声を聞きとったうえで、登録されている単語のなかからベストな単語を選択します。つまり、より多くの単語が登録されている製品であるほど、違和感のない自然な文章を作成しやすくなるということです。特定の業界に特化し、専門用語を豊富に登録した製品などもあるので、用途に応じて選びましょう。

3. ソフトの操作性

製品の操作性も確認が必要です。操作が複雑で難しい場合、従業員が使いこなせない可能性があり、導入前よりも業務効率が低下しかねません。操作性は実際に試さなければわからないため、なるべくトライアル利用できる製品で事前にチェックし、導入の可否を検討するようおすすめします。

4. 機能性

どのような機能が実装されているのかも重要なチェックポイントです。音声認識ソフトは一般に、辞書登録機能や自動学習機能、翻訳機能などを備えていることが多いですが、中には独自の機能を実装しているものもあります。製品選びに際しては、最初に自社が求める機能をリストアップし、それらの機能を備えた製品を探しましょう。

5. コストパフォーマンス

予算の範囲内で導入できるかも大切なポイントです。気になる製品をいくつかピックアップし、価格や機能などを比較しつつ検討しましょう。安さだけでなく、必要な機能やサポート体制などを備えているか、総合的な観点で検討するようにしてください。

まとめ

音声認識技術は、人が発した音声を自動でテキスト化する技術です。昨今の音声認識は、AI技術の発展によって非常に精度が高まっており、さまざまな業界や用途での活用が広がっています。
音声認識システムを選定する際は、データの充実度や音声認識の精度、操作性などから自社に合ったものを見極めましょう。音声認識ソフトの導入を検討する際は、下記の資料もお役立てください。

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高美 由果理
高美 由果理
ベルシステム24に入社後、新聞社、スポーツメーカー、保険、通販業務などのコンタクトセンター運用を経験。その後新規事業開発推進部に異動し、BtoBイベント施策立案や実行、アウトバウンド専門センター企画及び立ち上げを推進。その後コンサルティング部に異動し、センター統合業務コンサルティング、音声認識ツール導入、テキストマイニング、チャットボット導入PRJなどを多数実施。
最近ではコールリーズン分析を起点としたオムニチャネル戦略や、商品・サービス改善などのPRJ全体管理を行っている。
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