自己解決・CXを向上させるオムニチャネル設計

 2024.01.19  2024.04.23

顧客とのタッチポイントが多様化する中で、自己解決を促し、CXを向上させるためのオムニチャネル設計は、顧客エンゲージメントを高めるために欠かせない戦略のひとつとなっています。一方、いくらチャネルを増やしても、手段としてのチャネルが増えるだけでエンゲージメントに繋がっていないケースも多くあります。オムニチャネル設計をする上で私たちが考える顧客起点での設計ポイントについて解説します。

自己解決・CXを向上させるオムニチャネル設計

VOC(Voice of Customer)の取得から分析までの方法とは?

お客様の問合せチャネル利用変化

お客様の問合せ解決において企業は様々なタッチポイントを用意しています。有人で対応する窓口、電話、メール、チャットなどに加え、昨今ではボット、FAQなどのデジタルチャネルを充実させ、自己解決や無人問合せ対応の比率を上げている例が多く見られます。

当社では、お客様が問合せ解決において、初回に利用することが多いチャネルとその解決率についてアンケートを行いました。こちらがその結果です。

お客様の問合せチャネル利用変化01

引用:デジタルチャネルCX調査2023年

こちらを見ると、電話、チャット、店舗よりも問合せフォームやFAQなどを初回利用するお客様が多いことが分かります。一方、一次解決率に着目してみるとこちらはメールや電話、店舗など有人対応チャネルの解決率が高いという結果が出ています。チャットボット、ボイスボット、FAQなどの無人対応には、お客様からの一次解決率割合が50%以下と低い結果となっており、回答に満足していない様子が伺えます。つまり無人対応への期待値は高いが自己解決できているユーザーが少ないため、その期待に応えられていない現状が分かります。

お客様の自己解決率を高めるための伝統的な手法がFAQです。企業ではホームページにFAQを用意しているところがほとんどかと思います。FAQに対してどのようなところに対して不満があるのかのアンケート調査結果を見てみましょう。FAQに関しては「検索しても知りたい回答が表示されなかった」「自分の知りたい情報の回答が存在しなかった」と、回答が見つからない、見つけるのに苦労するといったことが大きな不満足につながっていることが分かります。

お客様の問合せチャネル利用変化02

引用:デジタルチャネルCX調査2023年

お客様の自己解決率をあげるために、企業側が複数のデジタルチャネルを用意しても、問題が解決しなければかえって満足度は下がってしまいます。
電話問合せを減らしたい=呼減をしたいのでデジタルチャネルを用意するといった施策に取り組んでいる企業も多くいるのですが方向性を間違えてしまうと、対応する側の視点に偏りすぎて、顧客視点が欠落してしまうのです。「こんな簡単な問い合わせぐらい、自分で調べて対応してくれたらなぁ」という発想では、自己解決はなかなか進みません。

実際、チャネル強化の施策に取り組み、デジタルチャネルを設置しているのにも関わらず、電話問合せがなかなか減らないのでどうしたらよいか?最適なデジタルチャネル設計になっているのか?
第三者視点でみてほしいといったご相談をよく受けます。

皆様もよくご存じの通り、デジタルチャネルを設置したからといってすぐに呼減に結びつくわけではありません。解決しなかったお客様は不満を高めて有人対応窓口を使うでしょうし、仕組みによっては、再度起きている事象を説明してもらう必要があります。デジタルチャネルを設置すれば、今までお電話で問合せをしてこなかった方からの流入ももちろん増えます。CX向上を目的とするのであれば、全体の流入数・お客様とのコミュニケーション量が増えるのはむしろよいことと捉えて頂くのが重要ですが、呼減を表面的に捉えると、この現象を悪く捉える傾向もあります。

それらを踏まえてデジタルチャネル上でお客様の自己解決率をあげ、ひいては呼減につながる、オムニチャネルによる問合せ設計はどのように考えたらよいのかをお話していきます。

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VOCソリューションのご紹介

オムニチャネル設計のあるべき姿

先ほどのアンケートにも自己解決を促すデジタルチャネルを用意しても、お客様の自己解決率が上がっていないという結果がありました。なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?自己解決率が低下してしまう原因として、私たちが過去みてきた中では大きく二つの原因がありました。

まず一つ目は、

  • お客様が自分の求めている回答にたどりつけない

そして二つ目は、

  • 答えにたどりついても、たどりついた先の回答が分かりにくい

といったものです。
デジタルチャネルを用意しただけでは単に箱が用意されただけで、お客様の解決率向上にはいたりません。オムニチャネルを、システム導入施策と捉え、コンテンツをないがしろにして、仕組みだけを導入している例が多くあるのです。そうではなくて、FAQであれば、質問文と回答文の組み合わせ、チャットボットであれば分岐を含めたボットシナリオなど、お客様が問い合わせたい内容に対応するコンテンツが包括的で充実していることが重要になります。

しかしコンテンツが充実しているだけではまだ自己解決率向上には至りません。お客様が迷わず自分の探したい回答にたどり着けるよう、WEB上で誘導する導線設計(検索含む)が重要となります。コンテンツの充実とWEBの導線設計、どちらを先にやるべきか?と聞かれることがあります。もちろんどちらとも優先順位高く取り組んでいただきたい重要なテーマですが、どちらか選ぶとしたらまずコンテンツの充実から実施することを勧めます。というのもせっかくWEB導線設計ができていたとしても、辿り着いた先のコンテンツが貧弱だとお客様の満足度が著しく下がってしまうためです。まずはコンテンツをある程度充実させ、その次にWEB導線設計をするのがよいと考えます。

コンテンツの充実に関して考えるべき重要なポイントがあります。それは用意するチャネル(ここでは主にデジタルチャネル)の特性に合わせてコンテンツを出し分けることです。複数のデジタルチャネル(FAQ、ボット・・・)を用意するときに、全てのチャネルに何も考えなしに全ての問合せ・回答を載せても、かえって混乱を招きます。FAQに載せるもの、チャットボットに載せるもの、それぞれ使い分けをし、お客様が必要な情報を、必要なタイミングで得られることが重要なのです。
例えば、WEBのFAQサイトは単純明快な一問一答で回答ができるものに向いています。お客様はQを検索しAを見つけます。検索サイトにも、コンテンツがインデックスされ、直接回答にたどり着くというシーンも多くあります。一方で、お客様の契約状況などによって回答が分かれてしまうものは、FAQよりもボットで選択肢で絞り込みをしながら回答を導くのに向いています。それぞれのチャネルに持たせる役割をきちんと定義し、カスタマージャーニーと想定するお客様の問い合わせせシーンに合わせて施策を最適することが重要です。

また、無人対応ではどうしても対応出来ないこともあります。またむしろ有人対応すべき内容もあります。個別対応が必要なものや、緊急性が高いものはやはり電話や有人チャットが向いていると思います。そのような個別質問が多い場合、なるべく有人対応へのスムーズな誘導をするのがよいと考えます。簡単な方法では、ホームページ上に〇〇に関しての問合せはお電話か有人チャットでお答えいたします、と説明があるだけでも効果がありますし、FAQの中にも、対応できないことは積極的に有人に誘導するメッセージを埋め込んだり、ボットの初期シナリオで内容を判断し、有人チャットなどへスイッチングさせることも行います。お客様が答えを長い時間探し回って見つからずに、有人窓口へお電話してくるよりは、早い段階で有人窓口をご案内したほうがその後の印象も変わってきます。

オムニチャネルを設計する際には、それぞれのチャネルの役割を定義し、どの話題をどのチャネルで解決させるか、適した話題を載せていくのが重要です。

リーズン分析(テキストマイニング)の重要性

チャネルの定義をして、どの話題をどのチャネルで解決させるか設計しましょうという話を先ほどしました。そのためには、現状の電話、メール、チャットなどの有人対応で、お客様から問い合わせを把握し、どういう話題が多いかを、定量的に把握することがとても重要になります。

多くのセンターでは、もちろんおおまかな把握はしており、その内容に基づいてコンテンツは改善していると思います。しかし、内容を調べてみると、カテゴリーがおおまかすぎたり、複数の話題が一つにまとめられていたり、実際の問い合わせする内容が、抽象化されてすぎていたりして、本当の意味で、お客様が何を聞きたいのかを把握していないことは、よくあります。

もし、コンテンツの見直しをしても、デジタルチャネルの自己解決率があがっていないようであれば、一度お電話やメールなどのテキストマイニングから、コールリーズンやメールリーズンを正確に把握することをお勧めしています。

例えば、お客様がデジタルチャネルを使わない理由を見てみると、「自分の考えや意見、困りごとの詳細を伝えにくいから」が、第1位です。

リーズン分析(テキストマイニング)の重要性

引用:デジタルチャネルCX調査2023年

お客様は自分の考えをテキストで上手くまとめられず、電話してくる方が一定数いらっしゃるということです。電話対応では、ベテランのオペレータが、うまくお客様を誘導し、どういう問い合わせだったのかをすっきりとまとめてしまうため、このお客様の混乱は正しく可視化されてません。やりとり全体を見ないと、その混乱具合が理解しにくいことが想像できます。

電話を音声テキスト化をしテキストマイニング技術を組みあわせてリーズン分析を行うと、問合せ内容の構成については、センターでなんとなく把握しているものと似ている場合がほとんどですが、その内容は大きく違います。FAQの言葉とお客様が実際使われている言葉の解釈が違っていたり、お客様が普段質問をするときには、いきなり細かいことを質問するのではなく、まずは大きな質問を投げかけてそこから段々深い質問に入っていく・・・といった流れに気付いたりします。さらに、複数話題を分離して分析したり、それぞれの話題の発生回数を定量的に計測もできます。

このテキストからのリーズン分析結果と、現在のデジタルチャネルのQAを照らし合わせると、様々なコンテンツの改善点が出てくるのです。問い合わせのないQは削減し、問合せ量が多いQに関連するAは徹底して表現を磨く。一緒に聞かれる内容ではQを統合するし、個別の質問が多いならQを複数に分離する。Aの言葉を平易なものに変えたり、QAのカテゴリの分け方をお客様視点に変えたりといった、地味な改善でさえ、驚くほど効果があがります。このような分析をテンプレート化し、繰り返し実行していくことで、必ずデジタルチャネルの自己解決率はあがってきます。

CRMに登録されているコールカテゴリの集計で問合せ傾向を大まかに把握されている方は多いと思いますが、お客様がどのような言葉を使って問合せをしているのかはよくわかりません。お客様の生の声(電話でもメールでもチャットでも大丈夫です)を分析して、詳細のやりとりをコンテンツに反しすることが重要なのです。

しかし応対のテキストは膨大なため、テキストマイニングツールの活用が有効です。これによって分、不要語を削除したり、お客様とオペレーターさんの対話のまとまりを保ったまま、クラスタリングができて、定量分析、定性分析や、必要に応じて、もとのテキストにもどった詳細の検証もできます。パターン化された作業はツールに、知見が必要な分析は、人間が実施することで、オムニチャネルを最適化するリーズン分析が実施できるのです。ベルシステム24ではテキストマイニングの専門知識とコンタクトセンター業務を熟知したメンバーにて分析を実施することが可能ですので、ぜひご相談ください。

まとめ

お客様のデジタルチャネルでの自己解決率をあげていくためには、

  1. コンテンツの内容が分かりやすい
  2. WEB上で誘導する導線設計がしっかりされている

この二つに着目することがよいと思います。
特に、コンテンツの内容に関しては、電話やメール、チャットなどのテキストを分析し、お客様のの問い合わせの実態を詳細に知ることで、お客様視点でのコンテンツ改善が大幅に進みます。また、電話問合せを減らすことだけを目標とせず、あくまで、お客様視点を大切にしながら分析を繰り返し、継続的改善を続けることで、お客様が必要なときに、必要な情報が最適なチャネルから得られるように設計する。それによって、お客様とのコミュニケーション量は増やしつつも、自己解決を促進する、あるべきオムニチャネルが実現できると考えます。

執筆者紹介

高美 由果理
高美 由果理
入社後、新聞社、スポーツメーカー、保険、通販業務などのコンタクトセンター運用を経験。その後新規事業開発推進部に異動し、BtoBイベント施策立案や実行、アウトバウンド専門センター企画及び立ち上げを推進。その後コンサルティング部に異動し、センター統合業務コンサルティング、音声認識ツール導入、テキストマイニング、チャットボット導入PRJなどを多数実施。
最近ではコールリーズン分析を起点としたオムニチャネル戦略や、商品・サービス改善などのPRJ全体管理を行っている。
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