CX向上につながるオペレータ支援機能導入のコツ

 2022.03.01  2022.09.30

どの業界においても顧客のニーズは多様化し、コンタクトセンターでの顧客対応も複雑化しています。多様化するニーズに対し、オペレータは自身の知識や経験のみで対応することに限界を迎え、企業はオペレータの顧客対応をサポートする仕組みが必要になります。しかしやみくもにオペレータ支援システムを導入することで顧客対応が煩雑化し、かえってオペレータを混乱させ、結果的に電話をかけてきた方のCXを低下させているセンターも散見されます。

今回は、オペレータ支援の仕組みにより効率化とCX向上を実現しているセンター事例を元に、その導入のコツを解説します。

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なぜオペレータ支援機能が必要なのか

2000年代初頭より、コンタクトセンターの在り方は大きく様変わりしてきました。当時は、コンタクトセンターのチャネルは電話中心で、センターに求められることは「電話の繋がりやすさ」、つまり目標とする「応答率」の達成が最重要視されていました。それに加え、正しい話法、言葉使い、応対マナー等で構成される「応対品質」と言われる基準を満たしていればお客様は満足しているはずであると、みなしていたのです。

しかし、時代が流れ、コンタクトセンターに対する要求も高まり、応答率や応対品質の達成はむしろ「当たり前品質」となり、問合せに対して速やかに解決すること(一次解決率)や、利用者がそのコンタクトセンターから受けたサービスを他者に推奨する度合い(NPS)や、電話対応における総合満足度(C-SAT)等が、KPIとして重視されるようになりました。

そうなると、オペレータがスムースに問合せに回答できることが重要になり、CRMシステムやナレッジシステムに加えて、オペレータ支援機能が重視されます。企業側の努力で、ホームページ上では自社商品やサービスの説明やFAQが充実し、お客様側もある程度のことは自己解決できるため、解決できなかった難易度の高い問い合わせが増える傾向にあり、オペレータが自力で適切な回答をするのは難しくなるのです。

センター内で利用するナレッジは、商品やサービスに関連する質問と回答はもちろん、場合によっては競合の商品・サービスの質問や比較に回答するため、多岐に渡る情報が必要です。また、顧客対応と同時にナレッジシステムを使いこなすリテラシーも求められ、業務は煩雑さを極めることとなります。これらの状況の中で、オペレータ支援機能は、本来の目的であるCX向上と、簡単に使いこなせるユーザビリティの両面の実現が求められています

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事例から見るオペレータ支援機能の導入のコツ

【背景・目的】

ISP企業のオペレータ支援システムの導入事例を紹介します。現在、ほとんどの家庭にインターネットサービスが普及しているため、既存顧客にサービスを長く利用していただき、他社への流出を抑えることが課題となっていました。顧客に対して様々なキャンペーンやオプションサービスを提供し、顧客満足度の維持・向上と他社との差別化を図るのです。そのため、サービス体系は複雑化し、コンタクトセンターへの問い合わせは多岐に渡り、オペレータは複数のシステム使って、膨大な情報の中から顧客の問い合わせに適した情報を選択して回答します。

それを解決するのが、オペレータ支援システムです。迅速かつ正確な対応を実現し、同時にCXを向上させることを目的として、プロジェクトが発足され、大きく分けて6つのフェーズ(計画、分析、設計、構築、導入、定着化)で進めてきました。以下では、特に重要な、分析・設計フェーズにスコープを当て、オペレータ支援機能の基本機能を作りだすプロセスを見ていきます。

【必要機能を洗い出すポイント】

まず、実態把握のための現状調査・分析を行いました。問い合わせの傾向(お問い合わせのボリュームゾーン、年代別契約サービス等)、入電対応(お問い合わせ毎の通話、保留時間、後処理時間)、オペレータの行動(お問い合わせ毎の応対プロセス、システム操作、ナレッジ参照などの行動パターン、アクションごとの作業時間)等を定量・定性の両面から分析した結果、オペレータ支援に必要な機能は、なんと100件を超えました。

しかし、抽出された機能には、CX向上に無関係なものもあります。たとえば、後処理が効率化されるがオペレータの生産性向上にしか寄与しないもの、エスカレーション処理を効率化するワークフロー機能は、管理者の工数削減にしかなりません。そのため、CXに寄与する機能を「速やかに問い合わせに対応する」「丁寧で分かりやすく伝える」「お客さま一人一人に寄り添った案内をする」に大別し視点を定め、1つ1つの機能の必要性を討議して絞り込みました。

【必要機能抽出からの気づき】

オペレータ支援機能を選定する上で、いくつかの気づきがありました。

1つ目は、お客様は過去に自分が問合せをした際のやりとりをオペレータが覚えていると感じたときに親近感を感じCXが向上することです。問い合わせた内容と状況、他部署の応対結果などをオペレータが知った上で、顧客対応を行う。具体的には、過去にテクニカルな用語(モデム、ルーターなど)を使って案内をした時、技術的内容をご理解いただけなかったお客さまには、専門用語をかみ砕いてご説明すれば相手のレベルに合わせてスムースな案内ができます。

数日前に他部署と顧客が会話した内容が瞬時に把握できれば、保留せずに即座に正しい回答が可能となるわけです。そのために、過去のお客様対応時の状況や対処方法をシステム上に記録し、別のオペレータが電話に出た時もその留意事項が画面上で示唆され確認できる機能が重要になります。最終的には、「お客さまの特性」、「お客さまの家族構成」、「利用されている機器」、「ITに関するリテラシー」、「他部署とお客さまのコンタクト履歴」等の分類で、情報の記録と閲覧機能を搭載することになりました。

2つ目は、過去の問合せだけでなく、お客様がこれから知りたいことを先回りして回答するための支援機能の有効性です。テクニカルセンターでは、起こった事象に対して、特定の設問項目や、選択項目ごとの案内する内容を型化することができます。これを画面上に自動表示させれば、よくあるトラブルに対し、フローに沿って均一の案内ができるようになります。また、契約内容に応じて、最適なプランやキャンペーン情報が推奨される機能も搭載しました。

コンタクトセンターでは、お客様からの問合せに、ただ答えるだけではCX向上になりません、一人一人に寄り添い、親身な対応をすることが重要であり、それをサポートするシステム機能の実装が、真のCXを生み出すのです。

【オペレータ支援機能を有効活用するための運用設計のコツ】

オペレータ支援機能が実装されても、システム機能だけではCX向上には十分ではありません。オペレータが情報を見逃すこともあるし、推奨される情報を無視して自身の経験と勘だけを頼りに顧客対応すれば、素晴らしい機能も宝の持ち腐れになります。オペレータが機能を漏れなく使いこなすためには、大きく2つの運用設計すべきポイントがあります。

1つ目はKPIの再設計です。コンタクトセンターでは、主に生産性指標と呼ばれるCPH(1時間当たりオペレータ1名が対応した入電件数)やAHT(オペレータが1件の対応にかかる平均処理時間)などがKPIの代表格です。そのため一部の機能(例えば、お客さま毎に最適なプランやキャンペーン情報が表示される機能)は案内を行うことで応対時間が増加し、KPIが悪化することもあります。このようにオペレータ支援機能導入に伴う運用の変化によって、新たなKPIの設定し、新しい運用が目指すことと同期するようなチューニングが必要です。運用上の懸念事項を払拭することで、オペレータ支援機能に搭載した機能が漏れなく活用できるようになります。

2つ目はオペレータのマインドセットです。従来型のセンターではオペレータは基本的に生産性のみを重視する傾向があります。新しい機能をより効果的に利用してもらうためには、新業務や新機能の目指すことをわかりやすく説明し、様々な啓蒙活動を通じて意識を変える必要があるのです。トップダウンによる新センターミッション(CX向上)の展開、全体研修による運用方針や機能説明、機能別のラーニングツールの展開など、これまでの運用とは異なることを、きちんと学べる機会を提供します。

オペレータ支援機能の将来展望

オペレータ支援機能によるCX向上というコンセプトは変わりつつもあります。オペレータ支援機能のノウハウが確立され、解決のためのコンテンツが完全に型化されると、それを直接外部に公開することで、お客様自身による自己解決ができるようになるからです。コンタクトセンターへ問い合わは激減し、数少ない例外対応だけがコンタクトセンターの役割となる日も来るでしょう。しかし、そのレベルに行くまでには、技術、コンテンツ、ユーザリテラシーなどさまざまな壁があります。今はまだ、コンタクトセンターに重要な顧客接点としての役割がある以上、何を自己解決させ、何を人の対応でさばくのか、そのバランスが重要です。そして、人の対応をよりよくするためのオペレータ支援機能については、まだ進展の余地があるのです。

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まとめ

業界を問わず顧客のニーズは多様化し、コンタクトセンターでの顧客対応も複雑化しています。オペレータのノウハウやスキルのみによる応対に限界を迎えているからこそ、オペレータ支援機能の活用が重要性を増してきます。しかし、オペレータ支援機能の導入の目的を明確にしないと、オペレーションが煩雑になるだけとなります。成功のためのコツは、目標を達成するための最適な機能(情報)を厳選し、その武器を使いこなすオペレータの環境を整備し、運用もセットでオペレーション設計を行うことです。いずれその機能や情報は、オペレータではなくエンドユーザーの自己解決を促進し、更なるCX向上あるいはセンターのコスト削減につながりますが、それまでの間は、自己解決と人の対応のバランスがとても重要になります。

執筆者紹介

衣笠 雄海
衣笠 雄海
新卒から約10年間コンタクトセンターの運用管理を経験。センター構築から業務改善、品質管理、PL管理を行い、最終的に1拠点のセンター長としてセンター管理も経験。その後コンサルティング部に異動し、上流及び業務コンサルティングを中心に業界問わず約20件程度のプロジェクトを経験し、現在はプロジェクトマネージャーとして様々なプロジェクトの全体管理を行っている。
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