自己診断によるクイックな自社コンタクトセンターアセスメント

 2021.11.18  2022.09.29

コンタクトセンターの運用はとても難しいものです。なぜなら、そこを利用するお客様が多数いて、個々に求めていることも異なれば、いつ電話をかけてくるかも分からない中で、問合せに対応するためのオペレーターの頭数を揃え、その人達を教育、研修し、それぞれの曜日や時間に必要な人員を配置してコンタクトセンターとしての品質とサービス水準を安定的に保つのは並大抵のことではありません。コンタクトセンターを最適な状態に引き上げ、維持し続けるためには日々の運用状態のチェックと改善のPDCAを回し続けることが必要となります。今回はその健康状態の判断のためのセルフアセスメントのポイントについてお伝えします。

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コンタクトセンターの健康診断のポイント①:KPI/管理指標の達成状況

まずはコンタクトセンターの健康状態をマクロに判断するには、各センターで設定されているKPIや管理指標の達成状態を判断することが一般的です。KPIと一言で言っても、対外的なサービス提供の適切さを判断する外部KPIと内部の運用状態を判断する内部KPIに大別されます。

外部KPIには、コンタクトセンターの繋がりやすさを判断するために、入電数に対して応答できた呼数の割合を表す「応答率」が代表的なものとして挙げられます。センターによっては応答率よりもさらに厳しい「サービスレベル(設定時間内応答率)」を導入しているところも多く見られます。その他には、1回の問合せの中で完結できたものがどれだけあったかを示す「一次解決率」、オペレーター1人ひとりの応対マナー、話すスピード、適切な言葉の選択ができているかなどを指数化した「応対品質」をKPIに設定しているセンターもあります。これら外部KPIは、コンタクトセンターがサービス業であるという考え方に照らすと、利用者に適切なレベルでサービス提供するというミッション達成の判断指標となるため、KPIを達成できているセンターは利用者ニーズを満たしていることとなり、ひとまず健康な状態にあると言えます。

一方で、センターの運用状態を判断する内部KPIも重要です。外部KPIを達成していればセンターの運用が全てうまくいっていて健康な状態であるとは言い切れません。例えば、目標の応答率を達成していても、過剰に人を配置して個々のオペレーターの稼働率が低く、コスト効率が悪いことなどが挙げられます。内部KPIとしては、稼働率の他に、オペレーター1人あたり1時間に何件の電話対応を行ったかを示す「CPH(Call Per Hour)」や電話1件あたりにかかる時間を示す「AHT(Average Handling Time)」、あるいはセンターの勤怠や人の定着状況を示す「欠勤率」や「退職率」などがあります。これらは利用者にとって直接的にサービス提供の度合いを左右するものではありませんが、センターの健康状態を判断する上では重要な要素となります。

内部KPIと外部KPIは、相反する場合が多いので、両者を踏まえたバランスが重要です。コンタクトセンターの利用者に適切な状態でサービス提供できていることと、センター内部が適切な状態で運営することの両立をKPIとして定め、その達成を以って初めてセンターが健康な状態であると言えるのです。センターによってKPIの項目や目標値は異なりますが、同業他社ベンチマーク情報を参照したり、経験を積む中で見極めることが重要です。

コンタクトセンターの健康診断のポイント②:センター内部の運用状況のチェック

KPIをチェックし、外部KPIも内部KPIのいずれも目標水準に達していれば、センターは健康状態と言えますが、それを常時安定的に出せるかは別問題です。外部要因や、内部要因によって、何かがうまくいかなくなることもあるでしょう。そのような場合は、KPIの結果だけを追うのではなく、KPIを達成するための運用基盤が、あるべき状態になっているかをチェックすることが重要になります。

センターのあるべき状態とは、定量的なKPI/管理指標の達成とは別に、センターとしてやるべきことがなされているかを指しています。例えば、センターの役割ごとの職務分掌を明確にすることはその一つです。コンタクトセンターのような多くの人が働く職場においては、個々の能力に依存した属人的な運用で成り立っているケースが散見されます。そのような属人化されたスキルに依存しながらKPIは達成している場合、一見うまくいっているように見えても、ある特定のメンバーが異動などで不在になっただけで、運用が立ち行かなくなって、KPIが未達成な状態になります。そのような属人性を排除し、標準的な仕組みで運用するためには、以下のようなコンタクトセンターの問題・課題整理のためのフレームワークを利用し、センターの各領域でやるべきことを整理し、未整備であればそれを体系化しセンターに浸透させるのです。

  • 戦略:センターのミッションが明確になっているか、ミッションはメンバーにきちんと浸透して認識されているか
  • プロセス:業務プロセスがフローなどで明確になっているか、フローに沿った運用がなされているか
  • 組織/体制:センターの役割毎の職務分掌が明確になっているか、各職務遂行に必要な工数が明確になっているか
  • 人員/スキル:オペレーターの人材要件が明確になっているか、職務遂行に必要な研修カリキュラムが体系的に整理されているか
  • システム/ツール:業務に必要な機能がシステムに備わっているか、システムやツールの使い勝手はよいか
  • マネジメント:センターのマネジメント項目が明確になっているか、マネジメントサイクルは定義されているか

上記はもちろん一例であり、これだけでセンターの健康状態が担保されるものではありません。ただし、上記のチェックポイントに対して課題を特定し、その解決のための仕組みを整備し浸透させることによって、改善が掛け声だけに終わらず、継続的に進む可能性が圧倒的に高くなります。

他者からの評価フィードバックに基づく改善のクローズドループも重要!

センター内部の運用状況をチェックし、チェック項目に対してギャップがある箇所を改善したとしてもKPIや管理指標が改善されないこともあります。そのような場合は、センターの利用者から直接のフィードバックをもらい、利用者の期待値が高い項目について個別具体的な改善アクションを検討することもひとつの手段となります。

センターの利用者からのフィードバックを測定する手法としては、NPS®(Net Promoter Score )やC-SAT(Customer Satisfaction、顧客満足度)などが代表的なものとなります。それらを用いてセンター利用時の総合的な満足度や他者への推奨度を把握し、それを深堀する設問を分析して、センター利用時の体験として何が満足し、何が不満足だったかを測定し、総合的な満足度や他者への推奨度との因果関係を分析し、個別具体的な改善ポイントを見出す手法です。深堀する項目としてはお待たせした時間、オペレーターの対応、回答内容の適切さなどがあり、それら個別の設問の回答結果と総合満足度の関係を分析することが一般的となります。この結果によっては重視するKPIの項目自体を入れ替えたり、その序列を変えたりすることも検討した方がよいかもしれません。

一方、内部KPIの改善には別のアプローチが有効です。センターで勤務している従業員にES調査(Employee Satisfaction、従業員満足度)によってどこに課題があるのかを確認することが代表的な手法となります。欠勤率や退職率が問題になる場合は、何らかのセンター運用やマネジメントに不満を抱えている可能性があるので、従業員から直接そのフィードバックをもらって改善のアクションを取ることが有効です。

いずれの場合もフィードバックをもらうという時点で「セルフアセスメント」ではないように思えるかもしれませんが、フィードバックはいわゆる健康状態を把握するためのセンサーと考えます。利用者にせよ従業員にせよ、サービス対する「期待」があるからこそのフィードバックであって、その結果を見て一喜一憂するのではなく、その成果の確認をサイクル(クローズドループ)に組み込んで、具体的な改善アクション実施し続けることが重要です。

※NPS®:顧客ロイヤルティを測定する指標のひとつ。その調査であるNPS®サーベイでは、「当社の商品やサービスを、知人・友人に薦める可能性はどのくらいありますか?」と質問し、それに対する11段階の評価(0~10)をもとに、顧客を3つのグループに分類。推奨者(9~10)の割合から、批判者(0~6)の割合を引いたスコアが、NPS®となります。
Net Promoter®及びNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

第三者視点によるアセスメントサービスの活用

自己診断やフィードバックに基づく改善に着手しても、なかなかうまくいかない場合もあります。大きな原因は、診断=評価ととらえ、悪い評価に対する恐れから、事実の洗い出しや、改善に向けた前向きな討議が進まないことです。そのような場合、コンタクトセンターのアウトソーサーなどが提供している、アセスメントサービスやコンサルティングを利用し、第三者視点でセンター運用のボトルネックをチェックしてもらう方法があります。コンサルティングは使い方によって、センター改革や改善に大きく効果を発揮しますが、実施に時間がかかるため、比較的安価にクイックに実施できるアセスメントサービスの方が健康診断には適しています。

第三者視点でアセスメントを行うメリットはいくつか挙げられます。

  • 1つ目は、アウトソーサーの改善知見にもとづくため、どのようなセンター形態であっても、チェックすべき共通のポイントが網羅的に整理されている。
  • 2つ目は、診断結果にもとづき特定された課題と、改善のためにアクションが、あらかじめ用意されているためゼロから対応を考える必要がない。
  • 3つ目は、アセスメントにおける内部メンバーのインタビューなどを通じて、内々では話しづらい本音や不満の原因がわかるため、本質的な改善アクションに結びつく。

などです。アセスメントサービスを提供するアウトソーサーやコンサルティング会社によって、サービス内容は異なりますが、新たな気づきを得ることも多いため、内部での診断が上手くいかない場合は導入を検討してみるのもよいでしょう。

また、質問に簡易的に回答するだけで、診断結果や改善アクションの候補を自動的に提示してくれる、簡易アセスメントシステムを提供している場合もあります。これらを使うと、アセスメントの調査対象をセンター全メンバーに拡大することもできるため、俯瞰的な傾向を分析し、管理者とメンバー、問い合わせの種類など、多様な軸で課題の違いを見ることも可能になります。

最後に、最近のコンタクトセンターは、電話だけでなくチャットボット(コンテンツのメンテナンスも含め)や有人チャットの対応をすることも多く、新たらしいチャネル対応固有の問題も発生します。それらを含めた健康診断と改善には、先行して知見を持っている、専門的アウトソーサーやコンサルティング会社に相談してみるのもよいでしょう。

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まとめ

コンタクトセンターを取り巻く環境は日々変化しています。お客様のニーズや期待もそこで働く従業員の入れ替わりもあります。そのような変化の中でセンターを最適な状態に保つためのアセスメントは必要不可欠なものと言えるでしょう。一見何も問題がないように見えても火種がくすぶっていることもあります。その兆候や異変に早期に気づくためにもセンターの健康状態に目を向けてみてください。また、状況によっては、第三者視点によるアセスメントサービスの利用も効果的です。

執筆者紹介

久保 睦
久保 睦
2001年に入社後、通信、金融、通販、メーカー、サービス業のコンタクトセンターを中心に50社以上のコンサルティング、立上げ支援、ソリューション導入企画・設計・構築、アドバイザーを担当。現在は、企業の付加価値向上、CX向上、DX実現に向けたコンタクトセンター活用のプランニングなどビジネスコンサルティングを中心にプロジェクト管理、統括責任者として多数の実績あり。
Salesforce 認定アドミニストレーター
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