近年、テレワークや働き方改革の推進に従い、電話回線の交換機をクラウド化した「クラウドPBX」のシェアが拡大しています。本記事では、クラウドPBXの概要や今後の市場動向予測、シェアが拡大している理由などについて詳しく解説します。
クラウドPBXの市場シェアは拡大傾向に
近年、クラウドPBXが市場シェアを伸ばしています。過去の、アメリカのパラレルス社による調査では、2011年時点の日本のホスト型PBXの市場シェアは1%という結果でした。
しかし、情報通信ネットワーク産業協会が2021年12月に発表した「通信機器中期需要予測[2021-2026年度]」によると、PBXはファックスやコードレスホンとともに市場規模が減少しています。
一方で、企業によるクラウドサービスの利用は増加傾向にあります。総務省が2022年5月に発表した「令和3年通信利用動向調査」では、クラウドサービスを導入している企業の割合は7割に達しています。そのうち約9割の企業が「非常に効果があった」又は「ある程度効果があった」などと、メリットを感じているようです。
コロナ禍を経て、”働く場所を問わないこと”が働き手にとって重要な選択肢のひとつとなり、テレワークを選択できる企業も増えてきました。
テレワークを実現するには、通信環境の整備が欠かせません。今後、クラウドPBXの導入は、多くの企業に広まっていくことが予想されます。
参考「2011年版 Parallels SMB Cloud InsightsTM 日本版」
参考「通信機器中期需要予測[2021-2026年度]」
参考「令和3年通信利用動向調査」
市場シェアが拡大している理由・背景
クラウドPBXのシェアが急速に増えている背景には、どのような要因があるのでしょうか。主な理由としては以下の4点が挙げられます。
UCサービスが普及している
UCサービスとは「Unified Communication」の略で、電話やメール、チャットなどさまざまな通信手段を統合したサービスのことです。代表的な例としてはコンタクトセンターが挙げられます。
UCサービスを利用すれば、PCやスマホ、電話などの通信ツールを相互連携できるため、連絡関係の作業効率化が可能です。クラウドPBXとの連携も行いやすいため、最近はUCサービスの機能を備えたクラウドPBXも増えています。クラウドPBXのシェア急拡大の背景には、このUCサービスの普及が大きく影響しています。
テレワークが拡大している
もうひとつの理由としては、テレワークの普及が考えられます。コロナ禍の感染対策や働き方改革の影響で、自宅やカフェなどで仕事をする機会も増えていますが、その場合、通信環境の整備が欠かせません。
クラウドPBXを導入すれば、自宅や出先から会社宛ての電話に出られ、社外からでも内線を使用できます。また、クラウドPBXには通話状況を記録する機能もあるため、テレワークでの従業員の稼働状況を把握しやすくなります。
導入・運用コストを削減できる
自社でPBXを設置するより導入・運用コストを抑えられるのも、クラウドPBXのメリットのひとつです。従来のPBXは、設置に多額の初期費用と時間がかかるうえ、耐用年数の都合上、数年に一度は買い替える必要がありました。
一方、クラウドPBXはベンダーがあらかじめ環境を整えているためすぐに利用でき、自社で一から設置するのに比べ、初期費用を抑えられます。また、メンテナンスやシステムのアップデートもベンダーが行うため、運用コストも削減できます。
PCやスマホで利用できる
従来のPBXは固定電話に限定されていましたが、クラウドPBXではPCやスマホをビジネスフォンとして活用できます。新たに端末を準備する必要がないためコストを抑えられるほか、顧客電話帳共有機能や内線機能、通話録音機能といったビジネスフォンに備わった機能を、PCやスマホでそのまま利用できるのもメリットです。
会社にかかってきた電話に、PCやスマートフォンで対応できることは、テレワークなど場所にこだわらない近年の働き方にもマッチしています。
BCP対策の意識が高くなっている
コロナ禍により、多くの企業においてBCP対策の意識が高くなっています。大同生命保険株式会社が公開した中小企業経営者へのアンケート、「大同生命サーベイ(2022年6月調査)」によれば、「BCPを策定している」と回答した企業は全体の62%にのぼりました。2021年の調査では42%でしたが、わずか1年で大幅な増加となっています。
クラウドPBXは、BCP対策として有効です。クラウドPBXであれば、従業員がプライベート利用している端末をオフィスの電話として利用でき、災害時でも通常業務を遂行できます。また、社内や取引先と緊急連絡をとらなくてはいけないシーンにも、クラウドPBXが役立ちます。
大企業・大手企業も導入している
導入を進めている大企業が多いのも、クラウドPBXのシェアが拡大し続けている理由です。信頼性が高く機能性に優れたサービスが増えており、大企業が積極的に導入を進めているのも、注目される理由と考えられます。
大企業が利用しているサービスであれば、セキュリティ面も安心と判断できます。これを理由に、クラウドPBXの導入に踏み切ろうとする企業も少なくありません。
クラウドPBXの将来動向
現在、テレワークの増加やDXにより、多くの企業でクラウドPBXの導入が進んでいます。
2021年に公開された株式会社グローバルインフォメーションの市場予測によると、2022年には55億米ドルだったクラウドPBXの市場規模は、2030年末までには683億米ドルに達する見込みとのことです。2020年~2030年の年平均成長率は14%と、驚異的な数字が予想されています。
市場が成長するにつれ、日本でも多様なベンダーがクラウドPBXに参入するようになってきました。人気ランキングなどでは、大手通信会社からビジネスフォンの販売業者まで、多彩な企業が名を連ねます。また、クラウドPBXの中でも大企業向けや個人向け、コールセンター向けなど細分化も始まっています。
今後もクラウドPBXはめざましい成長を続けていくはずです。さらにPBXだけでなく、さまざまな機能がひとつに集約された「統合プラットフォーム製品」の需要も拡大していくと考えられています。
参考「世界のクラウドPBX市場:考察と予測 (2028年まで)」
参考「クラウドPBXの世界市場 - 業界分析、市場規模、シェア、成長率、動向、予測:2020年~2030年」
クラウドPBXによるコンタクトセンター「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」
このようにクラウドPBXは、新しいビジネスのあり方や働き方において、重要な役割を果たすサービスです。
コールセンターのアウトソーシング事業で実績のある「株式会社ベルシステム 24」では、クラウドPBXを活用したコンタクトセンターサービス「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」を提供しています。
このサービスはクラウドPBXの利点を活かし、企業の規模にあわせて最大9,000席まで柔軟に拡大・縮小できるのがポイントです。また、自動応答や音声認識、チャットボットなどさまざまな効率化ツールも、企業のニーズに応じて組みあわせて利用できます。
まとめ
コロナ禍を経て、企業には働き方や働く場所の多様性が求められています。テレワークを推奨する企業もめずらしくありません。クラウドPBXは、どこにいてもスマホやPCをビジネスフォンとして使えます。初期費用や運用コストも従来のPBXより安く抑えられるため、今後もテレワークを進める企業の需要が高まると考えられます。
また、クラウド型のPBXは、災害時の影響を受けにくいため、オフィスが被災した場合でもスマホを使用して電話業務を遂行できます。
「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」は、クラウドPBXによるコンタクトセンターサービスです。自動応答や音声認識、チャットボットなどのさまざまなサービスは、企業の電話業務の効率化や利便性向上に有効です。テレワークや出張先でも環境に左右されない状態で電話を利用したいと考えている企業は、ぜひ「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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