近年、テレワークや働き方改革の推進に従い、電話回線の交換機をクラウド化した「クラウドPBX」のシェアが拡大しています。本記事では、クラウドPBXの概要や今後の市場動向予測、シェアが拡大している理由などについて詳しく解説します。
クラウドPBXとは
PBXとは「Private Branch eXchange」の略で、日本語では「電話回線の交換機」のことを指します。PBXは複数の電話回線を集約するほか、外線を内線につなげる、内線同士の接続や転送を行うなどの機能を備えています。そのため、多くの電話回線を使う大規模な企業や、コールセンターなどになくてはならないものです。
クラウドPBXとは、従来オフィスに設置していたPBXをクラウド化したもので、インターネットさえあればどこでもPBXの機能を利用できます。設定もWebブラウザやアプリケーション上で簡単に行えるので、手軽に導入できるのもメリットです。
クラウドPBXを利用すれば、オフィス以外の別の拠点も内線化できるため、出張先や自宅からでも無料で通話ができます。また、社員のスマホを内線化できるため、社外からの電話を直接スマホで受けられ、どこにいても会社の電話番号で発着信できます。
さらに、従来のPBXではオフィスが地震や洪水などの災害に見舞われた場合、社内の電話が一斉に使えなくなる可能性がありましたが、クラウドPBXではすべての機能がクラウド上で管理されているため、災害の影響を受けるリスクを減らせます。
クラウドPBXの市場シェアは拡大傾向にある
近年、クラウドPBXの市場シェアは着実に拡大しつつあります。アメリカのパラレルス社が過去に行った調査結果によると、2011年時点の日本におけるホスト型PBXの市場シェアはわずか1%にすぎませんでした。
しかし、2021年12月に情報通信ネットワーク産業協会が発表した「通信機器中期需要予測[2021-2026年度]」を見ると、従来のPBXはファックスやコードレスホンとともに需要が減少しています。
反面、クラウドサービスを導入する企業は増加傾向にあります。総務省が発表した「令和3年通信利用動向調査」を見ると、クラウドサービスを導入している企業の割合は7割を超え、9割近くの企業がそのメリットを認識しています。
テレワークやフリーアドレスなど、場所にこだわらない働き方が浸透するには、それを実現する通信環境の整備が欠かせません。そのため、今後もますます多くの企業でクラウドPBXの導入が進んでいくと考えられます。
参考「2011年版 Parallels SMB Cloud InsightsTM 日本版」
参考「令和3年通信利用動向調査」
クラウドPBXの将来動向
現在、テレワークの増加やDX化により、多くの企業でクラウドPBXの導入が進んでいます。
株式会社グローバルインフォメーションが2021年に公開した市場予測では、2022年には55億米ドルだったクラウドPBXの市場規模は、2030年末までには683億米ドルに達する見込みとのことです。2020年~2030年の年平均成長率は14%と、驚異的な数字が予想されています。
市場が成長するにつれ、日本でも多様なベンダーがクラウドPBXに参入するようになってきました。人気ランキングなどでは、大手通信会社からビジネスフォンの販売業者まで、多彩な企業が名を連ねます。また、クラウドPBXの中でも大企業向けや個人向け、コールセンター向けなど細分化も始まっています。
今後もクラウドPBXはめざましい成長を続けていくことでしょう。さらにPBXだけでなく、さまざまな機能がひとつに集約された「統合プラットフォーム製品」の需要も拡大していくと考えられています。
参考「世界のクラウドPBX市場:考察と予測 (2028年まで)」
参考「クラウドPBXの世界市場 - 業界分析、市場規模、シェア、成長率、動向、予測:2020年~2030年」
クラウドPBXのシェアが上昇している理由
クラウドPBXのシェアが急速に増えている背景には、どのような要因があるのでしょうか。主な理由としては以下の4点が挙げられます。
UCサービスが普及している
UCサービスとは「Unified Communication」の略で、電話やメール、チャットなどさまざまな通信手段を統合したサービスのことです。代表的な例としてはコンタクトセンターが挙げられます。
UCサービスを利用すれば、PCやスマホ、電話などの通信ツールを相互連携できるため、連絡関係の作業を効率化できます。クラウドPBXとの連携も行いやすいため、最近はUCサービスの機能を備えたクラウドPBXも増えています。クラウドPBXのシェア急拡大の背景には、このUCサービスの普及が大きく影響しているでしょう。
テレワークが拡大している
もうひとつの理由としては、テレワークの普及が考えられます。コロナ禍の感染対策や働き方改革の影響で、自宅やカフェなどで仕事をする機会も増えていますが、その場合、通信環境の整備が欠かせません。
クラウドPBXを導入すれば、自宅や出先から会社宛ての電話に出られ、社外からでも内線を使用できます。また、クラウドPBXには通話状況を記録する機能もあるため、テレワークでの従業員の稼働状況を把握しやすくなります。
導入・運用コストを削減できる
自社でPBXを設置するより導入・運用コストを抑えられるのも、クラウドPBXのメリットのひとつです。従来のPBXは、設置に多額の初期費用と時間がかかるうえ、耐用年数の都合上、数年に一度は買い替える必要がありました。
一方、クラウドPBXはベンダーがあらかじめ環境を整えているためすぐに利用でき、自社で一から設置するのに比べ、初期費用を抑えられます。また、メンテナンスやシステムのアップデートもベンダーが行うため、運用コストも削減できます。
PCやスマホで利用できる
従来のPBXは固定電話に限定されていましたが、クラウドPBXではPCやスマホをビジネスフォンとして活用できます。新たに端末を準備する必要がないためコストを抑えられるほか、顧客電話帳共有機能や内線機能、通話録音機能といったビジネスフォンに備わった機能を、PCやスマホでそのまま利用できるのもメリットです。
会社にかかってきた電話に、PCやスマートフォンで対応できることは、テレワークなど場所にこだわらない近年の働き方にもマッチしています。
クラウドPBXによるコンタクトセンター「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」
このようにクラウドPBXは、新しいビジネスのあり方や働き方において、重要な役割を果たすサービスです。
コールセンターのアウトソーシング事業で実績のある「株式会社ベルシステム 24」では、クラウドPBXを活用したコンタクトセンターサービス「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」を提供しています。
このサービスはクラウドPBXの利点を活かし、企業の規模にあわせて最大9,000席まで柔軟に拡大・縮小できるのがポイントです。また、自動応答や音声認識、チャットボットなどさまざまな効率化ツールも、企業のニーズに応じて組みあわせて利用できます。
まとめ
場所にこだわらない働き方が浸透しつつある昨今、どこにいてもスマホやPCをビジネスフォンとして使えるクラウドPBXは、たいへん有用なサービスです。初期費用や運用コストも従来のPBXより安く抑えられるため、今後も多くの企業で普及が進んでいくことでしょう。
災害時などでも影響を受けにくいクラウド型のPBXは、リスクマネジメントとしても有効な手段です。業務の効率化を進めたい、あるいはテレワークや出張などで会社にいるときと変わらない電話環境を整えたいと考えている企業は、ぜひクラウドPBXの導入を検討してはいかがでしょうか。
「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」は、クラウドPBXによるコンタクトセンターサービスです。自動応答や音声認識、チャットボットなどのさまざまなサービスは、企業の電話業務の効率化や利便性向上に貢献してくれるでしょう。
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