- 国内PBXメーカーのシェアと特徴
- クラウドPBXの導入率と拡大要因
- 自社に合ったサービスの選び方
近年、テレワークや働き方改革の推進に従い、電話回線の交換機をクラウド化した「クラウドPBX」のシェアが拡大しています。本記事では、クラウドPBXの概要や今後の市場動向予測、シェアが拡大している理由について詳しく解説します。
国内従来型PBXメーカー/ビジネスフォン市場シェアと特徴
国内PBX市場はNTTが約40〜50%のシェアで首位を占め、SAXAとNECが各約20%で続きます。日立・ナカヨ・岩通は業種特化の強みで安定したシェアを確保しており、それぞれ選定時の参考軸が異なります。
【シェア第1位】NTT(約40〜50%)
国内ビジネスフォン市場で最大シェアを持つのがNTTです。圧倒的なブランド力と全国規模のサポート体制が、大企業から中小企業まで幅広い支持を集める理由です。また、流通量の多さから中古市場でも機器や保守部品が入手しやすく、長期運用のコスト管理がしやすい点も評価されています。
【シェア第2位・3位】SAXA(サクサ)・NEC(各約20%)
NTTに次ぐシェアを分け合うのがSAXAとNECです。両社とも約20%のシェアを持ちますが、得意とする規模・用途が異なります。
SAXA(サクサ)は中小企業からの支持が厚く、コストパフォーマンスの高さと操作のしやすさを両立しています。スマートフォンを内線化できるアプリ機能など、現場のニーズに合わせた拡張性が評価されています。NECは数千人規模の内線収容や高度な着信振り分け(ルーティング)に強みを持ち、大規模オフィスやコールセンター向けの採用実績が豊富です。
【その他主要メーカー】日立・ナカヨ・岩通
日立・ナカヨ・岩通(岩崎通信機)は、特定業種や用途に特化した強みで安定した地位を確立しています。ナカヨは医療・介護分野でのナースコール連携や操作のしやすさに定評があります。日立は製造業や官公庁など、堅牢性と長期安定稼働が求められる現場での採用が多い傾向です。岩通はホテルや病院での実績が多く、省エネ設計が特徴です。
クラウドPBXの市場規模やシェアなどの動向
近年、クラウドPBXが市場シェアを伸ばしています。米パラレルス社の調査では、2011年時点でホスト型PBXの市場シェアは1%でした。ただ、2012年は従業員10人以上をもつ企業のうち、約30%がホスト型PBXを追加したいとしており、2011年の1%から急成長が予測されます。情報通信ネットワーク産業協会が2021年12月に発表した調査でも、従来型のPBXは市場規模が減少しており、クラウドPBXのシェア拡大が推測できます。
一般的に、クラウドサービスの利用は増加傾向にあります。総務省が2023年5月に発表した調査では、クラウドサービスを導入している企業は7割に達しています。また、総務省「令和5年度 電気通信事業分野における市場動向の分析」によると、全国の法人利用者のうちクラウド電話を利用している割合は6.1%です。数字だけを見ると成長途上に映りますが、従業員5,000人以上の大企業では12.2%が「現在の固定電話を辞めて主にクラウド電話を利用する」と回答しています。つまり大企業の先行移行が、市場全体の普及を引っ張る構図となっています。
テレワーク制度などのスムーズな運用には、通信環境の整備が欠かせません。今後もクラウドPBXはさらに広まっていくと予想されます。
参考「SMB Cloud InsightsTM」
参考「通信機器中期需要予測[2021-2026年度]」
参考「令和4年通信利用動向調査」
市場シェア上位の主要クラウドPBXサービス
クラウドPBX市場には多様なベンダーが参入しており、規模や機能特性によって棲み分けが進んでいます。
ひかりクラウドPBX(NTT東日本)は、キャリアとしての安定感と知名度でシェア上位に位置します。
BIZTELはコールセンター向けクラウドシステム市場で8年連続国内シェアNo.1を獲得しており、2,000社以上への導入実績を持ちます。
MOT/TEL(モッテル)はスマホ内線化に強みを持ち、中小企業を中心に累計32,000社以上への導入実績があります。
楽天コネクト SmaComは初期費用0円で導入でき、小・中規模向けのテレワーク環境整備に適しています。
モバビジは総務省判定基準クラスAの音声品質(固定電話並みのクリアな通話)を実現しており、通話品質を重視する法人からの支持を集めています。
クラウドPBXのシェアが拡大している背景
クラウドPBXのシェアが急速に増えている背景には、どのような要因があるのでしょうか。主な理由としては以下の6点が挙げられます。
理由1:UCサービスが普及しているため
UCサービスとは「Unified Communication」の略で、電話やメール、チャットなどさまざまな通信手段を統合したサービスのことです。代表的な例としてはコンタクトセンターが挙げられます。
UCサービスを利用すれば、PCやスマホ、電話などの通信ツールを相互連携できるため、連絡関係の作業効率化が可能です。クラウドPBXとの連携も行いやすいため、最近はUCサービスの機能を備えたクラウドPBXも増えています。クラウドPBXのシェア急拡大の背景には、このUCサービスの普及が大きく影響しています。
理由2:テレワークが拡大しているため
もうひとつの理由としては、テレワークの普及が考えられます。コロナ禍の感染対策や働き方改革の影響で、自宅やカフェなどで仕事をする機会も増えていますが、その場合、通信環境の整備が欠かせません。
クラウドPBXを導入すれば、自宅や出先から会社宛ての電話に出られ、社外からでも内線を使用できます。また、クラウドPBXには通話状況を記録する機能もあるため、テレワークでの従業員の稼働状況を把握しやすくなります。
理由3:コストを削減できるため
自社でPBXを設置するより導入・運用コストを抑えられるのも、クラウドPBXのメリットです。従来のPBXは、設置に多額の初期費用と時間がかかるうえ、耐用年数の都合上、数年に一度は買い替える必要がありました。
一方、クラウドPBXはベンダーがあらかじめ環境を整えているためすぐに利用でき、自社で一から設置するのに比べ、初期費用を抑えられます。また、メンテナンスやシステムのアップデートもベンダーが行うため、運用コストも削減できます。
理由4:スマホ利用が可能と利便性が高いため
従来のPBXは固定電話に限定されていましたが、クラウドPBXではPCやスマホをビジネスフォンとして活用できます。新たに端末を準備する必要がないためコストを抑えられるほか、顧客電話帳共有機能や内線機能、通話録音機能といったビジネスフォンに備わった機能を、PCやスマホでそのまま利用できるのもメリットです。
会社にかかってきた電話に、PCやスマートフォンで対応できることは、テレワークなど場所にこだわらない近年の働き方にもマッチしています。
理由5:BCP対策が進んでいるため
コロナ禍により、多くの企業においてBCP対策の意識が高まっています。大同生命保険株式会社が公開した中小企業経営者へのアンケート、「大同生命サーベイ(2022年6月調査)」によれば、「BCPを策定している」と回答した企業は全体の62%にのぼりました。2021年の調査では42%だったものが、わずか1年で大幅な増加となっています。
クラウドPBXは、BCP対策としても有効です。クラウドPBXであれば、従業員がプライベート利用している端末をオフィスの電話として利用でき、災害時でも通常業務を遂行できます。また、社内や取引先と緊急連絡をとらなくてはいけないシーンにも、クラウドPBXが役立ちます。
参照:大同生命サーベイ2022年6月度調査レポート
理由6:クラウドサービス自体が普及したため
クラウドサービスはインターネットを介することから、当初は情報漏洩などが不安視されがちでした。しかし、技術面の進歩により、セキュリティの信頼性が高くなり、機能性に優れたサービスが増えています。
クラウドを利用する企業が7割に達しているといったデータからも分かるように、以前と比べて導入に対する心理的なハードルは下がってきています。
とくに大企業がクラウドサービスを導入し活用するようになったことで、クラウドPBXがより注目され、シェアを拡大しているとも考えられます。大企業が積極的に導入を進めているサービスであれば、そのほかの企業にとっても安心して取り入れられるからです。
このように近年は、セキュリティ面の信頼感や多くのメリットから、クラウドPBXの導入に踏み切ろうとする企業が増えてきています。
理由7:ISDN回線の終了(2024年問題)が移行を後押しているため
2024年1月に開始されたISDN回線(INSネットディジタル通信モード)の終了も、クラウドPBX移行を加速させた重要な外的要因です。
長年にわたりビジネスフォンの基盤を支えてきたISDN回線が使えなくなることで、古いシステムのまま運用を続けることが不可能になりました。この「2024年問題」は、稼働年数を超えた既存システムの刷新を外部から促す強力なきっかけとなっています。ISDN回線からの移行先として、維持費のかかるオンプレミスPBXではなく、コスト効率の高いクラウドPBXを選ぶ企業が増えており、市場全体のクラウドシフトを後押ししています。
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クラウドPBXの今後の市場予測
現在、テレワークの増加やDXにより、多くの企業でクラウドPBXの導入が進んでいます。
2021年に公開された株式会社グローバルインフォメーションの市場予測によると、2022年には55億米ドルだったクラウドPBXの市場規模は、2030年末までには683億米ドルに達する見込みとのことです。2020年~2030年の年平均成長率は14%と、驚異的な数字が予想されています。
市場が成長するにつれ、日本でも多様なベンダーがクラウドPBXに参入するようになってきました。人気ランキングなどでは、大手通信会社からビジネスフォンの販売業者まで、多彩な企業が名を連ねます。また、クラウドPBXの中でも大企業向けや個人向け、コールセンター向けなど細分化も始まっています。
今後もクラウドPBXはめざましい成長を続けていくはずです。さらにPBXだけでなく、さまざまな機能がひとつに集約された「統合プラットフォーム製品」の需要も拡大していくと考えられています。
参考「世界のクラウドPBX市場:考察と予測 (2028年まで)」
参考「クラウドPBXの世界市場 - 業界分析、市場規模、シェア、成長率、動向、予測:2020年~2030年」
自社に合ったクラウドPBXの選び方
シェアや導入実績のデータは製品選びの参考になりますが、最終的には自社の規模・業務フロー・求める機能水準に照らした比較が欠かせません。
中小企業向けのポイント
中小企業がクラウドPBXを選ぶ際の優先軸は、「運用のしやすさ」と「サポートの手厚さ」です。専任のIT担当者がいない環境では、導入後の日常操作や設定変更を自社だけで対応できるかが重要になります。初期費用の安さだけでなく、スマートフォン専用アプリの操作性と、トラブル発生時に頼れるサポート体制が整っているかを事前に確認してください。「安さ」のみで選んで運用に行き詰まるケースが、中小企業では起きやすい傾向があります。
大企業・複数拠点向けのポイント
大規模環境では、安定性・拡張性・既存システムとの連携性が選定の必須要件になります。拠点間の統合や数千人規模の利用を想定する場合、スケーラビリティ(拡張性)と高度なセキュリティ水準が前提条件です。SalesforceなどのCRM(顧客管理システム)との連携にはAPI連携機能が必要になります。導入前の段階でシステム構成図や技術仕様書を取り寄せ、自社の要件との適合を技術担当レベルで確認することを推奨します。
企業規模を問わず確認すべき注意点
企業規模を問わず必ず確認すべき最優先事項が、既存の代表番号をそのまま引き継げるか(番号ポータビリティ対応)という点です。「03」「06」などの市外局番付き番号を変えると、名刺・広告物の差し替えに加え、取引先への周知対応が発生します。顧客への影響を最小化するためにも、契約前に番号の引き継ぎ可否を必ず確認してください。また、クラウドPBXはインターネット回線を利用するため、実際のオフィス環境での音声品質(遅延やノイズの有無)を無料トライアルで確かめてから契約することを推奨します。
まとめ
コロナ禍を経て、企業には働き方や働く場所の多様性が求められています。テレワークを推奨する企業もめずらしくありません。
クラウドPBXは、どこにいてもスマホやPCをビジネスフォンとして使えます。初期費用や運用コストも従来のPBXより安く抑えられるため、今後もテレワークを進める企業の需要が高まるはずです。また、クラウド型のPBXは、災害時の影響を受けにくいため、オフィスが被災した場合でもスマホを使用して電話業務を遂行できます。
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