コールセンターの業務効率化のために電話自動応答システム(IVR)の導入を検討する経営者や管理職、マーケティング担当の方は少なくありません。顧客との窓口となるコールセンターへIVRを効果的に導入すれば、顧客満足度が高まることも期待できます。
この記事では、IVRの概要から具体的なメリット・デメリット、導入する際の選び方やポイントまで、詳しく解説します。
IVRとは?
IVR(Interactive Voice Response)とは、電話の問い合わせに対して自動で音声応答を行うシステムです。顧客が音声やプッシュボタンで操作することで、内容に応じて適切な部署や担当者につなぐことができます。
コールセンターや配送受付、本人認証など幅広い場面で活用されており、業務効率化や人手不足の解消、顧客満足度向上に貢献しています。音声認識やAI技術の発展により、応答精度や機能も進化しています。
IVRは24時間対応が可能で、顧客は営業時間外でも手続きや問い合わせができます。また、よくある質問には録音メッセージで即時回答できるため、オペレーターの負担軽減や待ち時間の短縮にも有効です。
さらに、AIや音声認識との連携により、顧客の発話内容を理解し、より柔軟な対応が可能となっています。最近では、スマートフォン画面に操作メニューを表示する「ビジュアルIVR」も登場し、利便性が向上しています。
IVRは日本語で「電話自動応答システム」や「自動音声応答システム」と呼ばれています。
IVRとVRUの違い
VRUは「Voice Response Unit」の略で、「音声応答装置」とも呼ばれており、IVRと同じ意味として使われることもあります。ただ、VRUは発信者の情報を保管・運用するために活用されるものです。発信者の目的に応じて適切に誘導するIVRとはその点で異なります。
IVRとビジュアルIVRの違い
IVRは音声によって顧客を誘導、案内するものである一方、近年注目されている「ビジュアルIVR」は、画面を通して視覚的に案内するのが特徴です。
IVRの歴史と注目を集める背景
IVRは1980年代から活用され始め、現在は少子高齢化に伴う労働人口の減少の問題やAIの発達により注目されています。
特にコールセンター業界では、人手が不足する状況が続いています。顧客対応業務は精神的な負荷が大きく、ひとたび退職者が出ると、残っているスタッフに負担がかかることも問題です。
また、新人オペレーターは研修を受けても、複雑で困難な対応はすぐに行えません。業務に慣れていない状態で過剰なストレスを抱えれば、離職する可能性も高まります。
IVRは問い合わせ内容によって自動的に振り分けを行うことで、オペレーターの負担軽減や業務効率化に寄与し、これらの課題を解決します。また、AI技術の活用や、ビジュアルIVRの登場などによって、業務効率化へのさらなる貢献が期待されます。
IVRの仕組み
IVRは自動で音声メッセージを流し、複数の選択肢からプッシュ操作で選ぶよう、顧客に促します。
この操作を数回繰り返すことで問い合わせ内容の振り分けを効率的に行い、最終的に顧客は音声メッセージによる回答にたどりつく、あるいは適切なオペレーターにつながり回答を得るという流れです。
IVRの5つの機能
ここでは、IVRの代表的な機能を5つご紹介します。
1. 問い合わせに対する自動応対
想定される質問に対し回答メッセージを録音しておくことで、IVRが自動音声で対応してくれる機能です。
コールセンターなどにIVRを導入すれば、よくある質問に対してオペレーターを介さず、模範的な内容を顧客に案内できます。業務効率化が進み、オペレーターの負担軽減につながります。離職の回避につながるだけでなく、働きやすい職場であることをアピールでき、新たな人材獲得にも有利です。
2. 質問内容に合わせた振り分け
顧客からの問い合わせ内容に応じて、最適なオペレーターへ振り分けられます。顧客がガイダンスにしたがってボタンを操作していくことで、あらかじめ割り振られている専門の部署やオペレーターにつながる仕組みです。
これにより、顧客はほとんど待たずに必要な情報を受け取りやすくなります。業務効率化を図れるのもメリットです。
3. 折り返し電話の予約
電話口で一定時間以上待たせている顧客に対して、折り返し連絡の予約を案内する機能も活用できます。
すべての問い合わせに対応しきれない場合、自社の利益に直結する顧客を逃しかねません。
IVRはこうしたリスクを防ぎ、顧客を電話の前で長時間待たせずにすむため、顧客満足度向上につながります。
4. オペレーター不在時の応対
IVRなら、オペレーターの不在時にも問い合わせを受けられます。休日や営業時間外、回線が混雑しやすい時間帯などでも制約なく、取りこぼさずに顧客対応できるのがIVRの強みです。
自分の都合のいいタイミングで電話をかけられ、求める情報をタイムリーに得られるため、顧客の満足度アップにつながります。企業イメージや業績向上に役立つ可能性も高まります。
5. 自動発信・音声案内
IVRには顧客へ自動発信できる機能もあります。通話後に、あらかじめ設定しておいた音声案内を行うことも可能です。
支払い遅延者に対して自動の督促メッセージを流せたり、モチベーションの高い顧客へ自動で販促ができたりします。特に後者の場合、営業担当者がわざわざ個別に電話をかける必要がなく、営業活動を効率化できる点も魅力です。
IVRの種類と費用の目安
IVRの種類は、オンプレミス型とクラウド型の2つに大きく分類できます。
- クラウド型
自社が希望するカスタマイズをしにくいのはデメリットであるものの、自社サーバが不要であり、初期コストを抑えられます。 - オンプレミス型
クラウド型と異なり自社サーバの構築が必要になるため、導入時に一定のコストがかかります。一方、カスタマイズしやすいのが魅力です。
IVR導入で得られる5つのメリット
- 24時間365日対応可能
- 応答率の向上
- 顧客満足度の向上
- オペレーターのリソースの効率的な活用
- オペレーター不足の解消
常時顧客対応が可能になるため、おのずと応答率が向上します。また、欲しい情報をいつでも得られるため、顧客満足度が向上するでしょう。限られたオペレーターのリソースを、より複雑な対応に集中させることも可能です。もちろん、オペレーターを増員せずにすみます。
IVRのデメリット
- 顧客にストレスを与える可能性がある
- シナリオ設計によってはオペレーターに問い合わせが集中する
振り分けの項目が多すぎると音声ガイダンスが長くなり、顧客がストレスを感じてしまうかもしれません。また、どの項目を選べばよいか分からない場合、結局オペレーターの窓口へ集中してしまうおそれがあります。
IVRの用途・活用シーン
- コールセンターでの問い合わせ対応
- 宅配便の再配達受付サービス
- 不在時の対応
- 災害情報の発信
コールセンターでは一人あたりの業務量を軽減できるため、IVR導入が有効です。また宅配業界では再配達依頼の際、自動音声案内が使われています。IVRの自動音声案内によって、不在時にも販売機会を逃しません。地震や台風など災害時の一斉配信や安否情報などの確認にも使われることがあります。
そのほかの活用方法については、ぜひ以下の関連記事もご参照ください。
IVRの選び方|3つのポイント
- 必要な機能が備わっているか
- 運営側のサポート体制は充実しているか
- ビジュアルIVRという選択肢も
まず、自社の目的と照合して、必要な機能やメリットをリスト化しましょう。困ったとき親身になってサポートしてもらえるかも重要なポイントです。また、近年はアプリ画面で知りたい情報をチェックできるビジュアルIVRも増えています。
IVRを導入する際の3つの注意点
- ガイダンスメニューを複雑にしない
- IVRの設定を定期的に見直す
- 「オペレーターと話せる」選択肢を入れる
音声選択肢のメニューはできるだけ分かりやすく、シンプルに設定しましょう。一度設定すれば終わりではなく、適宜改善することも大切です。最後のメニューにはオペレーターに直接つながる選択肢を盛り込んでおくと、満足度向上が期待できます。
まとめ
IVRを導入することで、企業の業務効率化や顧客満足度向上を図れます。
自社のコールセンターへIVR導入を検討する際には、「自社が必要とする機能が備わっているか」「運営者側のサポート体制はしっかりしているか」などを選定軸としましょう。顧客目線でよりよい運用方法を考えることも重要です。オペレーターの業務負担を減らし、顧客満足度を向上させるため、ぜひIVR導入を検討してみてください。
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