カスタマーサクセスとは?
業務内容やメリット、指標をわかりやすく解説

 2022.12.15  2024.08.26

市場の成熟化にともない、商品・サービスの差別化が困難となりつつある現在、いかにして優れた顧客体験を創出するかが、企業にとって重要な経営課題です。この課題を解決するために、最近注目されているのが「カスタマーサクセス」です。本記事では、カスタマーサクセスの概要や主な業務内容、実践するメリット、関連する指標や押さえたいポイントなどをわかりやすく解説します。カスタマーサクセスへの理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

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カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセス(Customer Success)は、直訳で「顧客の成功」を意味する、企業による「顧客を成功に導くための取り組み」のことです。マーケティング用語では、「顧客の成功体験の創出と利益拡大とを推進する活動や戦略」という意味です。顧客の成功とは、「企業が提供する商品やサービスを使用することにより、顧客が望んだ結果を得ること」を指します。

カスタマーサクセスのために企業が実施する具体的な施策としては、以下のようなものがあります。最終的には顧客の成功を通して、自社の収益性を最大化させることが目標です。

  • ソリューションの導入や設計支援
  • ソリューション実装後のアフターフォローや利用状況の分析
  • 経営課題の解決に寄与する提案

なお、カスタマーサクセスには上記の通り、企業の成長戦略・施策を指す場合と、企業の部門や職種を指す場合があります。

また、カスタマーサクセスと似た言葉として、「カスタマーサポート」があります。どちらも顧客満足度の向上につながる施策・職種ですが、カスタマーサクセスが顧客に対して能動的に働きかける一方、カスタマーサポートでは顧客からの問い合わせなどに受動的に対応する点で異なります。

カスタマーサクセスの業務内容

カスタマーサクセスの主な業務内容は、大きく以下の3つに分けられます。

  • 顧客の課題を解決するためのソリューション導入の支援
  • ソリューション導入後の運用体制に対するアフターフォロー
  • 顧客交流機会を提供し、顧客の課題解決の可能性を高める

カスタマーサクセスと営業の違い

職種として見た場合、カスタマーサクセスも営業も、自社の利益拡大を目的にしている点では同じですが、(1)目標、(2)役割・仕事内容、(3)KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が異なります。

カスタマーサクセスの目標は、顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めて、商品・サービスを利用し続けてもらうことですが、営業の目標は新規顧客の獲得です。役割・仕事内容では、営業が見込み顧客を顧客化することであるのに対し、カスタマーサクセスでは顧客満足度の維持・向上です。そしてKPIは、営業の場合は新規契約金額など、カスタマーサクセスの場合はLTVにつながる継続率などが用いられます。

カスタマーサクセスと営業との違いについて、詳しくは以下の関連記事をご覧ください。

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カスタマーサクセスが注目を集める背景

近年、カスタマーサクセスが注目を集め、取り組む企業が増えているのには、ビジネスモデルの変化やCX 概念の浸透といった背景があります。

ビジネスモデルの変化

企業が顧客に商品・サービスを提供する際、従来は買い切り(購入)型が大勢を占めていました。しかし、近年は顧客が定額を支払って、継続利用できる権利を得るサブスクリプション(サブスク)型が一般化し、ビジネスモデルが変化してきました。SaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)などのクラウドサービスの普及も、同様の流れにあります。

サブスクリプションモデルで安定した収益を確保するためには、顧客のLTVを向上させ、サービスを継続的に利用してもらう必要があります。上述した通り、これはカスタマーサクセスの目的です。サブスクリプションモデルの普及にともなって、カスタマーサクセスが注目を集めるのは当然といえます。

CX(Customer Experience)概念の浸透

上記「ビジネスモデルの変化」とも関連しますが、近年の消費行動が商品やサービスを購入する「モノ消費」から、購入した商品やサービスでどのような体験ができるのかを従事する「コト消費」傾向に変わり、CX(Customer Experience:顧客体験価値)概念が市場に浸透してきたことも、カスタマーサクセスが注目を集めている理由のひとつです。

消費行動が変わった結果、企業の注目すべき点が、顧客による商品・サービスの購入だけでなく、購入前から購入後の顧客体験の良否にまで及ぶようになり、カスタマーサクセスによって顧客との関係性を構築し、CXを向上させることが重要になったためです。

CXの良否は、企業から購入した商品・サービスに直接関連する体験だけでなく、購入前や購入後の体験、たとえば企業への問い合わせなどによっても変わってきます。実際、マイボイスコム株式会社が実施した「デジタルチャネルCX調査 2023年版」によれば、問い合わせチャネル別の一次解決率と顧客満足度に次のような相関関係があるとされています。

  • 有人チャットは、その他の有人対応(電話や有人窓口)に比べて一次解決率が低く、満足度も低い
  • ボイスボットやチャットボットの自動応答では、チャットボットのほうが一次解決率は低いが、初回問い合わせで解決する場合は満足度が高い

さらに同調査では、ボイスチャット・チャットボット・FAQといった「自己解決チャネル」は、電話・電子メール・有人チャットなどの「有人対応チャネル」よりも、一次解決率・満足度ともに低くなっています。CXを向上させるには、企業と顧客とが接するすべての点に配慮しなければならないことがわかります。

カスタマーサクセス導入のメリット:CX向上

カスタマーサクセスの導入によって、競合他社との差別化や解約率の低下といったメリットが得られます。

競合他社との差別化

現代は、商品やサービスが飽和状態となり、市場は成熟化しています。消費行動が物質的価値を重視する「モノ消費」から、体験価値に重きを置く「コト消費」へと遷移していくなか、市場の競争優位性を確立するためには、競合他社にはないCXを創出しなくてはなりません。

その点、カスタマーサクセスは、そもそものゴールが質の高い顧客体験で顧客満足度を向上させ、企業収益を最大化させることにあるため、取り組みのなかで競合他社との差別化を図れるメリットがあります。

解約率の低下

企業が持続的に発展していくためには、新規顧客の獲得はもちろん、既存顧客をロイヤルカスタマー(優良顧客・常連客)化し、継続的な収益を確保する構造が不可欠です。

たとえば、サブスクリプション型のビジネスモデルを展開する企業では、サービスの解約率の改善と継続率の向上とが重要な経営課題です。継続的な利用を目的とするサブスクリプションモデルでは、新規顧客の獲得率のみを伸ばしても、解約率が高ければ利益につながりません。

カスタマーサクセスに取り組み、顧客の潜在需要や消費者のインサイトを的確に捉え、サービスの改善や経営課題の解決を推進することで、継続率の向上に寄与し、結果として自社の利益を最大化する一助となります。

カスタマーサクセスに関連した指標(KPI)

カスタマーサクセスに取り組む際は、あわせて成果を定量的に分析・評価できる仕組みも必要です。このとき評価の指標(KPI)となるのが、「LTV」「解約率/継続率」「NPS®」です。

LTV(ライフタイムバリュー)

LTVとは、顧客が自社商品・サービスを購入してから、取引を終了するまでに得られる利益の総額です。LTVの算出方法は数多くありますが、そのひとつに以下の計算式があります。

LTV=(顧客単価)×(粗利率)×(購買頻度)×(取引期間)-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

たとえば、ある顧客が月額10万円(粗利率65%)のサービスを3年間利用し、その顧客の獲得と関係維持に要したコストを40万円と仮定した場合、LTVは以下の通りです。

10万円(顧客単価)×0.65(粗利率)×12(購買頻度)×3(取引期間)-40万円(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)=194万円(LTV)

解約率 / 継続率

サブスクリプション型のビジネスモデルを展開する場合、解約率と継続率の改善が重要な経営課題です。解約率とは、サービスを解約したユーザーの割合をいい、以下の計算式で算出されます。

解約率=解約ユーザー数÷解約前のユーザー数×100

たとえば、100名の会員を有するサブスクリプションサービスにて、1か月間に5名が解約した場合の月間解約率は5%です。

継続率とは、既存顧客の維持率を示す指標で、以下の計算式で算出されます。

継続率=継続顧客数÷新規顧客数×100

たとえば、サービスの新規顧客数が100人増加し、1か月後に80人のユーザーが継続利用していた場合、1か月あたりの継続率は80%です。

NPS®

NPS®(Net Promoter Score:顧客推奨度)とは、顧客ロイヤルティを定量化する際の指標で、企業への親しみや商品・サービスへの愛着心、ブランドに対する信頼といった顧客の心理状態を意味します。

消費行動が「モノ消費」から「コト消費」へと変遷している現在、顧客や消費者から選ばれるためには、顧客ロイヤルティ(愛着心・忠誠心)の向上が欠かせません。NPS®は、「商品やサービスを親しい人に勧めたいと思うか?」をユーザーに問い、0~10点の11段階評価によって、商品・サービスの推奨度を具体的な数値に落とし込みます。

カスタマーサクセスで押さえたいポイント

カスタマーサクセスを実践する際に押さえておきたいのが、「データの収集」「アプローチの検討」の2点です。

データの収集

顧客の成功と利益の最大化を支援する際に重要課題となるのが、勘や経験といった主観的で曖昧な要素を排除し、客観的かつ明確なデータ分析にもとづいて戦略を策定することです。そのためには、以下のようなさまざまな情報を収集する必要があります。

  • 顧客のビジネスモデルや収益構造
  • 見込み客の潜在需要
  • 参入市場の将来性
  • 競合他社の動向

こうした多角的な情報を収集するには、顧客情報を統合的に管理する「CRM(Customer Relationship Management)」や、マーケティングを効率化する「MA(Marketing Automation)」といったソリューションの戦略的活用が不可欠です。

アプローチの検討

どのような戦略が企業の成功につながるのかは、顧客の事業形態や経営体制によって異なります。カスタマーサクセスを推進する施策に絶対的な正解はありません。施策を誤ると、サービスの解約につながる可能性もあります。顧客が潜在的に求めているニーズを的確に捉え、自社の商品・サービスがもたらす利益を論理的に伝える提案力が求められます。

また、すべての顧客に対する支援は現実的に不可能です。高いリターンが期待できるハイタッチ層の顧客を見極めるアプローチも必要です。

まとめ

カスタマーサクセスとは、顧客の成功体験と企業利益の最大化を目的とする戦略です。カスタマーサクセス向上のためのソリューションを導入する際は、KPIを設定し、押さえるべきポイントを理解して、施策を実施する必要があります。競合他社にはない顧客体験価値の創出を目指す企業様は、ぜひ下記の関連資料もご覧ください。

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