クラウドPBXでコールセンターを構築する メリットは?導入による業務改善や選定基準を解説

 2023.08.10  コンタクトセンターの森 編集部

クラウドPBXは、オンプレミス型のPBXよりも初期費用が抑えられ、オペレーター業務を効率化するさまざまな機能が使えます。近年では、多くの企業がクラウドPBXを使用したコールセンターの拠点構築を行っています。本記事では、クラウドPBXでコールセンターを構築する仕組みや活用によって生じるメリット、クラウドPBXを選ぶ際の基準を解説します。

クラウドPBXでコールセンターを構築する仕組み

クラウドPBXでは、電話環境をインターネット上に構築するため場所を問わず、設定もWebブラウザやアプリケーションから行うことができます。
従来の固定電話回線を利用した通話・通信ではないため、交換機本体をコールセンター内に設置したり、配線工事を行ったりする必要もありません。IP-PBXのようにサーバーの設置も不要なため、比較的短期間で運用を開始できます。

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クラウドPBXをコールセンターに導入することで実現する業務改善

クラウドPBXをコールセンターに導入すると、複数拠点のコールセンターをコストを抑えて運営できるほか、データを活用したお客様満足度の向上、稼働状況の把握による労働環境改善といった効果が期待できます。

複数拠点のコールセンターを管理

インターネット回線を用いて音声やデータ通信を利用できるのが、クラウドPBXのサービスです。サービスを提供しているベンダーと契約し、パソコンやスマートフォンに専用のアプリをインストールするだけで電話環境を構築できるため、新しいコールセンターの拠点を開設する時にも、交換機や固定電話回線を人数分用意する必要がありません。クラウドPBXを使ったコールセンターの拠点は、インターネットに接続できる環境であればどこにでも置くことができ、どこにいても問い合わせ電話を受けることができます。

拠点間では、インターネットを介して無料で通話が可能です。離れた場所にいるオペレーターとも内線扱いで通話ができるため、月々の通話料を削減できます。

さらに、内線を国内だけでなく海外へも転送できることから、海外に拠点を展開している企業や従業員の海外出張が多い企業は、国際通話のコストを節約できます。また、サテライトオフィスや従業員の自宅でテレワーク業務を導入する場合でも、通信機器などの工事不要で簡単に拠点の設置、管理を行えます。

自宅でテレワークをしていても、パソコンやスマホを用いて出社している従業員と変わらない環境で電話応対ができるので、コールセンター業務でも従来では難しかった多様な働き方が実現しやすくなります。

各拠点にそれぞれ異なる電話番号を割り当てたり、複数の拠点に同じ電話番号を割り当てたりできるため、コールセンター業務を行う地域が限定されないのもメリットです。別の拠点の番号で発着信が行えることから、顧客からの電話を取り逃がす機会が少なくなり、電話がつながらないことによる顧客満足度の低下リスクを低減できます。

データ活用によるお客様満足度の向上

コールセンター業務でオペレーターが対応した内容を記録・共有できるのもクラウドPBXの特長です。熟練のオペレーターによる適切な対応をデータ化して共有できるため、新入社員研修などに活用し、教育に役立てることが可能です。

コールセンターに寄せられた商品に関する相談や質問、クレームなどのデータは、社内に蓄積されて重要な情報資産になります。PBXにコールセンターシステムやCRMシステムなど、ほかのシステムを連携させることで、顧客情報や過去の問い合わせ内容といったデータの参照も可能になり、顧客ニーズの正確な把握に役立ちます。コールセンターで収集した情報資産は、リアルなお客様の声として、顧客満足向上に向けた今後のマーケティング施策の立案、営業戦略策定などにつなげることが可能です。
クラウドPBXにはオペレーターの業務をサポートするさまざまな便利機能も備わっています。

例えば、CTIという機能でCRMとクラウドPBXを連携させると、発信番号から顧客情報を自動で瞬時に表示できます。顧客情報だけでなく、これまでの対応履歴や以前の担当者なども確認できるため、一から顧客の話を聞き出す必要がなく、対応時間の短縮が見込めます。ほかの担当者に電話を引き継ぐ際も、必要な情報を漏れなくスムーズに伝えられるのもメリットです。

稼働状況をリアルタイムで把握し労働環境を改善

一部のPBXサービスでは、コールセンター内の稼働状況をリアルタイムで把握できる機能を搭載しています。この機能を活用すると、通話中もしくは待機中のオペレーターが何人いるか、通話状況をリアルタイムで確認できます。

オペレーターの稼働状況が可視化できない状態では、効率的なマネジメントは難しく、労働環境の最適化ができません。稼働状況が把握できる機能を利用すると、受付可能、通話中、保留中、後作業、離席中など、各オペレーターのステータスが画面を見て一目でわかります。
PBXサービスによっては、テレワーク中や休暇、ヘルプサインなど、自社のコールセンターで必要なステータスを追加できるものもあります。これらのステータスを確認することで各オペレーターの稼働状況を正確に可視化できるため、長時間対応の発生状況など、コールセンター内の状況を迅速に把握することが可能です。全体的な稼働状況の把握は、労働負担の偏りをなくす適切なマネジメントを行うためにも役立ち、労働環境の改善につながります。また、オフィス内の従業員だけでなくテレワーク中の従業員まで、さまざまな働き方のマネジメントが可能になります。

コールセンターでクラウドPBXを活用するメリット

コールセンターで従来型のPBXではなくクラウドPBXを活用することには、多くのメリットがあります。その中でも、特に注目できる4点を紹介します。

コールセンター構築・運用・通話コストが安い

クラウドPBXでコールセンターを構築した場合、各種コストが安く抑えられるという特徴があります。
まず、導入時の初期費用が抑えられます。従来型のPBXでコールセンターを構築する際には、交換機本体だけでなく、電話機の購入やリース、設置および配線工事、システム開発など、多額の費用を要しました。それに比べて、クラウドPBXは交換機を社内で保有する必要がなく工事が不要です。基本的にサーバー上で初期設定するだけで運用の準備は整うため、従来型のPBXでコールセンターを構築するよりも安価に導入することが可能です。
また、運用コストも抑えられます。従来はコールセンター内に交換機を設置するスペースを確保し、機器の維持のために電気代もかかりました。しかし、クラウド化によってこれらは不要になります。月々の利用料はかかるものの、運用やメンテナンスをベンダーに任せるため、自社の負担軽減に期待できます。
さらに、通話コストも下がります。クラウドPBXであれば、遠隔地の拠点同士であっても社内通話は内線扱いになります。外部への通話料もインターネット回線を利用した通話になるため、非常に安いのが特徴です。

テレワークに対応できる

クラウドPBXは、テレワークにも適しています。インターネット環境さえ整えば、テレワークをしている従業員もコールセンターへ出社している従業員と同様の電話環境で業務を行えるためです。
固定電話機やビジネスフォンだけではなく、専用アプリをインストールするだけでスマートフォンやパソコンを利用できます。在宅勤務、出張や営業など出先で電話応対する際も、コールセンターやオフィスに出社しているのと変わりません。代表電話番号での発信・着信や、担当者への内線転送も可能です。電話の相手からも、従業員が家や出先から電話しているとは気づかれずに済み、スムーズなやり取りに役立ちます。

トラブルを回避できる

クラウドPBXでは多くの機能が利用でき、トラブル回避に役立てられます。
音声録音機能により問い合わせ内容が自動的に記録されるため、顧客や取引先との認識の相違が起きた場合に通話内容を聞いて確かめることが可能です。大切な通話内容を忘れてしまった場合に、聞き直すこともできます。
コールセンターではクレーム対応をすることもありますが、客観的な記録が残るため、悪質なクレームや業務妨害を抑制でき、必要な対処を取るために利用できます。
通話内容を社内で共有してコールセンターの電話応対品質の向上を目指すことも、トラブル発生を防ぐことにつながります。

対応できる件数を増やせる

柔軟性の高さもクラウドPBXの大きなメリットです。事業が拡大して拠点や従業員が増えたときや、イベントなどで短期間だけコールセンター業務が増えたときにも、即座に導入したり拡張したりできます。そのため、はじめて導入する際は、まず必要最低限の数を契約して様子を見てから、後で規模を広げていくのがおすすめです。
また、自動音声案内機能により効率を高めることで、対応件数を増やせます。自動音声案内機能とは、顧客がコールセンターに電話をかけた際、まず録音された音声を聞いて用件を選択してもらい、担当者に振り分ける機能です。自動音声案内が流れる分、顧客の待ち時間を短縮できますし、担当者に直接つながるため、無駄な時間を極力減らせるようになります。

BCP対策を実現できる

BCP(事業継続計画)は「Business Continuity Plan」の略で、大規模なトラブルが発生した際の損害を抑え、速やかに事業を再開できるようにするための計画のことです。システム停止、災害、テロ、感染症拡大などの緊急事態が発生した場合に、重要度の高い業務を継続もしくは早期に再開して事業へのダメージを抑えます。
万が一企業の本社で災害などが発生し、オフィスの機能が利用できなくなった場合にも、遠隔地で本社の機能をカバーできるように備えることもBCP対策の一環です。オフィスに専用の装置を設置し、電話回線を使用して行うPBXでは、オフィスでトラブルが発生した場合にPBXの機能が使用できなくなります。

一方クラウドPBXの場合、インターネットを介したクラウド上に顧客情報などのデータが保存されています。本社オフィスではPBXが使用できなくても、インターネットに接続できるほかの場所からサービスを使用できるため、停電や災害などのトラブル発生時にも業務の継続が可能です。
本社から遠方にある支社、営業所、テレワークで業務を行っている従業員が本社でできなくなった業務を行えることから、緊急時にも損害の発生を可能な限り抑えられます。従業員のスマホを使用してテレワークでコールセンター業務も行える特長などから、クラウドPBXはBCP対策に適したサービスです。

電話番号や顧客情報などのデータも、クラウドPBXの場合にはクラウド上に保存されていて、多くの場合、自動でバックアップが取られています。もしデータが消失したとしても、バックアップを使用してデータの迅速な復旧が可能です。
本社のサーバーにデータを保存しているケースでは、トラブル発生時にデータが消失してしまうと自社でデータの復旧作業をしなければなりません。この場合には、災害やシステム停止などの問題によって復旧ができないケースや事業の再開までに時間がかかるケースがあり、BCP対策は難しくなります。

外部システムとの連携が簡単にできる

インターネット回線を使用するクラウドPBXには、外部システムとの連携がしやすいメリットもあります。コールセンターでよく用いられるのが、電話やFAXをパソコンと連携させるCTIシステムです。
CTIを活用すると、PBXとCRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援ツール)などを連携できます。各システムの情報を用いてコールセンター業務の効率化や業務品質の向上が見込めます。CRMと連携した場合には、着信時にかかってきた電話番号に該当する顧客情報をパソコンの画面に表示することが可能です。

顧客の氏名、住所、メールアドレス、購入履歴など、CRMに登録されている情報を迅速に確認して、適切な対応につなげられます。SFAとの連携でも、CRMと同様にSFAで管理されている顧客情報の確認が可能です。
IVRとの連携も、多くの企業で取り入れられています。 IVR(自動音声応答機能)とは、着信の際にあらかじめ設定した自動音声を流し、問い合わせ内容によって適切な担当者へつなぐ機能です。企業の窓口に電話をかけた際に電話口で流れる「商品に関する質問は1を、商品の修理に関する相談は2を、料金に関する問い合わせは3を押してください」といったアナウンスはIVRによるものです。

社員や取引先、顧客などの連絡先をクラウド上に保存できるWeb電話帳システムとの連携も便利です。サテライトオフィスやリモートワーク中の自宅などオフィスの外で電話をかける際にもすぐに電話帳を開けるメリットがあります。

連携によって利用できる機能には、通話録音機能もあります。ツールとの連携によって、通話内容を録音で残し、対応した内容を後から確認することが可能です。電話応対後にクレームが発生した場合などのトラブル対処に活用されます。顧客とオペレーターの通話を、第三者がリアルタイムで聞くことが可能なモニタリング機能も、ツールの連携で活用できる機能です。
連携できるツールやサービスは、クラウドベンダーごとに異なるため、現在使用しているシステム、使用を検討しているシステムとの連携が可能かどうかは、事前の確認が必要です。

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クラウドPBXを選ぶ際の基準

クラウドPBXを導入することに決めても、各社でさまざまなサービスが提供されているため、選ぶのも簡単ではありません。以下では、選ぶ際にぜひおさえておきたい基準を取り上げます。

CTIシステムの機能が利用できるか

CTIシステムによりコンピューターと電話を連携させると、着信時に発信者の名前や社名をポップアップ表示させられます。
CTIとCRM(顧客管理システム)を連携させることにより、今までの取引履歴や問い合わせ内容などの顧客データを画面に表示可能です。コンタクトセンターの場合は、メールやチャットで交わしたやり取りなども見ることができます。そういった情報を見ながら顧客と会話することで、何度も同じことを尋ねてしまうことを避けて、無駄なくスムーズに応対ができます。
このようにCTI機能は、業務効率化になると共に、顧客満足度の向上にも役立ちます。導入の際は、CRMなど自社の既存のシステムとの連携に問題はないか、ぜひ確認しておいてください。

自社の規模にあっているか

初期費用と月額料金など料金体系を比較して、自社の規模に合ったサービスを選択しましょう。クラウドPBXは、数百人の大規模から数人の小規模までさまざまな規模に対応できますが、提供する企業によって料金体系は異なるため、自社にとって有利な条件かを調べる必要があります。
また、現状だけではなく、今後の規模拡大やテレワークの増加などの変化に対応できるものが望ましいです。できれば、自社のコールセンターと似た規模での導入実績があるサービスを選ぶのがおすすめです。

通話品質・音質は十分か

コールセンターの役割を考えるとき、通話品質や音質の良さは外せない条件です。低コストにひかれて通話品質の悪いサービスを選んでしまうと、顧客満足度が低下して業務に悪影響が及びます。特にクレーム対応などでは、よく聞き取れずに何度も聞き返すと顧客の不満を増大させ、注意が必要です。
本格的に導入する前に、自社のコールセンターやリモートワークのWi-Fi環境で、時間帯などにかかわりなく安定した通話品質・音質が確保できるかを必ず確かめましょう。事前に調査しても実際に導入してみないと分からない面もあるため、無料トライアルを利用するか、スモールスタートで導入するのが無難です。

コミュニケーションツールとの連携

クラウドPBXは、さまざまなツールとの連携で業務効率を高められます。自社で使用している、または使用予定のコミュニケーションツールと連携できるかも確認しましょう。例えば、社内・社外の電話番号を管理できるWeb電話帳や、簡単にWeb会議ができるグループウェアなどと連携できると便利です。
単に連携が可能であるかだけではなく、連携が容易であるかも調べておくと導入がよりスムーズに進むようになります。

クラウドPBXとは? 導入メリットとデメリット、選び方を解説

コールセンターやお客様サポートの窓口にクラウドPBXの導入を検討している方に向けて、クラウドPBXとは何かをはじめ、従来のPBXとの違いや導入するメリットなどについて解説しています。

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まとめ

クラウドPBXとは、従来コールセンター内に設置していたPBX(電話交換機)をクラウド化したサービスです。電話環境をインターネット上に構築するためコストを抑えられ、テレワークにも対応しやすいといったメリットがあります。
導入する際は、CTIシステムが利用できるもの、通話品質が安定しているもの、自社の規模に合ったものを選ぶことで、業務効率や顧客満足度の向上に役立てられるでしょう。

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