コールセンターの仕事は難しすぎる?
離職率を下げるための対策とは
コンタクトセンターの森 編集部
RELATED POST関連記事
RECENT POST「ノウハウ」の最新記事
POPULAR POST人気記事ランキング
TOPIC トピック一覧
この記事が気に入ったら
いいねしよう!
目次
コンタクトセンターの森 編集部
コールセンターのオペレーターは離職率が高いことで知られており、その背景には、業務量の多さや暗記負担だけでなく、感情労働や認知的過負荷といった構造的な要因が存在します。本記事では、まずコールセンターの仕事内容を整理した上で、業務が難しいと感じられる理由を明らかにし、さらに企業が離職率を改善するために取り組むべき施策について解説します。

コールセンターのオペレーター業務は、商材ごとの専門知識やマニュアルを把握しながら対応する必要があり、多層的で複雑な業務構造を持っています。大きく分けると、かかってきた電話に応対する「インバウンド業務」と、自分から電話をかける「アウトバウンド業務」の2種類があります。
インバウンド業務には、一般的な受付対応からカスタマーサポート、テクニカルサポートまで幅広い種類があり、問い合わせ内容に応じて問題解決力や傾聴力が求められます。
一方、アウトバウンド業務にはテレマーケティングだけでなく、督促業務や市場調査なども含まれ、営業的スキルや交渉力が必要となります。
いずれの業務でも電話対応が中心ですが、近年はチャットやメールなどのノンボイス対応も増えています。また、対応が終わった後には、CRMへの履歴入力や後処理(ACW)といった周辺業務も発生し、通話以外の事務作業も重要な役割を占めています。
コールセンターの仕事は「電話対応だけの簡単な業務」と誤解されることがありますが、実際には精神的・認知的に高度な負荷がかかる構造的に難しい仕事です。多くの人が辞めてしまう背景には、感情労働としての負荷や、膨大な知識を扱う認知的過負荷が大きく影響しています。
まず、クレーム対応では、理不尽な言動や強い怒りを受け止めながら、常に冷静で丁寧な対応を求められるため、感情の不協和が生じやすく精神的ストレスが大きくなります。アウトバウンド業務でも拒絶が前提となるため、徒労感を抱きやすく、精神的負荷は避けられません。
また、オペレーターは膨大なマニュアルや頻繁に更新される商材知識を把握する必要があり、問い合わせ内容を聞き取りながら適切な情報を検索し、同時に対応履歴を入力するという複雑なマルチタスクが求められます。これはワーキングメモリを大きく消耗し、認知的過負荷を引き起こす要因となっています。
さらに、業務には繁閑差があり、入電が集中する時期には処理速度と品質を同時に求められるため、負荷が一部のオペレーターに偏ることもあります。このように、精神的負荷と認知的負荷が重なることで、コールセンターの仕事は難しいと感じられやすく、離職率が高い要因となっています。
オペレーターの高い離職率は、企業の生産性・品質・コスト構造に深刻な影響を及ぼします。離職が続くと熟練オペレーターが減少し、一人当たりの処理件数や対応品質が低下します。その結果、AHT(平均処理時間)や応答率などの主要指標が悪化し、顧客満足度の低下にもつながります。
さらに、採用・研修には1名あたり30万〜50万円規模のコストがかかるため、早期離職が続くと投資回収ができず、採用・教育コストが累積していきます。新人が増えるほどベテランへの負荷が集中しやすく、負担増によるバーンアウトが発生し、貴重な熟練人材まで辞めてしまう「連鎖退職(リテンション・クライシス)」を招く恐れもあります。
このように、離職率の高まりは品質低下とコスト増加を同時に引き起こし、コールセンター運営全体の持続性を脅かす重大な問題となります。
コールセンターでは、感情労働の負荷や認知的過負荷、監視環境などの構造的な困難によって離職率が高まりやすいという課題があります。離職を防ぐためには、企業側が業務環境を整備し、制度面からオペレーターを支援する取り組みが欠かせません。ここからは、離職率を下げるために企業が実施すべき具体的な対策について解説します。
離職率を改善するために企業が優先的に検討すべき施策のひとつが、AI機能を備えたコールセンターシステムの導入です。オペレーター業務が難しいと感じられる背景には、通話対応・検索・入力作業を同時並行で行うという複雑なマルチタスクがあり、これが認知的負荷を大きく高めています。
通話内容の自動書き起こしや、Agent Assistによる回答候補の提示、ACW(後処理)の自動化が導入されれば、オペレーターは顧客対応に集中しやすくなり、入力作業やマニュアル検索に要する負担を大幅に軽減できます。
さらに、ボイスボット(IVR)やチャットボット、FAQ整備によって顧客が自己解決できる手段を増やすと、オペレーターに入ってくる問い合わせ数が減少し、負荷分散が可能になります。複数チャネルの整備は顧客の利便性向上にもつながり、結果として顧客満足度の向上にも寄与します。
オペレーターは、クレーム対応などの感情労働によって強い精神的負荷を受けやすく、カスハラや感情の不協和がストレスの蓄積につながります。また、一日中着座して業務を行うことで腰痛やVDT症候群、ヘッドセットによる耳の負担など、身体面でのリスクも生じます。そのため、管理職を中心としたメンタルヘルスケア体制や心理的安全性を確保するフォロー施策、さらに休憩室や業務フロアなどの環境整備が重要です。
加えて、新人オペレーターは多量の商材知識やスクリプト構造を理解し、適切な電話対応スキルを身につける必要があります。ロープレを中心とした実践的な研修や、スクリプトをチャンク化して覚える方法、保留を適切に活用する指導など、習得しやすい研修内容・方法・期間を整備することが、早期離職の防止につながります。
離職率の高さには、人事評価が処理件数に偏りがちで、業務の多様性を反映できていないことも影響しています。処理速度だけを重視した評価制度では、クレームを丁寧に対応して顧客満足度を高めているオペレーターや、難易度の高い案件を多く担当するオペレーターが正当に評価されず、不公平感を生む要因となります。
そのため、処理件数だけではなく、サービス品質、顧客からの感謝の声(CS)、勤怠の安定性、チームへのナレッジ共有など、多角的な視点で評価する仕組みが必要です。さらに、通話録音や自動書き起こしなどのシステムログを活用することで、より客観的で納得感のある評価が可能になります。こうした制度設計は、オペレーターのモチベーション向上と離職防止に大きく寄与します。
オペレーターの離職を防ぐためには、柔軟な働き方に対応できる環境づくりが重要です。近年は在宅コールセンターが普及しつつあり、テレワークは家事や育児、介護と両立したい人にとって大きなメリットがあります。また、通勤負担や職場での人間関係ストレスが軽減される点も魅力です。
ただし、在宅業務を実現するためには、PCセットアップやVPN接続などのITリテラシー、外部音が入らない個室環境、有線LAN接続などのセキュリティ要件を満たす必要があります。これらに対応したコールセンターシステムを導入し、テレワーク環境を整備することは、柔軟な働き方を支援し離職率の低下にもつながる有効な施策です。
コールセンターで離職が多い背景には、クレーム対応に伴う感情労働の負荷や、膨大な知識を扱いながらマルチタスクをこなすことによる認知的過負荷といった、構造的な業務の難しさがあります。
これらの課題を解決するには、AI支援や自動化機能を備えたコールセンターシステムの導入、研修制度やフォロー体制の強化、サービス品質やナレッジ共有を含む多角的な人事評価制度の整備、そして在宅ワークなど柔軟な働き方の導入が効果的です。
本記事の内容を参考に、オペレーターの負担軽減と離職率改善に向けた環境づくりを進めていくことが重要です。

この記事が気に入ったら
いいねしよう!