PBXの停電対策ガイド
バッテリー・UPSの選び方とクラウドPBXのBCP対策

 

この記事でわかること
  • 回線別の停電挙動
  • 情シス向けの物理対策
  • クラウドPBXによるBCP対策

自然災害や落雷、ビル設備の定期点検による停電は、予告なく企業の通信インフラを止めます。PBX(Private Branch eXchange:構内電話交換機)が停止すると、顧客からの入電が取れなくなります。ビジネス機会の損失だけでなく、「繋がらない企業」という信用損失にも直結します。

本記事は2つの立場の読者を対象としています。大企業のITインフラ責任者(情シス)には、既存PBXを停電から守る物理的な対策を技術的な観点から解説します。コールセンター管理者(CC長)には、オフィスが長期間使えなくなる事態を想定したBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の具体的な手段として、クラウドPBXの活用法を解説します。

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停電時にPBX・電話システムはどうなる?(回線・システム別の挙動)

停電時の挙動は、導入している回線種別とPBXのタイプによって大きく異なります。まず自社の構成を確認したうえで、必要な対策を選択してください。

メタル回線(アナログ回線・INS64回線)の場合

メタル回線は、電話回線自体から電力が供給されるため、停電時の耐性が比較的高い方式です。主装置に内蔵バッテリーがあれば、停電後も10分程度は稼働を維持できます。オプションの外付けバッテリーを追加すれば、最大3時間程度の維持が可能な場合があります。ただし、FAXなどの外部機器には回線からの給電が届かないため、別途バッテリーの手当てが必要な点に注意してください。

INS1500回線(光ファイバーデジタル回線)の場合

INS1500回線では、回線を終端するDSU(Digital Service Unit:回線終端装置)への電力供給が必須です。停電でDSUが停止すると外線が即座に使えなくなるため、PBXの直流端子からDSUに給電するなどの対策が必要となります。ただし、PBXから直接給電する構成ではバッテリーの消耗が早まります。DSUへの給電を検討する場合は、消費電力を踏まえたバッテリー容量の選定を行ってください。

ひかり電話・IP回線の場合

ひかり電話などのIP回線は、停電に対して最も脆弱な構成です。PBX本体にバッテリーを搭載していても、インターネット接続に使う「ONU(Optical Network Unit:光回線終端装置)」「VoIPゲートウェイ」「ルーター」への給電が途絶えた時点で、外線・内線ともに通話ができなくなります。これら複数の周辺機器をまとめて保護するには、後述するUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)からの給電が不可欠です。

クラウドPBXの場合

クラウドPBXでは、PBXサーバー自体がベンダーのデータセンターで稼働するため、オフィスが停電してもシステムそのものは動き続けます。オフィス内のIP電話機やWi-Fiルーターは停止しますが、スマートフォンの内線化アプリを導入していれば、携帯キャリアの4G/5G回線を使って通常通り発着信が可能です。停電耐性という観点では、クラウドPBXが最も有利な構成といえます。


クラウドPBX選定の手引き
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【情報システム/IT担当向け】オンプレミス・IP-PBXの物理的な停電対策

既存のPBX設備を停電や落雷から守り、稼働を維持するための対策を3つ解説します。UPS選定・バッテリー管理・雷サージ対策の3つを組み合わせることで、物理障害への備えを体系的に整えられます。

UPS(無停電電源装置)の導入と選び方

ひかり電話環境やIP-PBXにおいて、UPSの導入は停電対策の基本です。UPSは停電を検知した瞬間(0.008〜0.010秒程度)にバッテリーからの給電へ切り替え、機器への電力供給を維持します。選定にあたっては、以下の2点を必ず確認してください。

給電方式はラインインタラクティブ方式を選ぶ

電圧安定機能を備えた「ラインインタラクティブ方式」を推奨します。停電だけでなく瞬時の電圧変動も補正するため、PBXをより安定した電力環境で稼働させられます。

出力波形は必ず「正弦波(純正弦波)」を選ぶ

PBXやルーターなどには、PFC(Power Factor Correction:力率改善)回路を搭載した電源が多く使われています。この種の機器に「矩形波(擬似正弦波)」出力のUPSを接続すると、誤動作や機器故障につながる場合があります。必ず「正弦波」出力のUPSを選択してください。

バッテリーの定期交換(寿命と液漏れリスク)

PBXの内蔵・外付けバッテリーの期待寿命は、一般的に4〜6年程度です(※要確認)。寿命を超えて放置すると蓄電能力が低下するだけでなく、内部の希硫酸が漏れ出すリスクがあります。希硫酸の液漏れは皮膚への化学熱傷や機器のショートを引き起こし、最悪の場合は発煙・引火(火災)に至ります。年次点検のタイミングでバッテリーの状態を確認し、計画的に交換する運用ルールを設けてください。 

雷サージ対策(雷防護アダプター)の併用

落雷時は停電だけでなく、電話回線や電源ケーブルを通じて異常な過電流・過電圧(雷サージ)がPBX基盤に流れ込み、機器を瞬時に損傷させます。対策として「SPD(Surge Protective Device:サージ防護デバイス)」と「サンダーカット」などの雷防護アダプターを併用します。SPDが雷サージをアースへ逃がし、サンダーカットが通信線・電源線の両方からの侵入を遮断することで、機器を二重に保護できます。

ビル点検などで停電が予定されている場合の正しい手順

計画停電の際に突然ブレーカーを落とすと、ファイルシステムの破損やデータの消失につながります。以下の手順を社内の担当者と事前に共有し、手順どおりに対応できる体制を整えておいてください。

停電前の「電源を切る順番」

電源断による障害を防ぐため、末端の機器から順に停止させます。

  1. PC等の端末機器
  2. ハブ・無線ルーター等の周辺機器
  3. PBX主装置
  4. ルーター
  5. 終端装置(ONU)

落雷やサージ電流への追加対策として、電源を切った後はコンセントからプラグを抜いておくことを推奨します。

復電後の「電源を入れる順番」

上流のネットワーク機器から順番に起動させることで、PBXが回線を正常に認識できる状態を確保します。

  1. 終端装置(ONU)
  2. ルーター
  3. PBX主装置
  4. ハブ・無線ルーター等の周辺機器
  5. PC等の端末機器

復電後の注意点

復旧後に電話機の日時がずれる、発着信ができないといった不具合が出た場合は、PBX内部のメモリバックアップ電池の寿命による局データの初期化が疑われます。速やかにベンダーへ連絡し、電池交換と再設定を依頼してください。

【ビジネス部門/コンタクトセンター担当向け】クラウドPBXを活用した究極のBCP対策

UPSやバッテリーによる物理対策は、数時間規模の停電には有効です。しかし、大規模災害でオフィス自体が長期間使えなくなる事態には対応できません。BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の観点から、スマートフォン内線化・自動転送・データのクラウド保全という3つの手段を持つクラウドPBXへの移行が有効です。

社用スマホ・個人スマホの内線化(BYOD)で場所を問わず対応

クラウドPBXでは、スマートフォンに専用アプリをインストールするだけで、4G/5G回線を使って会社の代表番号で発着信できます。オフィスが被災・停電で出社不能となっても、オペレーターは自宅やサテライトオフィスから電話業務を即座に継続できます。感染症によるオフィス閉鎖時も同様に機能するため、テレワーク体制への移行に伴う通信環境の再整備コストをゼロに抑えられます。

「お客様視点」での挙動の違い(機会損失とクレームを防ぐ)

停電時に顧客からの電話が「どう聞こえるか」は、PBXの種類によって決定的に異なります。オンプレミスPBXの場合、停電で主装置が落ちると発信者には「プープー」という話中音が流れるだけです。顧客には「電話が通じない企業」と映り、機会損失と信用失墜に直結します。

クラウドPBXの場合は、サーバーが稼働し続けるため停電時でも対応を維持できます。「自動着信転送機能」を使って別拠点や担当者の携帯へ即時転送できます。対応できない場合は「ボイスメール(留守番電話)」で音声を預かり、IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答)で災害用ガイダンスを流すことも可能です。顧客との接点を途切れさせることなく維持できます。

データのクラウド保全による復旧の迅速化

クラウドPBXでは、電話帳データ・通話録音・システム設定のすべてがベンダーのクラウドサーバー上に保管されます。オフィスが物理的に被災しても、移転先でインターネット環境を整えれば即座に電話業務を再開できます。機器の復旧や設定の再投入に時間がかかるオンプレミスPBXと比べ、事業再開までのリードタイムを大幅に短縮できます。

まとめ

停電対策の第一歩は、自社の回線種別(メタル・INS1500・ひかり電話)とバッテリー・UPSの状況を確認することです。ひかり電話環境では、ONU・ルーターを含む周辺機器全体をUPSで保護する設計が必要です。
計画停電時は、正しい順番で電源を入切し、雷サージ対策を施すことで機器損傷のリスクを下げられます。復電後に不具合が出た場合は、バックアップ電池の交換をベンダーに依頼してください。
「数時間の停電を凌ぐ」物理対策に加え、オフィス全体が長期間使えなくなる事態を想定したBCPの観点から、スマートフォン内線化・自動転送・データのクラウド保全が可能なクラウドPBXへの移行を検討することが、企業の通信インフラにおけるリスクマネジメントの核心となります。

 

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