コンタクトセンター業務を変える!
ソーシャルリスニングで顧客の本音を可視化

 

コンタクトセンターに関わる方にとって、日々寄せられる問い合わせの背後にある「ユーザーの本音」や「迷いの構造」をどれだけ深く理解できるかは、応対品質や業務効率を左右する重要な要素です。とはいえ、個別の声に頼るだけでは、全体像や変化の兆しを捉えるのは困難です。
本稿では、SNS上に投稿されるユーザーの声を定量的に分析する「ソーシャルリスニング」の手法に注目し、コンタクトセンター業務におけるその活用可能性を探ります。新学期の習い事をテーマに、X(旧Twitter)上の投稿をBrandwatchで分析し、問い合わせの背景にあるユーザーの不安や関心の変化を可視化。トークスクリプトやFAQ整備、応対設計に活かせる視点をお伝えします。
「変化が少ない」と思われがちな領域ほど、ユーザーの声に潜む“微差”を先回りして捉えることが、応対の質と顧客満足度を高める鍵になります。コンタクトセンターに関わる方にこそ知ってほしい、ソーシャルリスニングの実践的な価値をご紹介します。
新学期は、習い事を始める・見直す家庭が増える季節です。しかし市場は定番が強く、一見すると変化が少ないようにも見えます。
今回は、ソーシャルリスニングツールBrandwatchを用い、日本のX投稿から 通年の種目別ランキング と 送迎・友達・成長・費用 といった保護者課題を定量的に整理。
トレンドだけでなく、普遍的ビジネスでも小さな変化を見逃さない視点を探っていきます。

コンタクトセンター業務を変える!ソーシャルリスニングで顧客の本音を可視化

デジタルチャネルCX調査 2024ー2025年版

ソーシャルリスニングとは?

ソーシャルリスニングとは、SNSやオンライン上に投稿されるユーザーの声を収集し、会話の全体像を把握するための分析手法です。口コミを読む、投稿を眺める、といったモニタリングとは異なり、対象期間・対象SNSアカウント・抽出条件を定めたうえで、投稿を体系的に整理し、「どんな話題が、どのように語られているか」を把握できる形にします。
SNSは情報量が膨大で、個別投稿の閲覧だけでは、全体の輪郭を捉えにくいメディアです。また、強い意見や目立つ投稿は印象に残りやすく、担当者の記憶に残る話題=重要な話題、という誤認も起こりがちです。ソーシャルリスニングでは、投稿をテーマやカテゴリに分け、会話の構造(主題・関連論点・語られ方)として整理することで、印象ではなく“全体像”として理解できる状態をつくります。

この手法が向いているのは、トレンド把握だけではありません。むしろ、商品・サービスの検討、利用中のつまずき、問い合わせの背景にある不安など、日常的に繰り返される会話を継続観測することで、「いつも起きていること」と「最近増え始めたこと」を切り分けられるようになります。ソーシャルリスニングの本質は、ユーザーの声を“読める状態”に整え、次章以降で紹介する意思決定(改善・施策・運用)につなぐための土台を作る点にあります。

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ソーシャルリスニングのメリット

ソーシャルリスニングのメリットは、「現場の経験や感覚に依存していた判断を、ユーザーの声で検証し、準備を前倒しできる」ことです。SNS上には、関心・不満・迷い・期待が日々投稿されていますが、目視で追うだけでは情報が多すぎて、判断材料として整理されません。そこで、収集条件と分類ルールを固定し、同じ物差しで継続観測することで、判断の再現性が上がり、社内で合意形成もしやすくなります。
企業で効いてくるポイントは大きく3つあります。第一に、マーケティング/広報では、ユーザーが「何を知りたがっているか」「何で迷いやすいか」を把握し、コンテンツのテーマ設計や公開タイミングを合理化できます。第二に、商品・サービス運用では、利用のつまずきや誤解が起きやすい点を把握し、導線・説明・ルール(例:料金・手続き・例外対応)を改善できます。第三に、サポート/コンタクトセンターでは、よくある問い合わせの背景論点を把握し、トークスクリプトやFAQに反映することで、応対品質と処理効率を同時に上げられます。
特に、変化が小さく見える“レガシー領域”ほど、競争力の差は派手な新施策ではなく、説明のわかりやすさ、問い合わせの減らし方、安心材料の提示といった運用の微差に現れます。ソーシャルリスニングは、その微差を見つけ、改善の優先順位をつけ、繁忙期の前に準備を整えるための仕組みとして活用できます。

ユーザー関心の変化を視覚的に捉える

本章では、新学期の習い事に焦点を当て、企業がどのような対策(情報発信・導線設計・サポート整備等)を打てるのかを明らかにするために、まず「話題量が増えるタイミング=需要の波」を確認します。

分析結果:通年の中でも春に話題量が山を作りやすい

結論として、習い事は突発的なトレンドというより、進級・クラス替え・生活リズムの再設計といった生活イベントに紐づくため、春(3〜5月)に話題量が山を作りやすい傾向が見られます。ここで重要なのは、山があること自体ではなく、(1)山の位置が毎年似ているか、(2)立ち上がりはいつか、(3)山がどのくらいの期間続くかです。これが読めると、企業側は「いつ、何を、どの順番で出すか」を設計でき、準備の前倒しが可能になります。
具体的には、需要の波に合わせて打ち手を3つのフェーズに分けると整理しやすくなります。まず、山の手前(立ち上がり期)は比較検討が始まる局面のため、「選び方」「比較軸」「不安解消(費用・通いやすさ等)」のコンテンツが効きやすいタイミングです。次に山の最中(ピーク期)は検討が加速するため、体験申込・問い合わせ・資料請求などの“行動導線”を太くし、迷いが出るポイントを最短で解消できる設計(FAQ、料金内訳、振替可否など)が重要になります。最後に山の後半(定着期)は、始めた後のつまずきが表面化しやすいフェーズです。継続を支える情報(よくある困りごと、費用の考え方、手続き、休会・振替など)を充実させることで、満足度や継続意向に寄与しやすくなります。つまり、季節性の把握は“分析の入口”であり、マーケティングだけでなくサポート準備やFAQ整備のタイミングにも直結します。

2023年
ユーザー関心の変化を視覚的に捉える 01

2024年
ユーザー関心の変化を視覚的に捉える 02

2025
ユーザー関心の変化を視覚的に捉える 03

期間:2023/1/1-2023/12/31, 2024/1/1~2024/12/31, 2025/1/1~ 2025/12/31
対象:X
クエリ条件:お子様がいるアカウントを対象に習い事に関連する投稿にアクセス
使用ツール:Brandwatch Consumer Research
利用グラフ:時系列投稿推移

定番カテゴリの構造と“未分類”から見える兆しを捉える

分類手法(頻出→分別→細分化)と、種目別の分析結果

本章では、投稿を「眺める」だけだとトレンドに視点が偏りやすい点を踏まえ、今回採用したカテゴライズの考え方と、種目別(カテゴリ別)に見た結果を提示します。

カテゴライズ手法(今回の考え方)

SNS上では、プログラミングや体験型(ふるさと納税の体験チケット等)のような新しい話題が見えると、ついそれが“次の主流”のように感じられます。しかし、企業が施策を組む際にまず押さえるべきは、「実際に何が母数として多いのか」です。そこで、頻出のカテゴリ(または語)をランキングで確認し、上位から意味で分別・細分化していくことで、トレンドの“点”ではなく、全体構造の“面”として理解します。これにより、膨大な投稿を眺めているだけでは見つからない「微差の変化」を捉えやすくなります。

未分類(uncategorised)を見る重要性

カテゴライズを実務で運用する際、最も見落とされがちで、かつ最も価値が高いのが「未分類(uncategorised)」の投稿です。分析の標準的な流れは以下の通りです。

ステップ①:分析担当者が大きな分類を設計する

まず、塾/英語/ピアノ/体操/スイミング/サッカー/ダンス…といった「種目別」の分類箱を用意します。クエリや辞書ルールを設定し、各投稿をこれらの分類箱に振り分けます。

ステップ②:分類箱に含まれない投稿を見に行き、新たなテーマがあるかを探す

Brandwatchなどのソーシャルリスニングツールには「uncategorised(未分類)」機能があり、どの分類にも該当しなかった投稿を抽出できます。この未分類投稿の中に、既存の分類では拾えなかった新しいトレンドが潜んでいる可能性があります。

uncategorised機能の実務価値

新トレンドの早期発見:特定の時期・年で未分類投稿が急増した場合、それは「既存カテゴリでは説明できない新しいテーマ」が生まれている可能性を示します。
アラート設定が可能:未分類投稿の増加率にアラートを設定しておけば、トレンドの芽を見逃さずに施策に反映できます。
分類精度の向上:未分類を定期的にレビューすることで、辞書やルールを更新し、次回以降の分析精度を高められます。
未分類(uncategorised)投稿を定期的に確認することで、新トレンドを速やかに発見し、競合に先んじた施策設計が可能になります。

例えば、2024年〜2025年にかけて「プログラミング教室」や「ふるさと納税の体験チケット」といった新しい習い事形態が話題になりましたが、これらは当初、既存の「塾」「英語」「スポーツ」といった分類には該当しませんでした。未分類投稿を見に行くことで、こうした新カテゴリを早期に発見し、次の分析サイクルで正式に分類箱を追加できます

分析結果:種目別では“定番カテゴリ”が上位に並ぶ

種目別(カテゴリ)ベンチマークを見ると、2023年は塾が最大で、英語・ピアノ・体操・スイミングが続く構図が確認できます。
2025年も、塾・英語・ピアノ・体操・スイミングなどが上位に並んでおり、習い事市場が“定番が強い”構造であることが読み取れます。
ここで大切なのは、トレンド(プログラミング、ふるさと納税体験型チケットなどの習い事)は補足として拾いつつも、施策設計の主軸は「母数が大きいテーマ」に置く、という優先順位です。母数構造(塾が最大)は維持されつつも、前年差の上下で「定番内の微差」が見えます。たとえば、英語は2024年に-15%と下げ、2025年も-8%下がりました。しかしならがら、2024年はダンスが7%、2025年は前年と比較し音楽増えるなど、年によって伸びる種目が変わります。母数(上位)を押さえた上で、この微差を見て「今年はどこを入口にするか」「どこで価値訴求を厚くするか」を設計できるのが、種目別分析の実務価値です。

定番カテゴリの構造と“未分類”から見える兆しを捉える 04

期間:2023/1/1~2025/12/31
対象:X
クエリ条件:お子様がいるアカウントを対象に習い事に関連する投稿にアクセス
使用ツール:Brandwatch Consumer Research
利用グラフ:頻出単語(文字サイズは投稿量と比例します)

2023
カテゴライズ手法(今回の考え方)05

2024
カテゴライズ手法(今回の考え方)06

2025
カテゴライズ手法(今回の考え方)07

期間:2023/1/1-2023/12/31, 2024/1/1~2024/12/31, 2025/1/1~ 2025/12/31
対象:X
クエリ条件:お子様がいるアカウントを対象に習い事に関連する投稿にアクセス
使用ツール:Brandwatch Consumer Research
利用グラフ:時系列投稿推移

分析結果を活動に活かすためのTips

課題別の分析結果(送迎/友達/成長/費用)と、企業が取るべき打ち手

最後に、種目が定番で変わりにくい市場で“差が出やすい”領域として、課題別(送迎/友達/成長/費用)を確認します。種目の人気そのものよりも、継続の壁や意思決定の迷いどころを把握することで、企業の改善点が具体化します。

分析結果:送迎が最大級、費用は伸びが目立つ

2023年の課題カテゴリでは、送迎が最大で、友達、成長、費用が続きます。まず「通えるかどうか」が継続の現実的なボトルネックになりやすいことが示唆されます。
2025年は、送迎・友達が引き続き大きい一方で、費用が+12%、成長が+10%と伸び率が目立ちます。量だけでなく“伸び”を見ることで、ユーザーの不安や比較検討の焦点がどこに寄っているかを早めに察知できます。

通年の投稿量では 塾 が最大級で、新学期の関心が集まりやすい領域であることが示されました。一方で、保護者のつまずきは 送迎 が継続して最大であり、価値面では 友達 成長、判断面では費用が伸びています。新学期の情報発信は、人気種目ランキングの提示に加えて、送迎負担の軽減策・コミュニティ価値・価格の納得設計まで一気通貫で示すとよい方向になります。

企業Tips:コンタクトセンター/Webサイトに反映する

  • コンタクトセンター(トークスクリプト):上位課題を“先回り質問”として組み込みます。送迎なら曜日・振替・送迎負担、費用なら内訳・追加費・休会/返金を冒頭で提示できると、応対の手戻りが減ります。
  • Webサイト(FAQ/料金ページ/LP):費用が伸びる局面では、料金表だけでは不十分になりがちです。「月謝以外にかかるもの」「振替」「休会」「兄弟割」など、迷いどころを言語化して前面に置くことが有効です。
  • コンテンツ制作運用(新学期の波に合わせる):第3章の季節性(春の山)に合わせ、山の前に比較・不安解消コンテンツを揃え、山の最中は体験・問い合わせ導線を太くします。

分析結果を活動に活かすためのTips 08

分析結果を活動に活かすためのTips 09

分析結果を活動に活かすためのTips 10

期間:2023/1/1-2023/12/31, 2024/1/1~2024/12/31, 2025/1/1~ 2025/12/31
対象:X
クエリ条件:お子様がいるアカウントを対象に習い事に関連する投稿にアクセス
使用ツール:Brandwatch Consumer Research
利用グラフ:ベンチマーク(対象期間と以前の期間との比較)

まとめ

ソーシャルリスニングは、流行を追うためだけの手法ではありません。むしろ、変化が小さく見える市場ほど、競争力は「顧客の小さな変化を先に掴み、先回りして整備できるか」で決まります。
本稿では、年次推移で季節性(春に山)を押さえ、種目別で母数と微差を確認し、課題別で継続の壁(送迎・費用など)を特定する流れを示しました。膨大な投稿を眺めているだけでは、最近目につくトレンドに視点が偏りがちですが、頻出→分類→細分化という枠組みで整理すると、意思決定に使える示唆が残ります。
そして、その示唆はキャンペーンの企画だけでなく、コンタクトセンターのトークスクリプトやWebサイトのFAQ整備など、既存業務の改善に直結します。レガシー領域の企業ほど、こうした“微差の検知と準備の前倒し”が機会損失を減らし、繁忙期の成果を底上げします。まずは継続観測できる形で、季節性・種目・課題の3つの視点を毎年同じ条件で追うことから始めるのが、ソーシャルリスニング分析として最も失敗しにくい一歩です。

執筆者紹介

奥野 クララ
奥野 クララ
株式会社ブレインパッド プロジェクトマネジメント/データ分析・活用
プロダクト > パートナーマネジメント > Brandwatch事業推進G

プロダクトマネージャーを経て、ソーシャルデータアナリティクス Brandwatchの事業推進に従事。9年以上にわたりブレインパッドでデータ分析・活用、テキストマイニング、ソーシャルリスニング領域の実務を担当し、現在はBrandwatch事業全体を管理しながら、企業向けセミナーやウェビナーの講師として、マーケティングリサーチの新手法やSNSデータ活用の実践事例を数多く発信している。特にキャンペーン分析、業界別のソーシャルリスニング実践に精通し、データドリブンなマーケティング施策の設計支援を提供している。
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