顧客満足度を高める!コンタクトセンターの会話データ活用事例とハイパフォーマー育成プログラム

 

コンタクトセンターは顧客との重要な接点であり、オペレーターのパフォーマンスは顧客満足度や売上に直結します。

本稿では、コンタクトセンターで取得した会話テキストデータを活用して、ハイパフォーマーオペレーターを育成したり、品質を向上させる具体的なアプローチ手法について詳述します。

顧客満足度を高める!コンタクトセンターの会話データ活用事例とハイパフォーマー育成プログラム

音声認識ソリューション事例集

テキストデータとは

最近、コンタクトセンターでは会話を音声認識ツールを使用してテキスト化し、データを蓄積することが主流となっています。音声認識精度が向上し、辞書登録をしなくても高い認識率を実現できるため、オペレーターが応対を書きおこす必要がなくなりました。また、会話内容を生成AIで自動要約することも可能です。会話テキストは応対の振り返りに利用されるだけでなく、蓄積したテキストをマイニングし、コンタクトセンターの品質や売上向上に繋げる取り組みを行っているところも増えてきました。しかし、テキストを蓄積しているだけでマイニングには至っていないセンターも多いのが現状です。

テキストデータの活用について

本日は、会話テキストをコンタクトセンタービジネスの価値向上に活かしている2つの事例をご紹介します。

最初の事例は、セールス数をKPIとして運営しているセンターでの会話テキスト活用方法です。このセンターには、セールスが得意なハイパフォーマーオペレーターが在籍しています。多くの管理者は、他のオペレーターの成績を上げるためにハイパフォーマーの特徴を可視化しようとしますが、実際に言語化するのは難しいことが多いです。そのような時、私たちはコンタクトセンターの会話データを用いてテキストマイニングを実施し、ハイパフォーマーの特徴を可視化しています。日々のモニタリングでは一部の通話しか確認できませんが、会話がテキスト化されていることで、膨大なデータから有用な情報を引き出すことが可能になります。

2つ目の事例は、通話に対して顧客満足度を取得しているセンターにて、満足度の高い通話と低い通話の要因を会話テキストから分析しています。顧客満足度の高い通話と低い通話の内容を管理者が一件一件確認することも可能ですが、実際には工数がかかります。そこで、対象テキストをNPSの高い通話と低い通話でデータベースを分けて分析し、それぞれの傾向を把握しています。次からは、それぞれの事例について詳しくお伝えします。

音声認識ソリューション選定の手引き
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セールス数をKPIとして運営しているセンターでの会話テキストの活用事例

テキスト分析結果から見えてきたハイパフォーマーとローパフォーマーの違い

事例の一つ目である、セールス数をKPIに運営しているセンターの会話テキスト活用方法についてお伝えします。セールス業務を実施する際、恐らく「セールストーク」や「キラートーク」、「切り返し」といったナレッジを用意しているはずです。これらのフレーズをあらかじめテキストマイニングツールに登録し、会話テキストを分析します。分析によって、ハイパフォーマーとローパフォーマーの発話フレーズの差を比較できます。例えば、スクリプトに入っているフレーズでも、実際にはハイパフォーマーがあまり使っていなかったり、逆にローパフォーマーがしっかり使っていたにも関わらず成果に結びついていないことがあるのです。テキストマイニングを通じて、真に有効なフレーズを定量的に確認することができます。

ハイパフォーマーのアプローチ

テキストマイニングの結果、優れたセールス力やコミュニケーションスキルを持つハイパフォーマーと、ローパフォーマーとの違いが見えてきました。ローパフォーマーの傾向として、例えば通販化粧品のセールス業務では、表面的な話題が多く取り上げられていることがわかりました。主に「キャンペーンの訴求」「価格」「金額」といった内容で、顧客のニーズには直接応えられません。一見分かりやすい話題ですが、売上には繋がりにくいとされています。特に、業務に入ったばかりの新人オペレーターにこの傾向が顕著に見られます。対照的に、ハイパフォーマーはセールスの基本を守りつつ、お客様に対して疑問を投げかける姿勢があります。たとえば、化粧品の場合は「肌悩み」、教材なら「保護者の教育ポリシー」を尋ねるなど、顧客のニーズを把握しようと努めています。このアプローチにより、提案も一方通行になることはありません。テキスト分析を通じて、ローパフォーマーは質問の発話率が低いことが明らかになりました。管理者はハイパフォーマーが質問を多くすることを感覚的に把握していましたが、テキスト分析によってその項目が明確になりました。ハイパフォーマーは、お客様のニーズを質問によって引き出し、それに合った情報提供を行うことで、セールスに結びつけているということが分析結果からも示されています。

音声データの重要性

テキストマイニングだけでなく、音声データの活用も重要です。会話の抑揚や間は、音声を通じて初めて理解できます。ハイパフォーマーが無意識に行っている行動として、声のトーンや間の取り方が挙げられます。たとえば、ハイパフォーマーはお客様との会話で語尾を上げて話すことが多いですが、ローパフォーマーは語尾を下げてしまい、印象が固くなることがあります。このトーンの違いが顧客の反応を大きく左右します。また、ハイパフォーマーはお客様に合わせた速度で会話を進め、質問後に適切な間をとることで話しやすい雰囲気を作ります。テキスト分析と音声データを組み合わせて育成方向を決定することは欠かせません。

育成プログラムの具体例

テキストマイニングや音声データを活用し、テキスト分析を行った結果を基にした具体的な育成プログラムがあります。

  • フレーズの導入: ハイパフォーマーがよく使うフレーズをトークスクリプトに組み込むことで、新人オペレーターもお客様のニーズを確認しやすくなります。この取組により、全体のサービス品質が向上します。
  • 音声の活用: ローパフォーマーには、まず自分の音声を聞かせた後にハイパフォーマーの優れた音声を確認させることで、気づきを得やすくなります。
  • 音声品質評価: オペレーターの全ての音声を管理者がモニタリングするのは大変ですので、音声認識ツールを導入し、自動で評価する方法が効果的です。ツールが適切なフレーズの使用を評価し、オペレーターが自身の改善点を把握するのに役立ちます。
  • 個別フィードバック: 各オペレーターに対して個別のフィードバックを行うことで、モチベーション向上に繋がります。このプロセスは育成プログラムの効果を最大化するために必須と言えるでしょう。

この育成プログラムの実施を通じて、ある業務では提案成功率が4倍に向上した事例もあります。管理者の感覚ではなく、定量的な裏付けに基づいた育成プログラムを通じて、ハイパフォーマーオペレーターを迅速に育成することが可能になります。

コンタクトセンターの品質向上での活用事例

顧客評価の重要性

コンタクトセンターでは、応対評価を行う際に管理者からの評価だけでなく、顧客からの評価である「顧客満足度」や「NPS(ネットプロモータースコア)」を導入するケースが増えています。顧客満足度やNPSを取得することで、顧客の声をより具体的に把握し、応対品質の向上に繋げることが可能です。ここで紹介する事例は、顧客との会話データと顧客満足度を掛け合わせてマイニングを実施し、満足度が高い会話と低い会話との違いを特定することができた内容です。

顧客満足度が高い会話の特徴

顧客満足度が高い会話では、単にスクリプト通りに話すだけではなく、お客様への配慮が随所に見られました。感情を受け止めたり、ニーズを理解する姿勢が強く表れています。一方で、顧客満足度が低い会話では、機械的な応対が目立つことが分かりました。テキストマイニングの結果、顧客満足度が高い会話には共通する特徴があります。お客様が不安に思ってお電話してきた際には、「ご不安ですよね」といった気遣いの言葉が使われていました。このような何気ない気遣いや共感の言葉がお客様の安心感につながり、顧客満足度を向上させていることがわかります。また、お客様の質問に対して明確な回答ができない場合も、「お答えできません」と言うのではなく、代替案を示したり、解決できない理由を丁寧に説明することで顧客の不安を解消していました。逆に、満足度が低い会話は、お客様の気持ちを受け止める言葉が少ないことが、定量的に示されています。

品質向上に向けた取り組み

分析によって品質向上に繋がるフレーズが特定されても、これを日々の運用に定着させる必要があります。これは非常に重要な点です。この事例でも、顧客満足度が高い会話から導き出したフレーズを管理者がスクリプトに反映し、それに基づいて応対品質基準を制定しました。この基準に則り、管理者は品質評価を実施してオペレーターにフィードバックを行うサイクルを構築しました。フィードバックは最低でも月1回行い、管理者からのフィードバックがない時にもオペレーターは自分の応対を基準に沿って聞き返すことができる環境が整えられています。また、フィードバック結果を振り返るために各オペレーターの個人カルテを作成し、改善点や優れた応対を記録しました。これにより、各オペレーターは自身の強みと弱みを理解し、具体的な改善策を見つけられるようになります。

成果と顧客満足度の向上

これらの取り組みによって、センターの顧客満足度が3.2から4.1(最大5点)に向上しました。この数字は、顧客がサービスにどれほど満足しているかを示す直接的な指標です。確立した品質評価基準と育成プログラムのおかげで、オペレーターが入れ替わっても一定の顧客満足度を維持できます。新しいオペレーターもすぐに高評価を得ることができ、全体のサービスレベルが向上しました。

まとめ

コンタクトセンターのオペレーターが持つポテンシャルを引き出すためには、データを活用したアプローチが不可欠です。データにはさまざまな種類がありますが、お客様との会話の中にはセンターの価値を高めるヒントが隠れています。私たちは、会話テキストデータを活用することをお勧めします。テキストマイニングや音声分析を駆使し、ハイパフォーマーの成功要因や顧客満足度の向上要因を突き止めることで、実践的な育成プログラムが構築できます。このプロセスを通じてオペレーターのパフォーマンスを向上させ、売上や品質向上に繋げることが期待できます。この記事では、テキストデータ活用の重要性と具体的な手法を紹介しました。ぜひ、皆様のセンターでもこのアプローチを実践し、オペレーターのパフォーマンス向上に繋げてみてはいかがでしょうか。

執筆者紹介

高美 由果理
高美 由果理
入社後、新聞社、スポーツメーカー、保険、通販業務などのコンタクトセンター運用を経験。その後新規事業開発推進部に異動し、BtoBイベント施策立案や実行、アウトバウンド専門センター企画及び立ち上げを推進。その後コンサルティング部に異動し、センター統合業務コンサルティング、音声認識ツール導入、テキストマイニング、チャットボット導入PRJなどを多数実施。
最近ではコールリーズン分析を起点としたオムニチャネル戦略や、商品・サービス改善、コンタクトセンターや営業部門のなどのBPRなどのPRJ全体管理を行っている。
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