事務業務の効率化にむけた6つのポイント

   

事務センターや多くのコンタクトセンターの電話業務に付随し、大量の事務業務が日々行われています。
事務処理に関するサービスレベルは、顧客満足に大きく影響します。そこで企業はこれまで十分な人材を配置してその対応をしてきました。一方で、事務業務はコンタクトセンターの電話業務と違い、PBXのような標準的な仕組みがないため、個人やチームの生産性が可視化されず、業務がブラックボックスになりがちです。
事務業務でも、サービスレベルを維持しながら、生産性向上・品質向上が求められる中で、その課題に取り組んでいる企業が多く存在します。ここではその課題に取り組んでいる企業の事例をベースに事務業務の生産性向上のポイントや必要なツール解説します。

事務業務の効率化にむけた6つのポイント

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事務業務の課題

大手企業、官公庁、自治体など、大量な事務業務が発生する場合には効率化を目的として「事務センター」を設置し、一括して業務を実施しています。具体的には、給与計算、経理処理、備品の受発注等の人事・総務・経理に付随する事務や、コンタクトセンターの後工程で必要になる、書類不備のチェック、大量のデータ入力、郵送物の封入・発送、仕分け作業などが存在します。
お客様の要望を受け付け、約束した期間内に約束した品質で業務をやり遂げることは、多くの場合、関連プロセスにおける顧客満足度に直接的もしくは間接的に大きく影響を与えると言われています。そのために、サービスレベルを維持または向上させながら、生産性を上げて事務業務のコストを削減することが事務センターには求められます。

事務業務を行う現場を見てみると、担当者ごとの属人的な対応、生産性のばらつき、チームや人による稼働率の違い等、多くの課題が山積されてます。その中で特に問題になるのは、個々の生産性が把握できていないために、改善の打ち手が局所的になったり、表層的になったりしてしまうことです。日々の業務量が変化する上に、担当者の経験や担当業務も異なるため、適正な生産性や担当者の余力を可視化して、センター全体でどれくらいの量の作業が実行可能なのかが管理者はわかっていないケースがあります。結果的に、日次処理件数の実績から求めた1時間あたりの平均処理件数だけをもとに、目標や成果指標管理をしているのが実態となります。

過去の日時処理件数の結果から求めたマクロの稼働率は、担当者個々の処理能力は実態と乖離している場合が多く、詳細に分析してみると実態稼働率が理想値・最適値と比較して低くなる傾向があります。
また、高い生産性で業務遂行をしているが、難易度の高いタスクばかりが振られる人がでてきたり、高い品質を維持しつつ数をこなしたり、生産性の低い人を助けたとしても、正当には評価されないため、能力がある人ほどのんびり仕事をし、余剰時間を管理してしまう傾向があります。そのため新しいメンバーの育成時間が確保できず、一部のベテランが属人的な対応でセンターを支え、いざ役割を最適化しようとしても、なかなか他の人に業務を引き継げない課題もあります。

このように、数々の課題がありながらも、顧客満足度を踏まえたサービスレベル維持が必須となるため、事務業務の対応人材が豊富にいた時代は、人海戦術が一つの解でした。しかし最近は、大規模センターの事務処理の担い手の世代が大量に定年を迎え、人手不足が定常化しており、何らかの手を打たないとセンターのサービスレベル維持や継続性すら危うくなるかもしれません。DXによる生産性向上・品質向上を目指す中で、聖域だった事務業務においても、生産性の可視化と効率化が求められるようになってきたのです。

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システムによる生産性管理

コールセンターでは電話対応が業務の中心になり、PBX上のCMS(Call Management System)で通話時間、後処理時間、保留時間、待機時間がシステムで自動的に計測されます。そのデータを使って、個人やチーム毎の生産性や稼働状況を分析し、その結果に応じてWFM(Work Force Management)システムまたは、同等のコンセプトで最適なシフトを組むなど、効率化が進められてきました。一方事務センターでは、一般的にそういう仕組がないため、簡易的な仕組みを導入したり、CMSの分類コードを間借りして事務業務の生産性を分析してきました。しかし、電話対応と比較し事務業務のフローやステイタスは多種多様で、複数作業を同時進行で行っていたり、処理と処理の間のアイドルタイムの定義が曖昧であったりで、真の生産性を可視化することが難しかったのです。そのため、効率化に向けた改善もなかなか進みませんでした。

近年、プロセス管理ツールが登場し、どのプロセスの処理にどれくらいの時間がかかっているのか、どのプロセスが非効率になっているのかをシステムで可視化することが可能になってきました。プロセス管理ツールと業務システムを連携させ、事務処理を一気通貫で横断的に管理すれば、生産性を可視化することができるわけです。これは、CMSから問題点を見つけ、効率化に向けたPDCAを現場手動で動かすコンタクトセンターの改善手法を、事務業務の領域に拡充できることを意味します。事務業務をタスクレベルで管理し問題を把握することで、生産性の可視化と効率化による生産性向上を実現するわけです。

一方で、プロセス管理ツールの多くは、各業務システムとのシステム連携を前提としている場合が多いのです。そのため、継続的に利用しようとすると、まず開発が必要で、関連するすべてのシステムとのシステム連携をすることになります。それができない場合は、ワンタイムでデータを吸い上げプロセス管理ツールにインポートし、改善のレポートを出すというコンサルティング支援システムで終わってしまいます。プロセスが変われば、連携システムも改変する必要があり、システム以外のマニュアル作業は計測できないので、管理可能タスクが分断されてしまう課題もありました。これでは、せっかく事務業務の可視化をしようとしても、開発コストがボトルネックとなり挫折してしまう場合が多くなります。

コンタクトセンター関連製品に強いグローバルベンダーVerint社が提供するOperations Managerは、それらの課題を解決する革新的な事務業務の可視化ツールです。個々の担当者やチームの業務生産性の可視化はもちろん、各担当者が有するスキルの種類やスキルレベル、稼働状況に応じた業務の配分、センター全体の実行可能業務量を計算するキャパシティ計画を立てることができます。プロセスステップを定義し、仮想ケースに対して、マニュアル操作で作業開始や終了を入力することで、業務システムとの連携なしに、マニュアル業務の生産性を把握することができます。必要ならばもちろん、業務システムと連携をして自動的に業務の生産性の把握も可能です。自動とマニュアルの方式を組み合わせ、システム処理、マニュアル処理、その他(待ちや保留)の処理までを含めた、事務業務全般を一気通貫で管理し可視化を支援することができるのです。

これら事務業務における可視化や効率化を促進するツールは、中~大規模の事務センターにおいては、今後必要不可欠になっていくとと考えられます。それらの適用ケースを見てみましょう。

事例にみる事務処理業務の稼働状況の実態

ある企業の事務業務の改善取組み事例をご紹介します。

人事・経理・総務の大規模な事務センターにおいて、全社中期経営計画において事務業務の効率化プロジェクトが始動し、改善に着手することとなりました。これまで業務の可視化には取り組んでいたものの、事務業務の生産性把握と適正な処理効率の目標設定がうまくいっておらず、生産性や稼働率の可視化が課題となっていました。そこでプロセス管理ツールの導入と、その分析による改善・改革にチャレンジしたのです。

最初に、様々なプロセス管理ツールが比較されましたが、ワンタイムのマイニングだけに強いもの、最初からシステム連携が必須となるものが多く、どれもニーズに合いません。Verint社のOperations Managerは、システム連携をしても、しなくても、同じようにデータを把握できるため、さまざまな業務を包括的に捉えられるツールとして評価され、選択されました。

最初の難関は、事務業務を行っている現場メンバーからの、プロセス管理ツールの導入に対する反発です。現場はきちんとやっている、いまさら個人やチームを評価するツールなど入れて、監視するつもりか?と言う反発です。そのため、処理時間の計測が逆に生産性を低下させるなど、導入に反対するの意見が大半でした。これに対しての特効薬はないものの、トップマネジメントから、改革に対する強いメッセージ、効率化によって余った人材は新しいビジネスに振り分けること、それには、事実を把握し、サービスレベルを落とさずに生産性を可視化することが重要なことを伝え続けました。

並行して草の根活動も続け、それが功を奏しました。やがて、前向きな部門から導入メリットが理解されてきて、システム導入や作業データ入力への全面協力はもちろん、本質的な業務改善・改革に向けた前向きなアイデアが飛び交うようになったのです。それらの部署に徹底的に効果を実感してもらい、その良さを周囲に伝播してもらうことで、徐々に部署の賛同が得られ、導入範囲拡大につながっていきました。

現状把握のための分析フェーズにおいては、標準プロセスを定め、それとのギャップがどれだけ発生しているかを確認しました。一方で、標準プロセスに合致しない個別のローカルルールを適用したプロセスも多数存在します。標準プロセスはミクロなタスクレベルで生産性を把握し、標準化されていないプロセスには、マクロなタスクレベルで生産性を把握します。導入後のPDCAの中で、現場主導で標準プロセスを増やしていくことで、業務全体の生産性をあげていくことを、ガイドし合意しました。Operations Manager の柔軟性と事務業務の現場の現実とをかけ合わせた、合理的な手法だと思われます。

また、事務業務はセンター全体で、チームや人を最適に分業しているはずでした。しかし、生産性を可視化した結果、稼働率が高く常に事務業務を隙間なく行っているチームや人と、稼働率が低く余剰人員を抱えるチーム、余剰時間を抱える人がいるなど、稼働率にチームごと人ごとに大きな差があることがわかりました。中には、事務業務の生産性が非常に高いにもかかわらず、早く処理を行うと他人を手伝って割振りが多くなることを避けてか、余裕を持って業務を行い未稼働の時間で業務量をコントロールしている人もいました。業務量と稼働状況に応じた業務の中央コントロール機能が、事務業務センターの改善・改革には必須であることを改めて痛感しました。

同社はこれらの課題に対して改革のメスを入れ、プロセス可視化、業務配分を最適化して効率化を進め、劇的な業務効率化を実現しつつあります。また、可視化の課題を見つけて効率化するだけではなく、スキル管理、業務配分、キャパシティ計画など、より高度な機能に活用範囲を広げようとしています。

別の事例でも、事務センターの実行稼働率は3~4割の場合が多く、当社コンタクトセンターの標準平均稼働率の7割に比べて、大きく下回っている場合が多いのが実情です。各社、各センターにて、ここに挙げたものと同様の問題が、多かれ少なかれ発生しており、同様の手法が、その改善・改革に有効と考えられます。

事務業務の効率化のポイント

上記の事例も踏まえ、事務業務の効率化のポイントを整理します。

  • センター全体に対する方針の落とし込み
    プロセス管理ツールを使った運用は、これまで運用のやり方とは大きく違うため、単なるツールの導入として実行しようとすると現場からの大きな反発が予想されます。実施意義・目的、タイミング、運用変更に伴って、頑張れば評価される等の導入意義やメリット、雇用の不安を払拭するなど、トップからのメッセージを現場に落とし込み、センター全体で改革への雰囲気を醸成することが大切です。

  • 業務の可視化
    事務業務の効率化の第一歩としては、可視化すべき業務の明確化とその標準プロセスを定義することが必須です。システム導入をせずに改善に着手する場合でも同様のことが言えますが、これが正しく把握されてはじめて可視化や計測のためのシステム導入にもつながります。業務種別の整理と、そのプロセスマップを作成する過程において、それらを意識することがとても重要です。闇雲に現状の計測点だけを設定しても、形式的に可視化はできますが、その数値から課題を見つけて、業務の改善や改革につなげることは難しくなります。

  • 適性な目標設定
    生産性や稼働状況が可視化されると、これまでとは異なる管理をしていく必要があります。個々の担当者には業務単位で処理時間の目標設定を明確にして、センター全体としてサービスレベルを維持しながら、生産性と適切な稼働率で運用することが求められます。また、生産性だけでなく品質管理も重要な要素となり、ミス率や差し戻し率など正確性に関する指標の閾値を設け、生産性と両立させることを意識付けすることが重要です。

  • 業務コントロールによる全体最適化
    プロセス管理ツールを導入することで、個々の生産性管理ができるようになると、そのデータを使って、業務量とスキルレベルに応じたセンター全体のキャパシティ管理を行うことができるようになります。これを活用して全体の業務コントロールを行うことで、サービスレベルを維持しながら、生産性向上による効率化を実現します。(生産性管理と割振り)。個々の担当者の自主性だけでは、センター全体の生産性向上にはつながらないため、管理者は業務を戦略的意図を持ってコントロールすることが求められます。

  • 生産性と連動した評価制度の設計
    生産性や稼働率が明らかになると、生産性やスキルレベルが高い人は状況に応じて対応する業務量が今以上に増えることも想定されます。不公平感が助長されないためにも、頑張っている人はそれに連動する評価制度を設定し、高い生産性で事務業務を行うことへの評価を徹底し、モチベーションを喚起する仕掛けを設けることが重要です。

  • 正しいツールを正しい手法で導入する
    プロセス管理ツールは、さまざまなものが存在します。ベンダーはシステム機能をアピールし、導入さえすれば、夢のように改革が進むようなことを言いますが、そんなことはありません。また、最初にシステム要件定義をして、システムを導入することが目的となると、効果は限定的になります。「自分たちのやりたいことにあったツールはなにか?」「マニュアル業務、システム業務両方に対応しているか?」「業務の変化に柔軟に対応できるのか?」「生産性の可視化に加えて、さらなる高度化をめざせるのか?」など必要な機能はあるのかと、それを現場を巻き込んで、事例のような正しい手法で導入することが、成功の一番の鍵となります。

まとめ

顧客満足度に大きな影響を与える事務業務の効率化は、多くの企業やセンターの重要課題です。
しかし、稼働率や生産性が可視化されていない状況においては、現状の生産性ありきの仮説による改善となり根本的な改善は見込めません。それを解決するのがプロセス管理ツールです。Verint社が提供するOperations Managerなど、現場のニーズにあったツールを活用し正しい手法での導入が必要です。まずは稼働状況の可視化に取り組むことが重要です。それによって、データにもとづいた課題の把握や、改善・改革の推進ができるようになります。プロセス管理ツールは、事務業務に大きく影響を与えるため、単なるツール導入としてではなく、マネジメント、現場、管理者、企画などが一体となり、改革の手段としてい位置づけることが重要です。可視化による改善が当たり前になると、スキル管理、キャパシティ計画など、サービスレベルを維持しながら、生産性向上による効率化を実現するセンターに向けて改革は加速します。

執筆者紹介

久保 睦
久保 睦
2001年に入社後、通信、金融、通販、メーカー、サービス業のコンタクトセンターを中心に80社以上のコンサルティング、立上げ支援、ソリューション導入企画・設計・構築、アドバイザーを担当。現在は、企業の付加価値向上、CX向上、DX実現に向けたコンタクトセンター活用のプランニングなどビジネスコンサルティングを中心にプロジェクト管理、統括責任者として多数の実績あり。
Salesforce 認定アドミニストレーター
デジタルチャネルCX調査 2024ー2025年版

株式会社ベルシステム24

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