オペレータ支援システムが普及しないのはなぜか

 2021.10.29  村田 健太郎

コンタクトセンターにおけるAIの活用といえば自然言語AIを用いてFAQをレコメンドする「オペレータ支援システム」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。オペレータ支援システムは2016年頃から導入が始まりましたが2021年現在、一般的なコールセンターへは導入が進んでいないのが現状です。

この記事ではなぜオペレータ支援システムの導入が進まなかったのかを様々な観点で整理します。

オペレータ支援システムが普及しないのはなぜか

オペレータ支援システムとは

まず初めにオペレータ支援システムとは何か?という点からお話ししたいと思います。
オペレータ支援システムは様々な形、バリエーションがありますがこの記事では主に以下のような事を実現するシステムを指して解説します。

  1. エンドユーザーの発話内容をリアルタイム音声認識でテキスト化している
  2. 発話テキストを元に自然言語AIを用いて回答に必要なFAQを推論検索している
  3. AIで特定したFAQをオペレータ画面に表示しレコメンドしている

本記事ではこれら3点を実施するシステムをオペレータ支援システムとします。
AIがエンドユーザーの会話の内容を元に答えに近いであろうFAQを提示してくれる、それがオペレータ支援システムです。

音声認識エンジンを用いてオペレータとユーザー間の会話をテキスト化し、その一部分のテキストを元にFAQを検索する事になります。オペレータ側の発話をキーにしてFAQ検索を行う場合と、エンドユーザー側の発話をキーにする場合、或いは画面上に表示された双方のテキストから文章選択を行いFAQ検索をするケース、テキストをさらにAIで要約しそこに紐づくFAQを表示する場合など実装の仕方は多岐に渡ります。

FAQの検索方式もよくある質問の「質問文」に近いかどうかを検索する方式と「回答文」に類似キーワードが含まれるかどうかを検索する場合などどのようなFAQが用意されているか、どのような業務で利用するかによって最適な実装は異なります。

音声認識エンジンの精度や自然言語AIの精度に強く依存する仕組みのため、正しいFAQが提示できるかどうかが重要なポイントになります。使い勝手や精度などの問題はありますがうまく機能すればオペレータの生産性向上、コンタクトセンターの安定稼働に貢献することができるでしょう。

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オペレータ支援システムが解決すること

オペレータ支援システムは、2016年頃のコンタクトセンターでのAI活用が始まった際に注目され、メガバンクを中心に導入が始まったソリューションです。FAQを自動、或いは半自動でレコメンドすることによりオペレータがFAQ検索にかかる時間を短縮する、という事で生産性向上による人件費の抑制やスピーディな回答によりCXの向上効果を創出します。

これらの事からオペレータ支援システムの導入が向いているコンタクトセンターは以下のような特徴を持ちます。

  • 新人オペレータが多い
  • 保留時間が長い
  • FAQが膨大に存在する

新人のオペレータが多くFAQがどこにあるか分からない、結果的に保留時間が長くなってしまっている事でAHTが長時間化しているコンタクトセンターではオペレータ支援システムは非常に有効なソリューションといえるでしょう。

メガバンクなどの数百席規模の大規模なコンタクトセンターで導入が進んだことからも、新人の比率だけではなく、新人の絶対数が多い事もオペレータ支援システムが効果的に活用できる要素の一つになるでしょう。

なぜ導入が進まないのか

これまで当社では様々なコンタクトセンターソリューションを提案してきましたが、オペレータ支援システムをコンタクトセンターへ導入する際の課題の一つが投資対効果(ROI)です。新人オペレータが多いコンタクトセンターではオペレータ支援システムの効果が高いというお話をしましたが、実際のコンタクトセンターでの新人比率は2~3割にとどまる事が多く、裏を返せば7~8割はベテランで運営をしていることになります。2~3割の新人は受電本数も少ない為、「FAQの検索」にかけている総時間も全体から見れば非常にわずかです。

オペレータ支援システムでは通話時間そのものを短縮することはできないため保留時間の数秒を短縮する事で効果を積み上げることになり、投資に対して得られるベネフィットのバランスが取れなくなってしまう事がよくあります。ベテランオペレータにも効果があるのでは?という意見も良く頂きますが実際のコンタクトセンターでベテランオペレータの業務プロセスを分析すると”FAQ検索”にかけている時間はほとんど無い事が多く、ヒアリング等でもFAQを探すのには特に困っていないという事も珍しくありません。

また、FAQ整備に課題がある場合も多くあります。オペレータ支援システムではお問い合わせ内容に対してリアルタイムでFAQを提示することになりますが、そもそもオペレータに提示するFAQが整備・拡充されていることが大前提になります。FAQが無い、或いは更新・メンテナンスができておらず十分活用できるものではないというケースもよくあるパターンの一つです。

多くのコールセンターではATT(通話時間)とACW(後処理)が長時間化しており、これを如何にして短縮するかが運営のカギになりますがオペレータ支援システムではこれらにほとんど貢献できないのが現状です。

課題と選択するソリューション

私自身も過去にクライアント業務へのオペレータ支援システムの導入プロジェクトへ参加した事があるのですが、そのお客様は約1年ほどでオペレータ支援システムを廃止しオペレータが探しやすいFAQの表示方法やカテゴリ構成を行うといった従来型の改善施策に舵を切りました。導入した業務のオペレータへのヒアリングを行った際には、やはりほとんどがベテランのオペレータでFAQを探すのにそこまで困っていない、或いは答えたいFAQはわかっているのでそれをすぐに開けるようにしたいというような声が多くソリューション導入という手段が目的化していることが明白でした。

現在のコンタクトセンターにどのような課題があるのか、またそれを解決するためにどのようなソリューションを選択するのかは、当たり前の事ですが非常に重要な事になります。前述した例のように先に「オペレータ支援システムを導入したい」というようなソリューションを先に決められているケースは実際の商談の中でも多いのが現状ですが、よくよく話を聞いていくとあまり効果が出ないと思われるケースも多くあります。

ベテランオペレータで構成されているセンターで、FAQの整備ができているのであればオペレータの補助よりもエンドユーザーの自己解決を促進するチャットボットやボイスボットのほうが全体パフォーマンスの向上に貢献できます。FAQ整備ができていないのであればまずはFAQを整備しCRMシステムや管理手法の見直し等を行う事が先決です。

解決すべき課題が何なのかをしっかりと見極め、選択するソリューションを選ぶ事が重要です。

まとめ

オペレータ支援システムは非常に大規模なコンタクトセンターや新人比率の高いコールセンターで有効なシステムである一方、多くのコンタクトセンターに浸透するソリューションではないのかもしれません。今後、浸透していくとすればオペレータ支援システム単体の導入ではなく、音声認識やCRMシステム等の付加機能の一つとして広がっていくのではないでしょうか。

執筆者紹介

村田 健太郎
村田 健太郎
2002年入社後、オペレーション部門・オペレーション企画部門を約10年経験。
その後通信業界コールセンターのコンサルティング業務を担当しコールセンターへのAI導入やAIを活用した業務改善などのプロジェクトの参画。
AIや音声認識などの知見を元に現在はekubotの事業立ち上げと推進を担当。
コンタクトセンターアワード2013 最優秀部門賞受賞
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