顧客との関係構築に課題を抱えている企業の中には、顧客管理システム(CRMツール)の導入を検討している担当者の方も多いのではないでしょうか。しかし、いくらCRMツールを導入しても、それをマーケティングなどの具体的な施策につなげられなくては意味がありません。そこで本記事では、CRM施策の概要やメリット、実施のポイントなどを解説します。
CRMとは
CRM(Customer Relationship Management)とは、日本語で「顧客関係管理」と訳される概念です。顧客関係の構築・維持の効果を高めることで、コストの削減や収益のアップを実現しようとする企業戦略を意味します。
顧客と良好な関係を築くためには、顧客への深い理解が不可欠です。そのため、CRM施策を実施する際には顧客に関するさまざまなデータを集め、それを分析して施策に反映していくことになります。この顧客データを蓄積し、一元管理するために活用されるのが「CRMツール」、あるいは日本語で「顧客管理システム」と呼ばれるITツールです。このツールそのものを指して「CRM」と呼ぶ場合もあります。
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CRM施策のメリット
CRM施策を実施することで企業が得られるメリットは、「顧客情報の一元管理が可能になること」と「データに基づいて顧客にアプローチできること」の2つが挙げられます。
情報を一元的に管理できる
CRMツールの特長は、さまざまなシステムやチャネルから収集された顧客情報を一元管理できることです。日本では、使用しているシステムやデータベースが部門ごとで異なる企業が多く存在します。このような場合、たとえば営業部門とマーケティング部門が異なる顧客情報に基づいて戦略を立ててしまい、企業全体で見るとちぐはぐな動きになってしまうかもしれません。
もちろん、こうしたリスクを意識して、メールやクラウドストレージなど、なんらかの方法で部門間の情報共有を図っている企業も多いことでしょう。しかし、この場合でも「顧客情報全体を把握するためには複数のシステムやファイルを見なければならない」「情報共有に手間をかけなければいけない」という欠点が残ります。
この点、CRMツールに情報を集約すれば、どの部門もリアルタイムで最新の顧客情報へ簡単にアクセスできるようになります。スプレッドシートなどと違って、多種多様なデータを確認する際の視認性に優れている点もメリットです。こうした理由から、CRM施策を推進することで業務効率の向上や社内連携の強化などが期待できます。
データに基づいたアプローチができる
CRMツールによる一元管理の結果、顧客へデータに基づいたアプローチができるようになるのも大きなメリットです。部門ごとにばらばらに管理されていたデータが一箇所に集約されることで、各顧客の全体像がより正確に把握できるようになります。
そのデータに基づき、各顧客のニーズや購買傾向、購買意欲などの多角的な分析を実施することで、それぞれの特性に合わせたアプローチも可能になるでしょう。こうした個別最適化されたアプローチは顧客満足度の向上をもたらし、それがさらにリピーターの獲得、アップセル・クロスセルの促進へとつながっていきます。顧客が自社に何を期待しているのか把握することは、自社のブランド戦略を構築する上でも必須の要素です。
さらに、CRMツールに集約された顧客情報を分析し、各顧客がどれくらいの利益を自社へ長期的にもたらすかを知るためにLTV(顧客生涯価値)を算出すれば、アプローチすべき顧客に優先順位をつけて、営業活動の効率化なども可能になります。
CRM施策の例
一口にCRM施策と言っても、その中には以下のようにさまざまな取り組みが含まれます。各施策の特徴やポイントを理解し、自社にあったものの導入を検討するとよいでしょう。
メール配信
最初に紹介する施策例は、メールマーケティングです。メールマーケティングでは、メールマガジンやステップメール、レコメンドメール、アフターフォローのメールなど、さまざまな種類のメールを顧客へ配信します。しかし、そこで重要になるのは、各顧客の好みや状態にあわせて適切な内容、適切なタイミングでメールを配信することです。
たとえば、顧客の関心から外れたメルマガを何通も送信することは、無意味なばかりでなく、顧客から悪印象を持たれるおそれがあります。逆に、各顧客の関心にフィットしたメルマガを送れるようになれば、コンバージョン率の上昇が見込めるでしょう。
ここまで強調してきたように、CRM施策は顧客理解を深めるのに役立つため、その点でメールマーケティングとの相性は抜群です。CRMツールでは顧客の連絡先の整理はもちろん、キャンペーンの自動化、メールに対する顧客の応答履歴の保存・追跡などができる製品もあるので、マーケティング業務の効率化が期待できます。
フォーム設置
ECサイトやコーポレートサイトなどにフォームを設置することも重要なCRM施策です。多くのCRMツールには、Webサイトに問い合わせフォームを設置するための機能が搭載されています。中には、予約フォーム、資料請求フォーム、セミナーなどのイベント受付フォームなどの豊富なテンプレートが用意されている製品もあります。
こうしたフォームを設置して顧客接点を増やすことは、顧客が自社とコンタクトを取りやすくするために大切です。何かの要望や問い合わせしたいことがあったとき、それをすぐに行えるフォームが用意されていることは、企業が顧客に対してオープンな態度でいるという印象を与えます。さらに、フォームから得られた顧客情報は、CRMツールに蓄積され、新たな顧客分析の材料になります。このように、フォームの設置は、顧客へのアプローチの面でも情報収集の面でもCRM施策にとって有用です。
顧客対応
CRMツールは、カスタマーセンターのオペレーターや営業担当者などが実際に顧客対応する場面にも役立ちます。たとえば、カスタマーセンターに顧客から問い合わせがあったとき、CRMツールを確認すれば、その顧客の背景まで深く把握した上で対応できます。
さらに、カスタマーセンターの対応履歴はCRMツールに再び還元されるので、たとえば営業担当者が次にその顧客を訪問した際に的確なフォローアップを行うことが可能です。クラウド型のCRMツールであれば、営業回りの合間などに社外からでもデータを確認できるので、常に最新の顧客情報を入手した上で顧客対応ができます。こうした一連の効果は、顧客満足度の向上を目指す上で大きなポイントです。
CRM施策の実施ポイント
CRM施策を成功させるには、次に紹介する3つのポイントを意識することが重要です。
目標を明確化する
CRM施策は、企業の目標達成や課題解決に役立ってこそ意味があります。そのため、CRM施策を実施する前に目標を明確化することが重要です。たとえば、顧客満足度の向上、業務効率化、顧客解約率の低減などが一般的なCRM施策の目標例として挙げられます。
こうした目標は数値的な指標(KPI)を使って、その達成状況を分かりやすく可視化することが重要です。CRM施策の取り組みを考える場合、この数値目標を達成するにはどうしたらよいかという視点から検討していきましょう。
顧客について分析する
次のポイントは顧客分析を行うことです。いくら大量の顧客情報をCRMツールに蓄積しても、それらのデータが何を意味するのか的確に読み取り、施策に反映できないのではCRM施策の効果は中途半端になってしまいます。
顧客の属性や購買傾向はもちろん、チャネルごとの成約率やキャンペーンへの反応率など、分析対象はさまざまです。自社の目標達成や課題解決を検討する上で有用と思われる情報をピックアップして分析し、そこで把握した情報を具体的な施策へとつなげるようにしましょう。
施策の効果を検証する
最後のポイントは、CRM施策の効果を検証し、PDCAサイクルを回していくことです。ビジネスにおける多くの課題は複雑なものであり、どんなに綿密なCRM施策を立てたとしても期待通りの成果をあげられるとは限りません。社会情勢やトレンドの変化が激しい現代においては、当初効果を出していた施策が時間とともに機能しなくなることもあるでしょう。
そのため、CRM施策の効果検証は定期的に行い、そこで何かの問題を見つけたら改善していくことが重要です。CRM施策には、即効的な成果を期待しすぎず、長期的な戦略として取り組んでいくことをおすすめします。
まとめ
CRM施策とは、顧客情報の一元管理を可能にする「CRMツール」を活用した顧客戦略のことです。CRM施策を推進することで、業務効率化、部門横断的な社内連携の強化、顧客理解の深化などが期待できます。これらの成果はさらに顧客満足度の向上や収益性の向上などへとつながっていきます。
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