ボイスボットとは?
AIに電話対応を任せるコールセンターのメリット、導入事例を解説

   

この記事でわかること
  • ボイスボットの基本と他システムとの違い
    ボイスボットの仕組みや特徴、チャットボット・IVRとの違いがわかります。
  • 導入によるメリットと注意点
    業務効率化や顧客満足度向上などのメリット、導入時に注意すべき課題や対策を把握できます。
  • 自社に合ったボイスボットの選び方
    比較ポイントや導入時の判断軸を整理し、自社の業務や目的に適したボイスボットサービスの選定方法がわかります。

AIの自動音声応対システム「ボイスボット」は、音声認識(ASR)、自然言語理解(NLU)、音声合成(TTS)などのAI技術を活用し、電話応対の自動化によって業務効率化や顧客満足度の向上、放棄呼の削減、24時間対応の実現に貢献するソリューションです。

本記事では、ボイスボットの仕組みや、IVRやチャットボットとの違い、導入によって得られる主なメリット、利用時の注意点を解説します。また、物流・金融・自治体・小売など多様な分野における活用事例を紹介し、サービスを選定する際に検討すべき音声認識の精度、外部システムとの連携、管理画面の使いやすさ、サポート体制などの比較ポイントについても説明します。

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ボイスボットとは

ボイスボットとは、AIを活用して電話窓口での顧客対応を自動化する音声対話システムです。音声認識(ASR)で発話をテキスト化し、自然言語理解(NLU)で要件を把握し、音声合成(TTS)で回答を返すことで、顧客は自然言語で話すだけで問い合わせが進みます。

定型的な案内や手続きを自動化し、必要に応じて適切なタイミングでオペレーターへ転送できるため、従来のIVRのような複雑な操作をせずにスムーズに対応が進み、つながりやすい受電環境を実現できます。

ボイスボットとチャットボットの違い

ボイスボットとチャットボットは、いずれもAIが応対する仕組みですが、音声で話すか、テキストを入力するかというインターフェースが大きく異なります。チャットボットは、顧客が入力した文章をもとに回答を返すテキスト型の自動応答システムで、FAQ対応やWebへの誘導などに強みがあります。一方、ボイスボットは自然言語で話すだけで問い合わせが進むため、高齢者を含む幅広い層にとって操作しやすいという特長があります。

両方を導入することで、顧客は状況や好みに応じて通話またはチャットを選択でき、操作負担の軽減や待ち時間の削減につながります。その結果、より使いやすい顧客体験を提供でき、満足度の向上が期待できます。

チャットボットの詳細については、以下の記事で紹介しています。

ボイスボットとIVRの違い

IVR(Interactive Voice Response)は、受電時に音声ガイダンスを流し、顧客が数字を押すDTMF操作によって担当部署へ振り分ける仕組みです。階層が深いメニューでは選択肢を聞き続ける負担が大きく、複雑な相談や選択肢にない問い合わせには対応しづらいという特徴があります。

一方、ボイスボットは顧客が要件を話すだけで対応が進む自然言語型の対話システムです。メニュー操作が不要で、認知的負荷が少ないため、スムーズに目的の案内へ到達しやすく、結果として顧客満足度の向上が期待できます。

IVRの詳細については、以下の記事で紹介しています。

 

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ボイスボットソリューション選定の手引き

ボイスボットの仕組み

ボイスボットは、音声認識(ASR)、自然言語理解(NLU)、音声合成(TTS)の3つのAI技術を連携させることで、人と話すような自然な電話応対を実現する仕組みです。

顧客から電話がかかってくると、まずASRが発話をテキスト化します。続いてNLUがその内容を解析し、意図や必要な情報(日時・人数など)を特定します。AIが生成した回答はTTSによって自然な音声に変換され、顧客へ読み上げられます。

この一連の処理を高速に繰り返すことで、顧客は話しかけるだけで問い合わせが進み、リアルタイムでの対話が成立します。ノイズ除去や人間らしいイントネーション調整などの技術により、違和感の少ないスムーズな会話が可能です。

ボイスボットの導入事例

ボイスボットは、人手不足や問い合わせの増加、24時間対応の必要性を背景に、さまざまな業界で導入が進んでいます。

1.コールセンター

コールセンターでは、繁忙期の入電増加や人手不足への対応、24時間受付体制の構築を目的にボイスボットの導入が進んでいます。ボイスボットが定型的な問い合わせや申し込み内容を一次受付として自動処理することで、オペレーターは複雑な相談や判断が必要な案件に専念できます。

また、必要に応じてスムーズに有人対応へエスカレーションするハイブリッド運用により、応答率の向上や放棄呼の削減といった効果も期待できます。

2.官公庁

官公庁や自治体では、住民サービスの利便性向上や業務効率化を目的としたDX推進の一環として、ボイスボットの導入が広がっています。開庁時間外の問い合わせに対応できるようになる点や、多岐にわたる住民からの質問に自動で案内できる点が評価されています。

具体的な活用例としては、転出・転入手続き案内や粗大ごみ受付の自動化などが挙げられます。これらの取り組みにより、住民の利便性向上と職員の業務負荷軽減が実現されています。

3.金融業

金融業界では、セキュリティ要件の厳しい分野でありながら、ボイスボットの導入が加速しています。カード紛失・盗難時の受付や本人確認、融資相談の初期ヒアリングなど、正確性と迅速さが求められる業務で一次対応を自動化することで、業務効率化と顧客対応力の向上が進んでいます。

導入事例の詳細は、以下の記事でも紹介しています。

 

ボイスボット導入のメリット

ボイスボットを導入することで、業務効率化や応答品質の向上、顧客満足度の向上など、さまざまな効果が期待できます。たとえば、24時間対応による放棄呼の削減、一次受付の自動化による応答率向上、案内内容の標準化によるサービス品質の均一化など、企業の運営面と顧客体験の双方にメリットが生まれます。

1. コールセンター業務の効率化

ボイスボットは、音声認識(ASR)と自然言語理解(NLU)を用いて顧客の問い合わせ内容を把握し、事前に設計された対話フローに基づいて必要な情報をヒアリングします。状況に応じて追加の質問を行えるため、定型的な問い合わせはボイスボットが自動で対応できます。

その結果、オペレーターは判断や対応が必要な問い合わせに集中でき、業務全体の生産性が向上します。また、一次受付や振り分けをボイスボットが担うことで、平均処理時間(AHT)の短縮が可能となり、大幅な業務効率化につながります。

2. 人材の定着に貢献

コールセンターのオペレーターは、クレーム対応など精神的な負荷がかかりやすく、人手不足や高い離職率が慢性的な課題となっています。こうした背景から、従業員体験(EX)の向上が重要視されています。

ボイスボットは定型的な問い合わせや一次対応を担い、着信を適切に振り分けることで、オペレーターの業務負荷を軽減します。簡単な問い合わせをAIが対応することで、オペレーターは判断力や共感が求められる重要な業務に集中できます。

その結果、不要な一次対応が減り、精神的なストレスが軽減されることで、人材の定着率向上につながり、コールセンターの安定した運営が期待できます。

3. シナリオ更新作業が簡単

ボイスボットは、運用管理画面から案内文言や質問内容、分岐条件などのシナリオを柔軟に編集できるため、運用中の更新作業を容易に行えます。多くの場合、専門的な開発作業を必要とせず、即時に内容を反映できる点が特長です。

そのため、キャンペーン内容に応じた案内の切り替えや、サービス障害・緊急時に向けた一時的な対応用シナリオの追加などにも迅速に対応できます。継続的な改善や状況変化への対応がしやすく、運用負荷を抑えながら柔軟な顧客対応を実現できます。

4. 顧客満足度の向上

ボイスボットを導入することで、定型的で簡単な問い合わせは自動的に完了し、対応が難しい問い合わせのみがオペレーターに振り分けられます。その結果、回線が混雑しにくくなり、有人対応が必要な電話もつながりやすくなります。

その結果、待ち時間の短縮や即時対応によって利便性が高まり、顧客満足度の向上が期待できます。また、従来のIVRにおける音声ガイダンスの確認や番号入力といった操作が不要になることで、操作や待ち時間によるストレスが軽減され、サービス品質や企業イメージの向上にもつながります。

5. 機械学習による精度の向上

IVRがあらかじめ決められたシナリオに沿って動作するのに対し、ボイスボットは自然言語理解(NLU)によって顧客の発話内容を解析し、意図や必要な情報を把握できます。そのため、シナリオから多少外れた表現や曖昧な言い回しにも対応可能です。

ボイスボットの認識精度は、通話ログを分析して学習データを継続的に改善し、AIトレーニングを重ねることで高められます。実際の電話データから重要なフレーズや言い回しを抽出して再学習を行うことで、問い合わせ内容の理解精度が向上し、誤案内の少ないスムーズな電話対応が実現できます。

6. 機会ロスの防止

提供するサービスや商品によっては、平日の営業時間内のみオペレーター対応を行っているケースも多く、平日昼間に電話できない顧客からの問い合わせに対応できず、失注や機会損失につながる可能性があります。

ボイスボットを導入すれば、休日や夜間を含めた24時間対応が可能となり、時間外の問い合わせも確実に受け付けられます。その結果、放棄呼や取りこぼしを防ぎ、顧客との接点を逃さない体制を構築できます。

ボイスボット導入のデメリット

ボイスボットは多くのメリットをもたらしますが、適切な設計や運用を行わない場合、いくつかの課題や留意点が生じる可能性があります。音声認識の精度や顧客体験への影響、セキュリティ面への配慮など、導入前に把握しておくべきポイントについても理解しておくことが重要です。

顧客の発言を正しく認識できない場合がある

ボイスボットは音声認識(ASR)を用いて顧客の発話を解析しますが、技術的・環境的な要因によって誤認識が発生する場合があります。たとえば、方言やアクセントへの対応が十分でない場合、標準語以外の話し方を正しく認識できないことがあります。また、発音が不明瞭であったり滑舌が悪い場合も、意図理解に失敗する可能性があります。

さらに、業界特有の専門用語や略語が事前に辞書登録されていない場合、発話内容を正確に認識できず、意図した案内につながらないことがあります。加えて、周囲の雑音や通話環境、マイクの性能や位置などの影響により、音声認識精度が低下するケースもあります。

このように、音声認識には一定の限界があるため、事前のチューニングや継続的な学習、必要に応じた有人対応への切り替えを含めた運用設計が重要となります。

難易度の高い問いに対応できない場合がある

ボイスボットは、定型的な問い合わせや一次対応には有効ですが、前後の文脈理解や話者の意図を深く把握する必要がある複雑な質問では、対応が難しい場合があります。特に、ルールベースやシナリオ型のボイスボットでは、文脈保持や推論能力が限定的なため、柔軟な応答が困難になることがあります。

また、「それってどういうこと?」といった曖昧な表現や抽象的な問いに対しては、適切な意味解釈や補足質問ができない場合があります。人間のように暗黙の前提や常識を踏まえた推論が難しい点も、課題の一つです。

近年は生成AIを組み込んだAIエージェント型ボイスボットにより、意図補完や深掘り質問への対応が進んでいますが、すべての高度な問い合わせを自動で処理できるわけではありません。そのため、難易度の高い問い合わせについては、適切に有人対応へ切り替える運用設計が重要となります。

音声情報だけでは十分に伝わらない場合がある

音声のみのコミュニケーションでは、対面やビデオ通話のように表情や身振り手振りといった非言語情報を読み取ることができないため、意図が伝わりにくくなる場合があります。特に、複雑な内容や細かなニュアンスを含む説明では、理解に差が生じやすくなります。

また、図表や資料、画面共有といった視覚的な補助情報を活用できない場合、手順や構造の説明が難しくなり、情報伝達に限界が生じます。音声のみで完結させる設計ではこうした課題があるため、事前に補完手段を用意しておくことが重要です。

これらの制約を踏まえ、次項では注意点を補うための対策について解説します。

 

ボイスボット導入時に必要な2つの対応

ボイスボット導入時には、先述した注意点を踏まえ、次の2つの対応を組み合わせて設計することが重要です。

  • 有人対応と柔軟に組み合わせる(ハイブリッド運用)
  • 継続的に最適化を図る(AIトレーニング・チューニング)

顧客が高度な質問をした場合や、ボイスボットの回答だけでは理解が難しい場合には、速やかにオペレーターへエスカレーションする仕組みを設けることで、問題の未解決や顧客満足度の低下を防げます。

また、運用後の通話ログや問い合わせ内容を分析し、顧客ニーズを詳細に把握することで、AIに学習させるべきフレーズや辞書登録、解決率を高める応答シナリオが明確になります。こうした継続的な最適化により、ボイスボットの精度と対応品質を段階的に向上させることができます。

ボイスボット導入時の比較ポイント・選び方

ボイスボットの導入を成功させるためには、業務内容や導入目的を整理したうえで、複数の観点からサービスを比較・検討することが重要です。特に、以下の4点に注目して選定しましょう。

  • サポート体制の充実度
  • 自社のニーズとの適合
  • 各サービスの機能と特徴
  • 費用

充実したサポートを重視する場合は、問い合わせ窓口の有無だけでなく、導入時のシナリオ設計支援や運用改善のサポート、エンジニアによる専門的な対応が受けられるかを確認することが重要です。

また、ボイスボットはサービスごとに音声認識のチューニング性、外部システムとの連携可否、管理画面(UI)の使いやすさなど、機能や特徴に違いがあります。自社の課題を解決できる機能が備わっているか、既存システムと連携できるかといった点を事前に確認しましょう。

費用面では、月額数万円で導入できるものから、高機能なプランやオプションにより数十万円以上かかるケースまで幅があります。初期費用や従量課金の有無によっても総コストは変わるため、費用対効果を正しく判断するためにも、導入前に見積を取得することが重要です。

その他の比較ポイントについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。

 

まとめ

AIによる音声対応を行うボイスボットを活用することで、オペレーターの負担が減りコールセンターの人材定着率向上が見込めます。ほかにも、業務の効率化、顧客満足度向上なども期待できるサービスです。その他にもメリットがあり、導入する企業や自治体は増えています。
ただ、ボイスボットにすべてを任せられるわけではありません。フレーズの再学習、応答シナリオの再検討など、定期的なメンテナンスが必要な点には注意しましょう。
また、導入する際は、自社のニーズを満たせる機能があるかどうかや費用面などをチェックし、自社に合っているサービスを選びましょう。

この記事の推奨者

菊池 寛子
菊池 寛子
新卒から10年以上ダイレクトマーケティング業界でフルフィルメント、通販事業の業務設計を担当し基幹システム・CRM構築などのPjtに参画。その後BPO業界に転身し、企業向けサービス、ソリューションの企画・開発を経験。現在はオウンドメディアでのデジタルマーケティングの運用を行っている。
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