コンタクトセンターのアセスメントとは? 必要性や成功のポイント

 2025.05.21 2025.04.11

コンタクトセンターは、顧客対応の最前線として重要な役割を担っています。しかし、運営状況を見直さないまま日々の業務を進めていると、効率低下や顧客満足度の低下といった課題が見過ごされることがあります。こうした状況を改善するために必要なのが「アセスメント」です。本記事では、アセスメントの必要性やメリット、策定方法などについて詳しく解説します。

コンタクトセンターのアセスメントとは? 必要性や成功のポイント

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アセスメントとは?

アセスメントとは、評価や査定といった意味を持つ言葉です。語源は英語の「assessment」であり、対象を客観的に評価し、その価値や状態、問題点などを明らかにすることを指します。ビジネスシーンにおいては、人材、リスク、品質など、さまざまな分野で活用されています。

アセスメントの概要については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

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ビジネスシーンでのアセスメントの種類

ビジネスシーンでは、「アセスメント」という言葉はさまざまな文脈で使用されており、組織の成長や発展に貢献する重要な役割を果たします。ここでは、代表的なアセスメントの種類として、「人材アセスメント」「リスクアセスメント」「品質アセスメント」の3つについて、それぞれの概要と目的を解説します。

人材アセスメント

人材アセスメントとは、人材の能力や適性を評価し、適切な配置や育成に役立てるための手法です。従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整え、組織全体のパフォーマンス向上を目的としています。

人材アセスメントは、第三者に委託する方法や専用ツールを活用する方法が一般的で、主に採用や人事異動の際に用いられます。具体的には、面接や筆記試験、適性検査など、多角的な手法を組み合わせることで、一人ひとりの強みや弱みを客観的に把握し、最適なポジションを見極められます。さらに近年では、AIを活用した人材アセスメントツールも登場しており、より効率的かつ客観的な評価が可能です。

リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、事業活動に伴うさまざまなリスクを特定し、評価する手法です。職場には、災害が発生していなくても、潜在的な危険性や有害性が潜んでいる可能性があります。これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることがリスクアセスメントの目的です。

リスクアセスメントでは、リスクの発生確率と影響度を評価し、対策の優先順位を決定します。例えば、製造業では機械設備の故障や作業者のミスによる事故のリスクが潜在的に存在します。事前にリスクを洗い出し、安全対策を徹底することで、事故を未然に防ぐことが可能です。また、情報セキュリティ分野では、情報漏洩や不正アクセスのリスクを評価し、適切な対策を講じます。

品質アセスメント

コンタクトセンターやコールセンターなどで特に重視されているのが、品質アセスメントです。外部委託などを通じてオペレーターの応対品質を評価し、改善することが目的です。

具体的には、顧客との会話内容や対応方法、顧客満足度を分析し、改善点を特定します。応対品質の向上は、顧客満足度の向上につながり、それが顧客ロイヤルティの向上や売上増加といった成果をもたらします。また、品質アセスメントは、オペレーターのスキルアップやモチベーション向上にも効果的です。

業界ごとのアセスメントの定義

アセスメントとは、対象を客観的に評価し、その価値や状態を明らかにする行為を指します。ただし、その意味合いや対象、目的、実施方法、評価基準は業界によって異なります。ここでは、コンタクトセンター、医療・看護分野、介護・福祉分野におけるアセスメントの定義について解説します。

コンタクトセンターにおけるアセスメントの意味

コンタクトセンターにおけるアセスメントとは、センターが掲げる目的を達成するために現状を分析し、評価するプロセスです。目的は主に、顧客満足度の向上、応答率の改善、売上向上などが挙げられます。これらの目的を実現するために、現状の課題を多角的に分析し、客観的な指標に基づいて評価を行います。最終的に、改善のための具体的なアドバイスを提示し、実践します。現状を正確に把握し、課題を明確化することで、より効果的な改善策を導き出すことが可能です。

例えば、コンタクトセンターの顧客満足度が低く、その改善を目的とする場合、オペレーターの応対品質、業務効率、システム環境、教育体制など、多岐にわたる項目を定量的および定性的に評価します。この分析結果に基づいてセンター全体を改善することで、顧客満足度の向上の効果が期待できます。

医療・看護分野におけるアセスメントの意味

医療・看護分野におけるアセスメントとは、患者の病状改善を目的に、身体的、精神的、社会的な側面から多角的に分析・評価する手法です。問診などの主観的データから検査結果といった客観的データまで、さまざまな情報を総合的に判断し、患者の健康状態やニーズを把握します。そして、それらの情報を基に適切な医療・看護計画を立案し、実践します。

アセスメントは、質の高い看護を提供する重要な基盤です。患者一人ひとりに合わせた個別的なケアを実現し、適切な医療・看護の提供や患者の安全を確保する役割を果たします。

介護・福祉分野におけるアセスメントの意味

介護・福祉分野におけるアセスメントとは、利用者のニーズや意向、生活環境、社会的背景などを的確に把握し、適切な介護や福祉サービスを提供するための手法です。利用者やその家族との面談や、医療機関の記録、介護スタッフの観察など、さまざまな情報源から情報を収集・分析します。

収集された情報は「アセスメントシート」と呼ばれる所定の様式に整理され、それに基づいて、利用者一人ひとりに最適な介護計画や支援計画が策定されます。アセスメントは、利用者の自立支援や生活の質の向上を目指し、適切なサービスを提供するためにとても重要です。

コンタクトセンターにアセスメントが必要な理由

アセスメントは、コンタクトセンターの課題を洗い出し、より具体的な改善策を導き出すための重要な手法です。ここでは、アセスメントが必要な理由について解説します。

コンタクトセンターの課題を抽出するため

コンタクトセンターにアセスメントが必要とされる主な理由は、現状抱えている課題や弱みを正確に把握し、可視化するためです。コンタクトセンターの業務は多岐にわたり、規模や運営方法が複雑化するほど課題を見つけにくくなります。その結果、問題に気づかないまま運営を続けてしまう場合もあります。また、コンタクトセンターは閉鎖的な環境で運営されることが多いため、他社と比較しづらく、「なんとなく」や「経験則」に頼った意思決定に陥りがちです。

例えば、オペレーターの応対品質が目立ちやすい課題として挙げられますが、それ以外にも業務フローの効率化やシステム環境、教育体制、マネジメントといった見逃されがちな問題も存在します。これらを正確に把握し、データに基づいて課題を洗い出すことが、コンタクトセンターのパフォーマンス向上には不可欠です。

課題の具体的な改善策を見つけるため

アセスメントが必要とされるもうひとつの理由は、課題に対する具体的な改善策を見つけ、実行に移すためです。課題が明らかになっても、それを放置していては状況が改善することはありません。

例えば、顧客満足度が低いという課題に対して、応対品質に問題があるのか、それとも商品やサービス自体に原因があるのかを分析することで、適切な対策が異なります。課題を「見つけるだけ」で終わらせず、具体的な行動につなげるために、アセスメントは欠かせません。

コンタクトセンターのアセスメントでの基本的なステップ

アセスメントはコンタクトセンターの課題を抽出し、具体的な改善策を見つけるために有効な手法です。しかし、実際に導入する際、どのようなステップで進めていけば良いのか迷われるかもしれません。ここからは、コンタクトセンターでアセスメントを行う基本的なステップを解説します。

1. 現状の診断

コンタクトセンターのアセスメントでは、まず、客観的な情報を収集し、現状を正確に診断することから始めます。定量データ(例:応答率、解決率、処理時間、放棄呼率など)と定性データ(例:顧客の声、オペレーターへのヒアリング、ミステリーコールなど)の両方を収集し多角的に分析することが重要です。

このプロセスでは、どのような運用が行われており、理想的な状態との間にどのような隔たりがあるのかを明確にします。業務プロセス、システム環境、人員配置、教育体制、FAQの整備状況など、複数の観点から現状を把握することで、次のステップへの土台が築かれます。

2. 課題の抽出

現状の診断で得られたデータをもとに、コンタクトセンターが直面している具体的な課題を抽出します。例えば、「顧客満足度が低い」「離職率が高い」「応答率が低い」「解決率が低い」「特定の時間帯に放棄呼が集中している」といった具体的な課題を明確にします。

課題を抽出する際には、その課題がなぜ発生しているのか、その根本原因にも着目することが重要です。例えば、応答率の低下が問題となっている場合、その背景にある要因として「人員不足」「オペレーターのスキル不足」「システムの運用課題」などが考えられます。こうした原因を正確に特定することで、より的確な改善策を立案できます。

3. 計画の策定と実行

課題を抽出したら、それらを解決するための具体的な計画を策定し、実行に移します。計画を立てる際には、SMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性のある、Time-bound:期限が明確)のフレームワークを活用し、明確なゴールを設定することが有効です。

また、「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように実行するのか」を具体化した実行計画を策定します。例えば、「離職率が高い」という課題に対しては、離職の理由を詳細に分析し、何が問題なのかを突き止めます。その上で、「研修制度の充実」「労働環境の改善」「キャリアパスの明確化」「評価制度の見直し」といった具体的な対策を立案し、実行することが必要です。

4. 評価と改善

計画を実行した後は、その効果を定期的に評価し、必要に応じて改善を行います。このステップでは、計画の実行で目標がどの程度達成されたかを測定し、新たに発生した課題がないかを確認します。

アセスメントの一連のステップは、一度実施されて終わるものではありません。PDCAサイクル(Plan: 計画、Do: 実行、Check: 評価、Act: 改善)を繰り返し回し、継続的にコンタクトセンターを改善することで、アセスメントの効果を最大化できます。評価結果をもとに計画を見直し、新たな施策を立案することで、さらなる運営の向上を目指してください。

コンタクトセンターのアセスメントを成功させるポイント

コンタクトセンターのパフォーマンスを最大化し、顧客満足度を向上させるためには、アセスメントの実施が非常に効果的です。しかし、単にアセスメントを実施するだけでは、十分な成果を得ることは難しいかもしれません。ここでは、アセスメントを成功に導き、その効果を最大化するためのポイントについて解説します。

全体のプロセスを可視化する

コンタクトセンターのアセスメントを成功させるためには、まず、プロセス全体を俯瞰的に可視化し、理解することが重要です。現状の把握、課題の抽出、計画の策定、実行、評価という一連の流れを明確化し、それぞれのステップで何をすべきかを具体的に示す必要があります。

アセスメントの導入時に特に意識したいのが「氷山モデル」という考え方です。氷山モデルとは、海面上に見える氷山の一部は全体のほんの一部に過ぎず、その背後には水面下に隠れた大きな要因や構造が存在するという考え方です。コンタクトセンターにおける課題も同様で、目に見える表面的な事象(例:応答率の低下)の背後には、隠れた根本原因(例:オペレーターのスキル不足、非効率な業務プロセス、システムの問題)が存在します。

プロセス全体を可視化することで課題の全貌を明らかにし、効果的な改善策を立案する基盤を整えることが可能です。

第三者によるアセスメントサービスを活用する

アセスメントを成功につなげるもうひとつの重要なポイントは、第三者によるアセスメントサービスを活用することです。客観的かつ専門的な視点から現状を分析し、改善策を提示してもらえるため、自社だけで実施するよりも大きな効果が期待できます。特に、コンタクトセンター運営の専門家によるアセスメントは、実績に基づいた具体的な提案を受けられるため、とても有益です。

第三者によるアセスメントには、多くのメリットがあります。業界標準やベストプラクティスに基づいた評価基準を提供するため、自社の強みと弱みを客観的に把握できます。また、課題解決のための具体的なアクションプランがあらかじめ用意されているため、迅速かつ的確に改善活動を進めることが可能です。

さらに、専門サービスでは、応答率や解決率、放棄呼率、エスカレーション率など、詳細な指標を用いて課題を定量的に評価します。そして、顧客の声やオペレーターのスキル、モチベーション、業務プロセス、競合状況などを包括的に分析します。このような評価や分析により、社内では気づきにくい課題を浮き彫りにすることが可能です。

このように、第三者の客観的な視点を上手に活用することで、コンタクトセンターの課題解決をより加速させられます。

コンタクトセンターの運用状況を自己診断したい場合は、下記の記事もご覧ください。

まとめ

アセスメントとは、対象を評価し、問題点などを明確にする手法です。「人材」「リスク」「品質」といったさまざまな領域で活用され、「医療・看護」「福祉・介護」などの分野において異なる意味と効果を持ちます。

特にコンタクトセンターにおけるアセスメントは、顧客満足度の向上や業務効率化、さらには企業全体の成長にも寄与する重要な手法です。現状の課題を的確に把握し、効果的な改善策を計画・実行するためには、プロセス全体を「見える化」し、必要に応じて第三者の専門的な視点を取り入れることが求められます。

アセスメントは一度実施して終わりではなく、継続的に改善を繰り返していくことが必要です。アセスメントを効果的に活用し、顧客満足度の高いコンタクトセンターの実現を目指しましょう。

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