一次情報×AIで加速する顧客理解と事業成長

 

コンタクトセンターの通話データは、これまで活用が難しい領域とされてきました。しかしAIの進化により、膨大な音声から新たな顧客理解を導き出し、売上拡大へとつながる取り組みが現実のものとなっています。本記事では、音声データ活用の最新動向と課題、そしてコンタクトセンター発の成長戦略を解説します。

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なぜ音声データは十分に活用されてこなかったのか

これまで音声データの活用が進みにくかった理由の一つは、その「情報量の多さ」にあります。数分から数十分に及ぶ通話には膨大な情報が含まれ、人手での処理や分析は現実的に困難でした。そのため、データ化の際には一部を要約するか、CRM(Salesforceなど)に入力することで簡略化されていました。

しかし、このやり方には大きな限界があります。オペレーター自身の気づきや判断に依存するため、バイアスがかかり、顧客が語った背景や本音が削ぎ落とされてしまうのです。つまり、音声という豊かな情報のごく一部しか活用できていませんでした。

AIの進化は、この壁を乗り越えつつあります。通話全量をフラットに処理し、顧客の声をありのままデータ化できるようになったことで、これまで見えなかった顧客インサイトを引き出せるようになりました。今後は、一次情報である音声をAIで顧客理解に変換し、それを売上や成長に結びつけられる企業が大きく伸びると考えられます。

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周辺情報から見えてくる顧客像

AIで全量を分析すると、顧客は商品に関する直接的な質問や要望に加えて、日常の課題や職場環境、サービスの利用状況など「周辺情報」を自然に語っていることがわかります。従来の入力作業ではこうした情報が切り捨てられがちでしたが、AI分析により、顧客像や利用シーンが立体的に見えてきます。

この多面的な理解は、CRM施策のパーソナライズを強化するだけでなく、商品開発やオペレーター・営業担当者のトーク標準化、さらには店舗接客の改善にもつながります。顧客の声を点としてではなく面として捉え、全社的な価値に展開できることが大きな特徴です。

当社が取り組む音声データ活用の実例

当社は既に複数のクライアントと実案件を進めており、具体的な成果が生まれています。ここでは代表的な事例を三つ紹介します。

事例① 消費財メーカーの商品開発への活用

ある大手消費財メーカーでは、コンタクトセンターの通話を全量分析し、顧客が日常生活の中で抱える課題や利用シーンを抽出しました。その結果、従来の市場調査では得られなかった顧客インサイトが抽出され、商品企画への活用が期待されています。顧客の声が新しい商品企画の出発点となる事例です。

事例② 化粧品通販における広告クリエイティブ改善

別のクライアントである化粧品通販企業では、顧客との会話から「購入理由」や「期待する効果」に関する言葉を分析しました。これにより、広告コピーやビジュアルの表現を顧客の本音に合わせて修正。広告効果やCVR(コンバージョン率)の改善に向けた示唆が得られています。

事例③ アパレル企業の店舗接客品質向上

さらにアパレル企業では、店舗接客の音声を分析し、接客の流れや顧客の反応を定量化しました。そこから「好印象を与える接客パターン」を抽出し、全店舗で標準化する取り組みを進めています。接客の質を底上げしつつ、店舗接客標準化とCRMへの新たな項目追加に活用した事例です。

これらの事例は、音声データ活用が構想段階を超えて、実際の取り組みとして進んでいることを示しています。

音声データ活用の課題とマネジメント

可能性が広がる一方で、音声データ活用には課題もあります。

個人情報保護とマスキング

顧客の声には個人を特定できる要素が含まれるため、匿名化やマスキングは必須です。

生成AI利用のガイドライン

生成AIは強力な分析ツールですが、誤解や誤用を防ぐためルールが必要です。その中で、クライアントのデータがAIモデルに再学習として利用されない仕組みは当然必要であり、安心して活用できる環境づくりが欠かせません。

データマネジメントとコストの最適化

音声データは容量が大きく、そのままAIで一括処理しようとするとクラウド費用も人件費も膨大になります。そのため、段階的にデータを加工し、分析の粒度を調整することでコストを抑える工夫が欠かせません。適切な順序や方法で処理を設計する「データマネジメントの体制やノウハウ」が、実運用の成否を左右します。

プロフィットセンター化とヒトトナリAIの役割

音声データという一次情報を活用することは、コンタクトセンターを「効率化の場」から「成長の拠点」へと進化させる試みです。顧客の声を起点にマーケティング、営業、商品開発へと波及させることで、売上拡大に直結する取り組みが可能になります。

当社が提供する「ヒトトナリAI」は、この流れを支えるソリューションです。通話ログを全量分析し、「生活シーン」「感情」「ニーズ」といった多面的に顧客を理解できる仕組みを備えています。また、個人情報のマスキングやクライアントごとの運用ルール設計を前提とした導入が可能で、安心して利用いただけます。

さらに私たちは、実際のクライアント案件を通じて「音声データの加工手順」「コスト最適化の方法」「分析から施策への落とし込み」といったノウハウを蓄積してきました。ヒトトナリAIは単なる解析ツールではなく、一次情報である音声データを「事業成長の資産」へと変えるための基盤です。コンタクトセンターをプロフィットセンター化する実践的な解決策として、今後も進化を続けていきます。

まとめ

音声データはこれまで活用が難しい領域でしたが、AIの進化により全量を分析し、顧客理解や売上拡大へとつなげられるようになりました。消費財メーカーの商品開発や化粧品通販の広告改善、アパレル店舗接客の標準化など、すでに実績も積み上がりつつあります。今後は課題を克服しながら、コンタクトセンターを利益創出の拠点へと変えていくことが、企業成長の重要なカギになるでしょう。

執筆者紹介

藤縄 義行 氏
藤縄 義行 氏

株式会社シンカー 代表取締役社長
2005年サイバーエージェントに新卒で入社し、11年間デジタルマーケティング業務を経験。2016年に独立し、顧客データ分析のコンサルティング業務に従事した後、2017年7月シンカーを3名で創業、取締役に就任。事業責任者として様々な企業のデータマーケティングを支援した後、2023年7月に代表取締役社長に就任。
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