コンタクトセンターにおけるDXを考える

 2024.12.27 2022.02.22

この記事を執筆するにあたって”DX”に関してどのような記事が出ているかネット上の様々なサイトを確認したところ、広義なDXに関する記事が多くコンタクトセンターにおけるDXを考察している記事は少ないように思いました。

本記事では一般的な”DX”の解釈とそれを踏まえた上でのコンタクトセンターにおけるDXを考えたいと思います。

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広義なデジタルトランスフォーメーションとは

一般的なDXの定義としては「企業を超えて社会の仕組みや生活そのものを良い方向に変えるようなデジタル化」と解釈されている事が多いように思います。

わかりやすく言えば「デジタル技術によって以前と全く違う仕組みが導入された便利な社会」というイメージでしょうか。

例を挙げると映画のチケット購入がネット上で出来るようになったり、モバイルSuicaのように携帯一つで乗車券購入、支払いが可能となる仕組みが分かりやすいかもしれません。

単にデジタルやITによって業務の効率化を行ったり、改善を図る事はDXではなくデジタライゼーション、デジタイゼーションと表現されます。
デジタルトランスフォーメーションは一般消費者の”顧客体験”が変わるかどうかが重要なポイントになってきます。

  • デジタイゼーション・・・業務プロセスをそのままに、アナログ作業をデジタル化する
  • デジタライゼーション・・・デジタル化の結果、或いはその過程で業務プロセスも変わり最適化される
  • デジタルトランスフォーメーション・・・デジタル化によって企業や社内の仕組みが変わり、一般消費者の体験が変わる

DXに関する定義や記事は様々ですがこのような定義が一般的な解釈に一番近いのではないかと考えます。

単なるデジタル化(デジタイゼーション)が必ずしもNGという事ではないのですがデジタル化によって「顧客体験をどう変えるのか?」という最終的なビジョンやイメージがあった方がより最適なアプローチであると言えるのではないでしょうか。

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なぜDXが必要と言われているのか

現在DXが推進されている背景には経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』が影響しています。こちらのレポートでは「2025年の崖」と称して既存のシステムが2025年までに老朽化、ブラックボックス化していくことが示唆されています。

【DXレポートの概要】

  • IT人材が不足することで既存システムの保守運用が賄えなくなる
  • WindowsやSAP/ERPなどのサポート終了によりシステムの見直しが必要となる
  • 2025年までにこれらを踏まえたデジタル変革が必要

各企業におけるシステムは老朽化が進んでおり、個別のカスタマイズや追加改修などが積みあがった結果、簡単には手が入れられない状態に陥っています。これらがWindowsやSAPのサポート終了などの技術的な変化の際に足かせとなり大きな事業影響を及ぼす事が示唆されています。
私も様々な企業の担当者の方と商談を行っていますが、何年も前からある基幹システムで簡単に改修ができないという企業はよくあります。こういった企業はまさにこの2025年の崖に真正面から当たってしまう予備軍と言えるかもしれません。

DXレポートはこれ以降、「 DX レポート2」「 DX レポート2.1」と追加、更新されており、コロナ禍によってビジネス環境が急速に変化した際に各企業が適応できるのかが明確になったとされています。コロナ禍で在宅ワークがスムーズに進んだ企業や業務はDXが進んでいたと言っても問題ないでしょう。逆にコロナ禍でも出社し今まで通りの業務が必要だった、という企業や業務は根本的な業務のデジタル転換、発想の転換が必要とも言えます。

DXの推進には企業のトップが危機感をもって変革するリーダーシップを持つことが重要ですが、このレポートではより具体的なデジタル化についても触れられておりDXに向けたの最初のステップとして以下のような内容が記載されています。

  • 業務環境のオンライン化(在宅、リモートワーク対応)
  • 業務プロセスのオンライン化(SaaSを利用したデジタル化、OCR、クラウドの導入など)
  • 従業員の安全・健康管理のデジタル化(活動計などによる健康管理など)
  • 顧客接点のデジタル化チャットボット等による電話応対業務の自動化)

これらは単体で考えるとどうしても単なるシステムリプレイスになってしまったり、新しいシステムの導入になってしまいがちです。本質的なDXは社会の仕組みや顧客体験が変わるかどうかであることを念頭におきつつ、これらのデジタル化をひとつずつ推進していくことで本質的なDXへ一歩づつ近づいていく事が重要です。

コンタクトセンターが向かうDXとは

コンタクトセンターやコールセンターはどのようなDXへ向かうのでしょうか。
社会の仕組みや顧客体験が変わったコンタクトセンターとはどんな姿か、可能性をあげればきりがないわけですがいくつかのパターンを考えてみたいと思います

【電話番号の無いコールセンター】

DXが進んだ先には問合せ先の電話番号が存在せずウェブ上や製品そのものと会話してサポート・完結するカスタマーサポートという形があるかもしれません。例えばPCや冷蔵庫が故障した際には、そのものに話しかけて修理や故障の診断を行ったり、WEBサイト上にAIエージェントが待機していてチャットや音声で課題を解決するというような事が可能となるかもしれません。

【完全無人のコールセンター】

現在自動応答は非常に注目されているソリューションです。ボイスボットやチャットボットで回答できる範囲が広がっていった先にはほとんどの問合せを無人で回答できるようになり、さらには人間不在のコールセンターという形も可能となるかもしれません。

【雇用しないコールセンター】

採用や教育がデジタル化された先には現在のような大量に人を雇用して就業するというコールセンターの形からフリーランス中心の業務委託型コールセンターに発展していくかもしれません。
スマホ一つあれば必要な研修やOJTができ、いつでも電話応対業務ができるというようなレベルまでDXが進めば雇用形態そのものを変える事は現実的になるでしょう。

これらはあくまで例ではありますが技術の進歩や業界全体でのデジタル化の進み方、そして消費者環境の変化などによって最終的なDXの向かう先は変わっていきます。

コンタクトセンターDX最初のステップ

DXの推進に向けて具体的に何から行ったら良いか?先ほどご紹介したDXレポートにも取り上げられている内容を元にコールセンターにあてはめてみたいと思います。

【業務環境のオンライン化】

まず業務環境のオンライン化ですが、在宅環境でコールセンター業務ができる環境、インフラの整備が挙げられます。クラウド型のPBXの導入で在宅環境で電話が取れる、業務ができるという環境は構築する事が可能ですが、実際の電話応対業務だけではなく採用面接から研修、OJT、着座までをすべてリモートで完結できるようなフルリモートの形に一つずつ運用とシステムを変えていく事はサステナブルなデジタル化と言えます。採用管理の仕組みやオンラインでの面接、それを管理するシステムの刷新・導入や研修のための動画コンテンツなどを準備していくことになります。

【業務プロセスのオンライン化】

業務マニュアル、FAQなどがまだ紙で管理されている業務は驚くほど多いのが現状です。
業務のデジタル化でまず最初の踏み絵となるのが”ペーパレス”でしょう。

一通りのマニュアル、資料などがデータ化/デジタル化できた段階ではクラウド型CRMシステムを導入し応対データの記録とワークフロー、エスカレーション管理等のシステム化を行ったりFAQデータを一元化する等のアプローチが有効でしょう。これらのオンライン化はどのような変化においても「やっておいて損はしない」類のデジタル化と言えるのではないでしょうか。

【従業員の安全・健康管理のデジタル化】

災害発生時などの安否確認についてシステムを導入し、状況をいち早く収集できるようにする・可視化する事は問題発生時のアクションを早めます。
また、従業員の健康管理システムの導入は在宅環境で顔の見えない従業員の状態を把握するための一つの指標として活用できます。当社でも健康管理をアプリ上で記録し状態トレースを行うような試験的運用を行っていますがアプリの判定結果と実際の状態は比較的マッチしているような印象があります。

【顧客接点のデジタル化】

DXレポートでは具体的に「チャットボットによるWEB接点の強化」が挙げられています。チャットボットの導入はWEBという比較的顧客が目にしやすい場所にサポートの仕組みを導入することになりユーザーの利便性は高まります。これに加えて昨今ではボイスボットによる業務プロセスの自動化が盛んに検討されています。夜間やオペレータが不足する時間帯、或いは個人認証を行ったり基幹システムとの照会を行う契約手続き変更などの業務では在宅環境でシステムへアクセスされるよりも自動化してしまったほうが良いという判断に至るケースも多くなっています。

まとめ

コンタクトセンターにおけるDXがどのようなものか現時点での考察を踏まえ記事にしました。

DXは顧客体験や社会の仕組みそのものが変わるような大きな変化であり簡単には実現し得ないものになりますが今後起こるであろう様々な変化に耐えうる為のデジタル化を一つずつ推進していくことが重要です。
1年後、2年後にはまた別の技術要素や環境変化によってDXの目指す形も変わっているかもしれません。

この記事の中で記載しているDXの推進については私たちも積極的にお客様へ導入提案を行っています。

もし興味が湧きましたら関連記事やソリューション紹介を一読頂ければと思います。

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