企業によってCRMシステムの定義はさまざまですが、コンタクトセンター高度化の鍵となる、関連アプリケーション郡をコンタクトセンターCRMと呼びます。コンタクトセンターCRM機能は多様化し、応対履歴はもちろん、多様なチャネル、ナレッジマネジメント、蓄積されたデータ活用なども含みます。しかし、一般的なCRM導入では、コンタクトセンターのニーズは軽視され、導入手法も伝統的なシステム開発が用いられ、センター高度化のボトルネックになっています。ここでは、コンタクトセンターCRM導入成功のポイントを解説します。
どの製品を選ぶべきか
コンタクトセンターCRMに最適な製品はどのように選ぶべきでしょうか。一言で言えば、従来のシステム開発の発想から脱却し、市場で多く利用されている勝ち馬製品を選び、最先端のクラウドサービスを利用することです。他社と同じ製品を使うと差別化ができないのではないか?自社業務は特殊で、汎用製品は合わないのではないかという声をよく聞きます。しかし、コンタクトセンターCRM領域では、主要な機能は共通しており、むしろどうやって利活用するかが重要です。つまり、利点を最大化するために、導入アプローチにこだわることが重要になります。製品の検討ステップを簡単に説明します
- あるべき姿を考える
現状システムの課題や、詳細機能の是非にこだわらず、実現したいあるべき姿を描きます。市場の変化、顧客行動の変化、オムニチャネル対応へのニーズ、自動応答の強化、センター業務標準化など、どのようなコンセプトでセンターを高度化するかが重要です。並行して、センター業務改善ニーズは、既存システムへの改善要望は最小限にして、ナレッジ支援、柔軟な検索、多様なレポートやダッシュボードなど、生産性や品質を抜本的に変えるテーマを選び、現場の知見を取り入れて具体化します。そのコンセプトを実現可能な製品を候補とします。 - 機能討議は最低限にする
あるべき姿がきまったら、コンタクトセンターCRMの候補に対して、基幹システムとの役割分担や連携、業務に必須の重要な機能に関する討議をします。現場主導の導入では、細かい機能論議を永遠にしている例がありますが、コンタクトセンター高度化に必要な業務機能は大まかには決まっているので、詳細討議は最低限にします。パラメータによって柔軟に機能を変えられる製品やクラウドサービスを選択しさえすれば、詳細機能の調整は、後からいくらでも対応できるからです。 - 価格だけにとらわれない
いい製品は価格が高いのが一般的ですが、価格だけを選定基準にしてはいけません。コンタクトセンターの高度化を実現するには、マルチ・オムニチャネル、業務フロー管理、ナレッジ管理、外部 FAQなど多様な機能が必要になり、機能ごとに別々の仕組みを導入すると、データが分散し、業務も分断され、導入費用も利用料も割高になります。あるべき姿をもとに、費用対効果を考えて、勝ち馬製品を利用した方がメリットが多いのです。勝ち馬製品は不具合改善も早く、機能強化や将来ニーズへの対応も期待され、潜在的コストを削減し陳腐化リスクも軽減します。当社では現在、新規コンタクトセンターCRMとして圧倒的なシェアを誇る、Salesforce Service Cloudを第一の選択肢とし、公式ソリューションとして導入や保守にコミットしながら、さまざまな実績を有します。
どの製品を選ぶべきか
製品選択はシンプルにする一方で、コンタクトセンター高度化の成功には、そのための最適な導入や保守のアプローチを用います。システム開発というよりはむしろ、システム利活用し、使い込むことによって業務の最適化をしながらあるべき姿を実現するための、アプローチを紹介します。
ウォーターフォール手法
システムを導入するには、いろいろなアプローチがあります。伝統的な手法は、ウォーターフォール手法です。やりたいことを要望としてまとめ、ビジネス要件、機能要件を定義し、定義した機能を実現するために、クラウドサービスの基本機能と追加開発機能組み合わせて、システムを開発し導入します。この方法では、新しいチャネル、業務、仕組みの活用イメージがわかない段階で要件定義が実施され、それにもとづき開発が行われます。そのため、課題は一部解決するが、既存システムと似た仕組みが開発され、 既存システムの印象に引きづられて、従来機能維持のための余計な追加開発増えます。 将来のバージョンアップメリットも享受できなくなります。稼働後の保守は、障害やバグ対応が中心。運用の課題や最適化のために機能修正・追加をするには、都度見積りとなります。バージョンアップのたびに追加開発機能に不具合が発生、その防止のためのテストや修正に多くの工数が発生します。 新規の魅力的な機能が使われず、新しいシステムを導入した意味がなくなります。
システムアジャイル
この問題を解決するために、システムアジャイルという手法が用いられます。要望や要件定義の段階で、クラウドシステムによってプロトタイプを作成、画面を見て、機能を触りながら討議することによって、より現実的な要件をまとめることができます。一方で、いったん要件がまとまったら、あとはウオーターフォール手法と同じなので、設計フェーズ以降保守も含めて、同じ課題を抱えることになります。
業務アジャイル
それを解決するのが、当社が提唱する業務アジャイル手法です。利用するクラウドサービスは、あるべき姿にもとづき、大まかな機能の実現性が既に確認さてれています。それを踏まえて業務を詳細に落とし込み、高度化の方向性を大枠で決め、業務知見を利用してプロトタイプシステムを作るのです。そのプロトタイプシステムを、を分析、設計、構築フェーズを通じて、段階的に発展させることによって、業務と機能を一体化させながらシステム導入を進めます。これによって、ユーザは新しいシステムのイメージを掴み、機能の良し悪しではなく、業務の課題を解決するために、新しい仕組みをどのように利用したらいいかを明確に理解し討議することができます。決定事項はシステム設定に反映され、未決定事項も含めてアイデアやコメントはすべて管理されます。システムが完成したときには、コアメンバーはすでにシステムに慣れているので、トレーニングもスムーズで、業務遂行における大きな課題が発生しません。稼働後の保守は、障害やバグ対応はもちろん、導入時の討議を通じた未決定項目や、一旦決めたが運用してみたら代替案に戻したい項目など、カスタマーサクセスプロセスを通じて、継続的改善をが実施されます。標準機能の徹底活用のため、バージョンアップによる問題も最小限になります。業務アジャイル手法は、コンタクトセンターの高度化、あるべき姿の実現に最適です。利活用を促進し、業務の課題を解決しながら、高度なシステムが導入にされたセンターではなく、高度にシステムを利活用するセンターが実現します。ただし、この手法を使ってプロジェクトを実施するには、業務知見とシステム専門知識の両方を兼ね備えた人材と、それに応じた専用方法論が必須になります。
システム連携のポイント
業務アジャイルは、コンタクトセンターの高度化に最適な手法ですが、すべての要望が標準機能に対する設定によって実現するわけではありません。その典型的なニーズが、他システム連携です。基幹システムなどを中心として、全社の仕組みと、データ、プロセスでどのように連携するかについては、ウォーターフォール手法を部分的に適用して、きちんとしたシステム開発を進める必要があります。コンタクトセンターCRMと、他システムとの役割分担には主に5つの手法があります。方法2まはた、方法1で業務を始め、必須の連携要件が煮詰まったら、方法2に移行するのが、よく使われます。方法3は、理想的ですが例が少なく、方法4は、実質高度化を諦めるのと同義です。そのため、方法2の代替案として、方法5が使われることもよくあります。
- 連携なしの業務対応
コンタクトセンターCRMと、基幹システムを別々に利用して、業務によって使い分けます。システム開発コスト最小限になり、与件が変化したときにも柔軟に対応できます。 - 必須項目の連携
コンタクトセンターCRMに、多くの業務でつかうための情報を、バッチまはた、リアルタイムに連携します。最新クラウドサービスを使えば、データ取り込みや吐き出し、リアルタイムのAPI連携も効率的に利用可能です。 - マルチクラウド化して全社システム実現
これは、コンタクトセンターCRM以外の、全社機能に対応したマルチクラウドシステムを選択して、一つの製品上に、全社のあらゆる機能を実装することです。総論で言えば、理想的な一元管理の仕組みが実現しますが、さまざまな部門やステークホルダーを対象にした大規模導入が必要で、実現に時間も費用もかかるのと、コンタクトセンター高度化の優先度が下がる傾向があります。 - 基幹システムにコンタクトセンターCRM機能実装
3とは逆に、基幹システムに、応対履歴などの機能を付加して、コンタクトセンターCRMとして利用する場合があります。しかし、コンタクトセンター高度化のための、多彩な機能を、カスタム開発で実装することになり、コンタクトセンターCRMシステムとしてみれば、機能が貧弱なわりに、割高なシステムになります。 - 基幹システムとコンタクトセンターCRM部分機能並用
4のデメリットを保管し、マルチ・オムニチャネル、ナレッジ、外部FAQ、業務フロー管理、レポートダッシュボードなどの機能を、部分的に利用して、基幹系を保管します。2.の統合性にはお取りますが、費用を下げながら、高度化要件にも対応することが可能です。
保守のやりかたを考える
繰り返しになりますが、保守や定着化のやり方も、抜本的に変える必要があります。稼働後の保守はカスタマーサクセスにより、障害やバグ対応はもちろんのこと、業務の視点で高度化・最適化を支援します。やり方は多種多様ですが、主に3つの手法があります。
- チケット制
問題が発生都度、サービスレベルに応じて、設定を変更。 - ポイント制
サイクルを決めて、改善点を合意し、ポイントを消化して計画作業を実施。 - チーム制
専任チームにより、稼働後のサポートや、高度化に向けた改善をプロアクティブに実施。
稼働後直後から安定期にむけて、これらを組み合わせて、カスタマーサクセスを最適化します。また、保守の内製化を希望する場合は、これらに相当するチームを内製するか、もしくは、一定期間外部のカスタマーサクセスを利用した後、そのスキルも引き継ぎを受けて運用を開始します。
導入やカスタマーサクセスのベンダーを選択する
このように、業務アジャイルとカスタマーサクセスを組み合わせ、あるべき姿の実現に向けて継続的改善を実施するには、クラウドサービスの選択以上に、導入や保守ベンダーの選定選定が、導入成功の鍵となります。すべてのサービスを外部に任せるのか?それとも、内製をめざすのであれば、どのサービスをいつから・いつまで外部に委託するか、明確に決めておく必要があります。
システムに強いベンダーは業務に弱く、業務に強いベンダーはシステムに弱いという一般論はありますが、選定段階で、その手法を詳細に討議し比較することで、業務とシステムの知見で、バランスを取れたベンダーを選ぶことができます。また、市場の勝ち馬製品である、最先端のクラウドサービスを選択することで、開発より、業務知見を設定によってどう実現するか?の、利活用知見がより重要になります。
まとめ
コンタクトセンターCRMの機能は多様化し、その導入成功が、コンタクトセンター高度化の鍵となります。しかし、伝統的なウォーターフォール手法を用いると、高度化は失敗に終わることが多いのです。コンタクトセンター高度化の成功には、業務アジャイルと&カスタマーサクセスをあわせて、あるべき姿に向かって、システム導入と継続的改善を推進することが重要です。業務とシステムの知見を併せ持ったベンダーを選択し、内製の方針をしっかり決めて、新しい手法に応じたシステム導入を進めることが成功につながります。
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