コンタクトセンター業務の効率化を図る目的で、音声認識ツールを導入する企業が増えています。音声認識技術の導入により、オペレーターの負担軽減や育成の効率化も図れ、企業はさまざまなメリットを得られるでしょう。本記事では、音声認識の概要やAPI連携でコンタクトセンター業務を効率化するポイントについて解説します。
音声認識とは?
音声認識とは、AIが音声を認識しテキスト化する技術です。従来、ヒューマンパワーで行っていた文字起こしを、AIシステムで自動化できるシステム、といえばわかりやすいでしょうか。
よく知られている音声認識技術には、iPhoneに搭載されているSiriやGoogleのAlexaなどが挙げられます。近年では、音声認識精度が格段に向上し、コンタクトセンターをはじめさまざまな業界で活用が始まっています。
音声認識では、AIシステムが音声を瞬時に分析し、テキストや音声データとして保存する流れが一般的です。近年の音声認識システムには機械学習技術も投入され、認識精度もさらに向上しました。
なお、よく耳にするWeb Speech APIとは、コンピューターのブラウザ上で音声操作を実現できるAPIです。後述する、Google Cloud Speech-to-Text APIやIBM社のWatson Speech to Textも、Web Speech APIです。
主要な音声認識AIとその特徴は?
現在では、無料から有料までさまざまな音声認識AIが存在します。ここでは、今後コンタクトセンターの業務効率化を図りたい方へ向けて、特にシェアの高いAPI連携サービスをピックアップして紹介します。音声認識AIの導入を考えているのなら、特徴を比較しながら検討してみましょう。
Google Cloud Speech-to-Text API
Google Cloud Speech-to-Text APIは、最新のニューラルネットワークアルゴリズムを採用しており、高精度な音声認識を実現しているのが特徴です。Pythonとの組み合わせにより、リアルタイムでの文字変換が可能です。
日本語をはじめ、125以上の言語や方言にまで対応し、日本全国や世界を商圏とする企業に適しています。人の耳では聞きとりにくい癖の強い方言も、きちんと認識してテキスト化できます。これを利用することで、外国語がわからないオペレーターでも、対応範囲が大きく広がるでしょう。
Siri API
Siriは、Apple社が開発した人工知能であり、iPhoneをはじめとしたApple製品に実装されています。Siri APIは、音声制御の仮想アシスタントを構築できます。このAPI連携により、「ユーザーからの質問に回答する」「必要な情報を提供する」といったことが可能です。
無料と有料の料金プランがあり、無料プランは1日30件までしか利用できません。また、速やかなAPI連携を実現するためのドキュメントが用意されているため、初めて導入するケースでも安心です。
Speech To Text(IBM Watson API)
Speech To Textは、IBMがリリースした意思決定支援システム、Watsonの音声認識APIです。日本語のほか、アメリカ英語やイギリス英語、中国語、フランス語など多言語に対応しており、長時間のストリーム音声もテキスト化が可能です。
自ら学習し進化するシステムで、必要な情報をスピーディに取り出すことに長けています。そのため、医療や金融など、専門性の高い分野でも活用しやすいのが大きな特徴です。
AmiVoice
コンタクトセンター向け音声認識システムとして、国内シェアNO.1を誇ります。あらゆる声質や言葉、会話スピードに対応できるだけでなく、ハイスピードでの処理まで実現するツールです。オフライン環境下における音声認識を可能としているのも、特徴と言えるでしょう。
WindowsやiOSなど、各種OSで作動するアプリケーションへの組み込みが可能です。また、強力なノイズ除去技術を実装しているため、場所を選ばずに使用できます。専門用語や特殊な用語も認識し、あらゆる業界で広く活用していけるツールです。
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コンタクトセンターにおける音声認識APIの活用
コンタクトセンターに音声認識APIを導入することで、音声の自動テキスト化やFAQ対応、必要な情報の表示などが可能となり、業務効率化を実現できます。以下、詳しく見ていきましょう。音声を自動的にテキスト化
顧客との電話によるやり取りの内容を、リアルタイムでテキスト化できます。テキスト化した内容はデータとして保存可能なので、応対品質の向上やクレーム対策などに役立ちます。
テキストデータがあれば、顧客からの質問に対してスムーズな対応が可能です。録音した音声をわざわざ聴き直す必要がなく、手間がかかりません。
ツールによっては、特定ワードの抽出機能も備えています。これを用いれば、管理者は、問題のある発言をしているオペレーターを特定し、「どんな言葉を使用すべきでないか・どう言い換えたらよいか」を教えるなど、適宜適切な指導を行えるため、効率のよい育成が実現されます。
FAQ対応
コンタクトセンターには、顧客からさまざまな質問が寄せられます。すべてのオペレーターが、あらゆる質問に対応できる知識を備えていれば問題ありませんが、現実的には難しいでしょう。音声認識システムを導入すれば、顧客からの質問内容をAIが分析し、モニターへFAQのリンクを表示できます。自らリサーチする必要がなくなり、顧客に対しスピーディな対応が可能となるのです。
質問に対しいたずらに時間がかかってしまうと、クレームの原因にもなりかねません。システムを導入すれば、速やかに顧客の知りたいことを伝えられるため、クレームを回避し満足度向上にもつながります。
必要な情報の表示
コンタクトセンターでは、自社の商品やサービスについて問い合わせを受けることも多々あります。このようなとき、経験の浅い新人オペレーターでは、返答につまってしまうことも少なくありません。音声認識システムを導入すると、モニターに必要な情報を自動で展開することも可能です。オペレーターの指示や、顧客の話す内容などをAIが分析し、必要な資料をモニターに表示してくれるのです。これにより、経験の浅い新人オペレーターでも、ベテランと同様のスピードで顧客対応できます。
リアルタイムでの翻訳
日本語話者ではない方から問い合わせがあったとき、オペレーターによっては対応できないケースも生じます。このように各オペレーターの語学力には差があると、顧客の使用言語によってスタッフが交換し合う、といった事態は頻繁に起こるでしょう。
この点の解決策として、音声認識システムによっては、リアルタイムで翻訳できる機能も備えています。さまざまな言語に対応しているシステムもあるため、日本語を話せない方からの問い合わせにも問題なく対応できるでしょう。
自動応答
音声認識システムを用いれば、正しい言葉遣いとイントネーションの音声を作成でき、問い合わせに対し自動応答が可能です。また、音声AIチャットボットによる自動応答機能を持つシステムなら、営業時間外の対応もでき、オペレーターの負担軽減にもつながります。
オペレーターへの自動振り分け
コンタクトセンターによっては、問い合わせ内容に沿って各専門スタッフが対応する、という体制を構築しています。正確な対応を行ううえで、非常に有効な体制です。しかし、まず一般オペレーターが話を聞いたあとで、専門のスタッフへ引き継ぐという手順を踏まねばならないので、どうしても対応に時間がかかってしまうことも少なくありません。
音声認識システムなら、顧客の問い合わせ内容を分析し、適切なオペレーターへの割り振りが可能です。迅速に専門スタッフへ振り分けるため、顧客は長々と待つ必要もありません。クレームを回避し、顧客満足度の向上にもつながります。
まとめ
音声認識APIの導入により、音声のテキスト化やFAQ対応、リアルタイムでの翻訳などが実現できます。コンタクトセンター業務の効率化を図れるのはもちろん、管理側もオペレーターの応対品質を管理しやすくなり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
本記事では、シェアの高いAPI連携サービスをピックアップして紹介しましたが、それぞれに特徴があり費用も異なります。さまざまな部分を比較しつつ、自社にマッチしたものを選んでみましょう。
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