ロイヤルカスタマーとは、企業の売上向上などにつながる企業や商品に愛着を持つ顧客のことです。この記事では、ロイヤルカスタマーの定義や増やすメリット、育成方法などをまとめています。顧客ロイヤルティ向上に役立つツールについても解説します。
ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーとは、利用頻度や売上の多い顧客のなかでも、企業やブランド、商品などにとくに愛着を持ってくれている最上位顧客のことです。ロイヤルカスタマーの定義は「企業や商品に愛着があり、継続して購入・利用している顧客」です。このロイヤルカスタマーと混同されやすい顧客に、「優良顧客」があります。
優良顧客とは、商品やサービスの購入額が大きく、売上に大きく貢献してくれる顧客のことです。優良顧客とロイヤルカスタマーはどちらも売上貢献度の高い顧客ですが、優良顧客はとくに企業やブランドにこだわりがあるわけではありません。もしもほかに気に入った商品が見つかったら他社の商品でも同じように購入して、自社からは離れていってしまう可能性があります。
ロイヤルカスタマーの定義
顧客には「潜在顧客」「見込み顧客」「新規顧客」「リピーター」などの段階があり、その最上位にランク付けされるのがロイヤルカスタマーです。定期コースや長期継続プランなどを利用するだけでなく、その企業のブランドや商品・サービスに「ロイヤルティ(信頼・愛着)」を持つ顧客を指します。単に購買額が高い常連客というだけではありません。「商品・サービスを気に入ってリピートしてくれる」「ライバル企業の魅力的なオファーに乗らない」「知人に紹介してくれる」といった特徴を持ちます。
優良顧客や売り上げ上位顧客との違い
優良顧客は、商品・サービス利用のリピート回数が多く、企業の売上に占める比率も高い顧客です。しかし、購入の動機は企業ブランドや商品・サービスへの愛着とは限らず、競合他社の魅力的な広告を見つければ、そちらを選び、自社の商品・サービスから離れる可能性があります。売上の8割は顧客の2割を占める売り上げ上位顧客で作られることを指す「パレートの法則」がありますが、この中には単に一回の購入額が高かっただけの顧客も含まれるため、ロイヤルカスタマーと一致するとは限りません。このように、優良顧客や売り上げ上位顧客とロイヤルカスタマーとの間には、ロイヤルティがあるかないかという根本的な違いがあるのです。
ただし、優良顧客は少なからず自社の商品・サービスに対し好意的な評価をしている可能性があります。そのため、優良顧客に今後も利用してもらうだけでなく、ロイヤルカスタマーになってもらうように誘導する施策が必要になるのです。
ロイヤルカスタマーを増やすメリット
ロイヤルカスタマーは商品やサービスの売上への貢献度が高いだけでなく、売上の安定や新規顧客の獲得につながるなど、多くのメリットがあります。主なメリットについて詳しく解説します。
売上が安定する
ロイヤルカスタマーはブランドや商品・サービスへの強い愛着や信頼があるため、競合他社に乗り換えるリスクが少なく、長期にわたる売上の安定に寄与することが期待できます。顧客に占めるロイヤルカスタマーの比率を高めることでより安定します。それにより、将来的な収益見込み・経営計画も立てやすくなります。
新規顧客が増える
ロイヤルカスタマーは、自身が企業の商品・サービスに愛着を持つだけでなく、家族や友人、知人などの身近な人にも積極的に勧める役割を担う傾向にあります。また、口コミやSNS投稿などでの発信によって、新規顧客の開拓にも寄与します。使用経験のある消費者の口コミや投稿は信頼度が高いため、ロイヤルカスタマーによる紹介は訴求力が高いのです。多額の広告コストをかけなくても効果的な宣伝が可能になり、将来のロイヤルカスタマー獲得にもつながります。
フィードバックが得られる
ロイヤルカスタマーから得られるフィードバックは、ポジティブな意見だけでなく、より良くなるための改善点を含め、常に質の良い意見をもたらしてくれる可能性が高いです。時には建設的な注文や、厳しいクレームを受けることも、自社商品・サービスの改善には欠かせません。長年にわたってファンとして愛用しているからこそ、企業の開発担当者では思いつかない指摘や改善点を届けてくれることが期待できるのです。
ロイヤルカスタマーの育成方法
では、自社商品やサービスの売上に大きく貢献し、会社経営の安定にもつながるロイヤルカスタマーを増やすにはどうすれば良いでしょうか。ロイヤルカスタマーの育成方法を3つのステップに分けて解説します。
対象となる顧客を定める
ロイヤルカスタマーを育成するには、長期的な視点で戦略を立てることが重要です。また、対象となるロイヤルカスタマーをどのような基準で定義するのかは、企業によって異なります。2カ月に1回購入するといったように購入頻度を重視するのか、1回の購入額が高いことを重視するのか、利用年数を重視するのか、などの基準からロイヤルカスタマーの定義を決め、どのような顧客を大切にしたいのかを具体的に設定します。
顧客が自社の商品・サービスにどの程度の信頼を寄せ、愛着を持っているかを定量化する調査として注目されているのが、NPS(Net Promoter Score:顧客推奨度調査)です。これは、自社の商品・サービスを人に勧めたい度合いを調査し、推奨度を計測する指標です。さらに、NPSと顧客がもたらす収益性の指標を掛け合わせたマトリクスを作成することで、ロイヤルカスタマーにするべき優先ターゲットを見つけることが可能です。
また、顧客の年齢や性別、地域、行動傾向、ライフスタイルといった特性を分類した顧客セグメントの活用も効果が見込めます。売上の高い地域でキャンペーンを開催したり、特定の顧客層が好むキャンペーンを事前告知したりするなど、顧客に最適化したマーケティング活動が実施できるのです。
顧客との接触頻度を増やす
次に、積極的に接触機会を増やすための施策を検討します。自社の商品・サービスがNPCで推奨度が低い場合、例えばカスタマーサポートなど顧客対応の機会が少ないという原因が考えられます。現代の顧客はスマートフォンやタブレット、PCなどを通じて多様な情報にアクセスし、リアルタイム性も重視しています。そのため、従来の電話によるサポートだけでは顧客との関係性が十分に作れず、ニーズの把握やフィードバックを得るのは難しいです。
そこで、ロイヤルカスタマー育成にはメルマガ配信やLINEアプリを利用したプッシュ戦略などによって定期的に情報を配信し、顧客との接触頻度を増やしてエンゲージメントを高める施策が必要です。顧客のニーズを満たす商品やサービスのラインナップをそろえたとしても、購入を促す情報が届けられなかった場合、顧客の興味を引くことができずに忘れられてしまうかもしれません。常に顧客との接点を大事にし、接触頻度を増やすことで商品やサービスの購入頻度や信頼度を高めることが期待できるのです。
顧客体験(CX)を見直す
顧客に自社商品やサービスへの愛着を持ってもらうには、提供する顧客サービスの質を高め、丁寧で誠実なコミュニケーションを図ることで顧客満足度を高めることが有効です。CX(Customer Experience:顧客体験)は、商品・サービスを購入に至るプロセスにおいて顧客が得られる体験を指します。顧客は通常、商品・サービスに興味を持ち、競合他社と比較して情報収集を行い、購入を決定し、その際のサポートやアフターサービスを受ける、といったプロセスを経由します。
商品・サービスそのものに感じる価値はもちろん、一連のプロセスであるCXにおいて顧客の満足度を高めることもロイヤルカスタマー育成に大きく影響します。定期的にお客様アンケートやインタビューなどを実施したり、顧客の行動や心理などを図式化したカスタマージャーニーマップなどのツールを活用したりして顧客評価を更新しつづけることが大切です。そのようにして見えてきた課題を解決していくことで、さらに顧客満足度を高められます。
ロイヤルカスタマー育成のためのマーケティング手法
顧客をロイヤルカスタマーに育成するための効果的なマーケティング手法はいくつかあります。その中でも代表的な「顧客関係管理」「カスタマーエクスペリエンス管理」「OneToOneマーケティング」を紹介します。
CRM(顧客関係管理)
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、顧客情報の管理を行いつつ積極的に関係を構築し、信頼感や愛着を持ってもらうための経営手法です。購買データに基づいて、年齢や性別、居住地、職業などで顧客を分類し、それぞれの属性に応じてダイレクトメールの送付などによってコンタクトを取り、アプローチを仕掛けます。
このような施策を繰り返し行い、効果を改善していくことでより強い信頼関係を結べるでしょう。例えばスキンケアやメイク関連商品の購入回数が多い顧客には、季節ごとにお肌のお手入れに役立つ情報を送ったり、特別キャンペーンに招待したりすることで、いつも自分の興味に合わせた情報を送ってくれるといった好印象を与えられるのです。このようにCRMは長期的な施策として効果が期待できます。
CEM(カスタマーエクスペリエンス管理)
CEM(Customer Experience Management:顧客経験価値管理)は、顧客側の視点に立ち、サプライズ体験や感動、満足感といった顧客の心理的・感覚的な価値にフォーカスして商品・サービスの提供につなげるマーケティング手法です。
CEMに似た概念として、上述のCRMのほかにCS(Customer Satisfaction:顧客満足)があります。これは、顧客の声を基に不満を解消し、不足したニーズを満たすことを実施するものです。CSもCRMもロイヤルカスタマーを育成するのに有効な手法ですが、CEMではまだ顕在化していない顧客のニーズを先回りして充足することで、顧客に予期せぬ感動的な体験を与えることを目指します。このような施策によって顧客に愛着や信頼を持ってもらい、ロイヤルカスタマー化を図るのです。
OneToOneマーケティング
それぞれの顧客に対し、ニーズや購入履歴に合わせて個別にカスタマイズした、最適なアプローチを取る販促活動がOneToOneマーケティングです。インターネット社会で消費者が個人で収集できる情報が格段に増え、個々のニーズは多様化しています。また、SNSの普及により、企業と個人のコミュニケーション接点はLINEやチャット、メールなど、多岐にわたります。
このような条件下において、Cookieなどの閲覧情報の記録などをフル活用して個々の顧客満足度を高める販促活動を行う必要があります。例えば、顧客の嗜好に合わせて送付するクーポンの種類を変えたり、Webページの表示内容を変えたりといった施策を提供します。顧客数に応じた戦略立案や個別対応が必要になる一方で、成約率を高めたり長期的な顧客を獲得しやすかったりするなど多くのメリットが期待できるでしょう。
ロイヤルカスタマー育成に役立つツール
ここまでロイヤルカスタマーを育成する手法を解説しましたが、これは端的に表すと「自社の商品・サービスに信頼・愛着を持ってもらう=顧客ロイヤリティを向上させる」ことに尽きます。これを実現するには、ツールの導入が有効です。顧客ロイヤリティの向上に役立つツールとして、顧客管理を行う「CRMシステム」と営業活動をサポートする「SFA」を紹介します。
CRMシステム
CRMシステムは、CRM(顧客関係管理)を行うためのツールです。顧客がどのようなアクションを起こしたのかを把握し、その情報に基づいて顧客との関係を深める豊富なアクション機能を持ちます。具体的な機能としては、顧客の氏名・性別などの基本情報や購入履歴情報の管理や、顧客をセグメントしたメール配信機能、各顧客の質問内容や履歴を可視化する問い合わせ管理、アンケートフォーム、各種セミナーやイベントを実施するための運用管理、といったものが挙げられます。
CRMシステムを活用することで、営業やサポートなどの各部門が持つさまざまな情報を集約し、共有管理ができるため、顧客管理の効率化とコスト削減が可能です。これにより、顧客が自社にもたらすLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を向上する施策へとつなげられます。
SFA(セールスフォースオートメーション)
SFA(Sales Force Automation:セールスフォースオートメーション)は、日本語では営業支援システムと呼ばれています。営業活動をサポートする働きから、営業の生産性向上、業務改善に役立ちます。SFAは営業活動全般を確認できるため、主に営業部門で担当者が使用するシステムです。
SFAには、「顧客管理」「案件管理」「行動管理」「予実管理」「レポート管理」などの機能があります。「顧客管理」は基本的な顧客情報や顧客ごとの商談履歴などを管理する機能、「案件管理」は現在進行中の案件について進捗状況や詳細情報を管理できる機能、「行動管理」は営業担当者の営業活動におけるアクションとその結果を記録する機能です。
また、営業プロセスごとに予算と実績を比較管理するのが「予実管理」、営業日報や週報などのレポートを管理するのが「レポート管理」機能です。SFAによって営業活動が「可視化」されるため、営業活動の課題を明確にして適切な営業活動を行えます。
顧客との信頼を築くには、ニーズにしっかりと応える必要があります。SFAで管理しているフェーズごとなど最適なタイミングで顧客に対してアンケートをとり、そのアンケートをもとにニーズに合う提案をするのがおすすめです。
ロイヤルカスタマーを育成するには、顧客の声を大切にする必要があります。SFAで利用状況やアンケート内容などを管理し、顧客ニーズを明確にできると顧客に対するFBも可能で、ロイヤルカスタマー育成に向けて効率的に営業活動を行えます。
ロイヤルカスタマー育成に貢献するコールセンター「Bell Standard CX」
企業と顧客を結ぶ働きをしているのがコールセンターです。「Bell Standard CX」のコールセンター業務では、お客様からの商品やサービスについての問い合わせ、サポートなどに高いレベルの対応を提供することが可能です。
「Bell Standard CX」には、電話やチャット、メールによるカスタマーサポート、テクニカルサポート、セールス業務などがあります。顧客がコールセンターを利用した際の満足度を高めるため、高品質のサービスによるCX(顧客体験)が用意されています。コールセンターにより顧客満足度を高められることで、顧客ロイヤルティの創出が可能です。
一般的なスタッフが属人的な対応を行っている従来のコールセンターと比べ、「Bell Standard CX」は、スペシャリストが科学的な成果に基づいた対応を行う新しいコールセンターサービスです。無難な顧客対応ではなく、”感動する顧客体験”を提供。お客様に寄り添って改善の優先度を決めたりサポートしたりなど、各企業のビジネスパートナーとして、クオリティの高い対応を行っています。
まとめ
ロイヤルカスタマーは、優良顧客と似ていますが、売上に貢献しているだけでなく企業やブランドに思い入れのある顧客のことです。ロイヤルカスタマーは商品に愛着があるため、購入後にSNSなどで発信したり改良してほしい点などをFBしてくれたりするなど、企業にさまざまなメリットをもたらしてくれます。
CRM、SFAなどのツールを利用したり、コールセンターによる顧客体験を提供したりすることが顧客ロイヤルティの向上につながります。
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