コンタクトセンターにおける「稼働率」で重要なポイントとは

 2021.02.09  2023.05.17

コンタクトセンター業務の生産性を測るうえでは、いくつかの指標が用いられますが、中でも重要視されるのが「稼働率」です。稼働率を適切に管理することは、コールセンターの顧客満足度向上にも欠かせません。本記事では稼働率の重要性をはじめ、同じくコールセンター業務のKPIである「占有率」や「応答率」との関係などを解説します。

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コンタクトセンターにおける「稼働率」とは?

「稼働率」とは、コールセンターにおけるKPI指標のひとつです。

コールセンターにおける業務時間は、顧客対応にかける「生産時間」と、研修・休憩・ミーティングといった顧客対応以外にかける「非生産時間」に分けられます。業務時間から非生産時間を除き、「オペレーターが実際の顧客対応にかけた時間の割合」が、稼働率です。

稼働率を分析することは、オペレーターの生産性やスキルレベル、業務量に対する受付体制の過不足、離職リスクなどの把握に役立ちます。

コールセンターを円滑に運営していくためには、定期的にこの稼働率をチェックし、目標値から大きく外れているようであれば、何らかの対策を検討することが大切です。また、生産時間と非生産時間のバランスを適切に管理する必要もあります。例えば、午前中に入電数が多いのであれば、研修やミーティングなどの非生産時間を午後に設けるとよいでしょう。

稼働率の算出方法(計算式)

一般に、稼働率は以下の計算式で算出します。

【稼働率=顧客対応時間÷勤務時間】

顧客対応時間には、顧客との通話やチャット、メールに応答した時間をはじめ、保留時間・後処理時間・待機時間などが該当します。

「勤務時間」とは給与の支払い対象となる時間のことで、昼休みやトイレ休憩などはここに含まれません。

業務時間中に研修や指導、面談、ミーティングなどを行えば顧客対応時間が短くなるため、稼働率は当然低下します。新人の多いコールセンターでは、研修に割く時間が長いことから稼働率は低くなりがちです。反対に、ベテランが多い現場では稼働率が高く出る傾向にあります。

稼働率の目標数値

コールセンターの国際的品質保証規格(COPC CX規格)では、稼働率の指標値を86%と定義しています。日本でもこの規格に準じ、80〜85%を目標とするコールセンターが多いようです。

高い稼働率は、「オペレーターが給与時間の多くを顧客対応に割いていること」を示します。しかし稼働率が高ければ高いほどよいというわけではありません。

高すぎる稼働率は、「入電数に対して人員が足りていない状態」を表しているからです。ここには、「オペレーターのスキル向上に必要な教育や研修、業務に欠かせない情報共有が不足している」という可能性まで示唆されています。

教育や業務連絡といった顧客対応以外に割く「非生産時間」が少なすぎると、オペレーターの精神的ストレスやミスの増加につながり、生産性や顧客満足度の低下を招きます。

反対に、稼働率が低すぎる場合、入電数に対して人員が多すぎるか、オペレーターが業務に関係のない無駄な作業をしている(サボり)など、勤怠管理が機能していない可能性があります。

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そのため、80〜85%が一般的に目標とされているのです。

稼働率と共に重要なKPIの指標「占有率」と「応答率」とは

コールセンターの生産性を測る指標には、稼働率のほかに「占有率」と「応答率」があります。どちらも稼働率に関連するKPIであり、これらを組み合わせて分析することで、より詳細なコールセンターの運営実態をつかめるでしょう。

占有率とは

コールセンターにおける占有率とは、顧客対応が可能な時間に対し、オペレーターが実際に顧客対応に従事していた時間のことです。稼働率と占有率は、どちらも顧客対応時間を表す割合ですが、占有率は生産時間のうち、入電待ちを除いて顧客対応時間を算出する点で稼働率と異なっています。計算式は以下の通りです。

【占有率=(通話時間+保留時間+後処理時間)÷生産時間(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間)】

一般に、占有率の許容範囲は76~87%と言われます。こちらも稼働率と同様、高すぎても低すぎてもよくありません。

高すぎる占有率は、オペレーターの不足を意味します。次の電話を取るまでの余剰時間が少ないため、オペレーターは疲労やストレスを感じやすく、対応ミスや入電の取りこぼしを招きます。さらに、占有率の高い状態が続けば、離職率の増加や顧客満足度の低下にもつながるでしょう。

それに対し、占有率が低すぎるときには、オペレーターの余剰が疑われます。一般的に入電の少ない深夜や休日などは、数値が低く出る傾向にあります。しかし、慢性的に占有率が低いのであれば、人員配置を見直さなければなりません。

そのため、接客品質を維持しながらコールセンターを運営していくためには、76~87%が目標範囲となるのです。

応答率とは

応答率とは、コールセンターにおける電話のつながりやすさを表す指標です。入電数に対して、実際にオペレーターが対応した電話の割合を表し、以下の計算式で求められます。

【応答率=対応数÷入電数×100】

応答率の低いコールセンターは、電話がつながりにくく、待たされた顧客が途中で電話を切ってしまう場合もあります。応答率の低さは、そのまま顧客満足度の低下に直結します。場合によっては、顧客がその企業のサービスや商品を利用しなくなってしまう可能性もあるでしょう。

反対に、応答率が高いということは、電話がつながりやすいということです。待ち時間が短いほど顧客はストレスを感じにくく、顧客満足度も高くなります。ただし、稼働率が高ければ応答率も高いかというと、必ずしもそうとは限りません。オペレーターが不足して応答できないコールが多ければ、稼働率が高かったとしても、応答率は下がります。

応答率の一般的な指標は、事故・盗難に関する相談など緊急性が高い場合で97%、それ以外では90%以上とされています。

応答率を向上するためには、「オペレーターを増員する」「一人ひとりの処理スピードを上げる」「過去の入電数のデータを分析して、入電が増える時間帯や曜日を事前に予測し、それに応じて人員を配置する」といった工夫が不可欠です。

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稼働率の管理で重要なポイント

稼働率をマネージメントすることは、接客品質や顧客満足度の向上、人員の定着に関わることを解説しました。ここからは、稼働率を管理するうえで押さえておくべき重要なポイントを見ていきましょう。

オペレーターのステータス管理

通常、コールセンターの稼働率はシステムで測定・管理しますが、実態に即した稼働率を把握するためには、オペレーターのステータス管理を正確に行うことが大切です。

システム上では「通話中」「保留中」「後作業」「休憩中」など、オペレーターのステータスを設定できるようになっています。

よくある失敗は、普段は電話に対応しない管理者のステータスを常に「後処理」状態に設定してしまっているケースです。これは、管理者の後処理時間が異常に長いという集計結果につながり、実際の稼働率との乖離を生じさせます。

また、「オペレーターのちょっとした離席」を、どのステータスに設定して計算したかによっても、稼働率が変動します。より正確な稼働率を導き出すには、ステータス管理のルールを設定し、全体で共有し、オペレーターに入力を徹底させることが重要です。

人数の調整

稼働率を適正化する際は、入電数に応じてオペレーターの人数調整を行う必要があります。

どの時間帯・どの曜日に入電が多いのかは、コールセンターによってさまざまです。コールセンターの管理者は、時間ごとや曜日ごと、月ごとに入電数を細かく分析し、入電数の予測に基づいてオペレーターのシフトを組むといった工夫が欠かせません。

例えば、午後にコールが集中するのであれば、午前中の人員を削減して午後に振り分けるのもよいでしょう。また、オペレーターの経験値やスキルによって、1回の入電処理にかかる時間には差があるため、それらも加味した人員調整が求められます。

非生産時間の活用

待機時間などの非生産時間を有効活用することも考えてみましょう。

コールセンターの業務量は常に一定というわけではなく、1日のうちでも繁閑があります。入電予測によって入電数の少ない曜日や時間帯がわかっていれば、その時間を新人研修や面談、業務内容の変更や追加に関する周知などに使用するとよいでしょう。

オペレーターへの配慮

慢性的に稼働率が高い状態は、オペレーターに強いストレスと疲労感をもたらします。稼働率が高ければ非生産時間を削られ、教育や情報共有の時間も十分に確保できなくなるでしょう。

また、入電が途切れない状況だけでなく、待機が多すぎる状況や、自分ばかりが電話を取っているという不平等感も、オペレーターにはとってストレス要因のひとつです。

オペレーターのストレスや負担を軽減するには、まず人員配置を適正化することが第一です。そのうえで、「適切な評価制度を整備する」「在宅コールセンターをはじめとする柔軟な働き方を採用する」といった工夫が求められます。

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まとめ

稼働率は、コールセンターの応対品質と顧客満足度に直結し、さらにはオペレーターの離職率にも影響を及ぼします。コールセンターの品質を保ちながら生産性を高めていくうえで、稼働率は高すぎても低すぎても上手くいきません。管理者は、人員配置の見直しや非生産時間の活用などにより、稼働率を適切な値に維持することが大切です。

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