コンタクトセンターの在宅勤務の導入メリットとデメリット

 2021.02.16  2024.05.13

新型コロナウイルスの感染拡大と働き方改革関連法の施行もあり、多くの企業で在宅勤務の導入が進んでいます。しかし、コンタクトセンターの在宅勤務導入率に限っては、決して高いとは言えません。そこで今回は、コンタクトセンターを在宅化するメリット・デメリットについて解説します。

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コンタクトセンターにおける在宅勤務(テレワーク)化の現状

近年、従来の働き方が見直され、テレワークへの関心が高まっています。その背景にあるのは、働き方改革関連法の施行と、新型コロナウイルスの感染拡大です。2019年4月に働き方改革関連法が施行され、長時間労働の是正や多様で柔軟な労働環境の構築が求められるようになりました。そして、2020年の新型コロナウイルス感染拡大も重なり、多くの企業がテレワーク導入を開始しました。

パーソル総合研究所が行った調査によると、2020年3月の時点で13.2%だった正社員のテレワーク実施率が、4月の緊急事態宣言発令後は27.9%と大きく上昇しています。こうした背景もあり、テレワークのなかでも感染症対策として「在宅勤務」が推奨されています。

新たな働き方として注目されているテレワークですが、欧米諸国と比較すると、国内ではまだまだ導入が進んでいないのが実情です。東京都産業労働局が2020年に行った調査によると、国内企業のテレワーク導入率は全体で25.1%となっています。

また、日本コールセンター協会が発行する「2020年度コールセンター企業実態調査」によると、在宅勤務によるテレコミュニケーターの採用率は28%に留まっており、38%の企業は「今後も採用予定がない」と回答しています。

在宅勤務を導入しない理由として最も多かったのが「セキュリティ管理」の問題です。次点で「労務管理」と「品質管理」の難しさを理由に挙げる企業が多くありました。このような背景から、コンタクトセンターにおける在宅勤務導入率の向上は困難と予測されます。

オペレーターが突然出社できないリスクに備えて

コンタクトセンターの運営は、オペレーターの存在によって成り立っています。従って、万が一オペレーターが出社できなくなった場合を想定した、リスク管理が必要です。コンタクトセンターの在宅化は、こうした事態へのリスクヘッジにつながります。

しかし、コンタクトセンターは顧客情報を扱う部門のため、セキュリティ管理やシステム管理の面で在宅化が困難な業種です。そのため、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、コンタクトセンターの閉鎖を余儀なくされた企業が数多くあります。

また、閉鎖まではいかずとも、感染が疑われる従業員に対して自宅待機を命じるケースもありました。オペレーター不足のコンタクトセンターでは十分な対応が困難であり、顧客満足度の低下を招く原因となるでしょう。

オペレーターが出社不可能になるケースは、何もコロナ禍の影響だけでなく、いつでも起こり得る事態です。例えば、2011年の東日本大震災発生時には、多くのコンタクトセンターが運営不可能な状況に陥りました。

企業経営では、こうした不測の事態を想定した柔軟な事業戦略が求められます。コンタクトセンターに在宅勤務を導入すれば、オペレーターが出社できなくなった場合でも、業務遂行が可能です。

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在宅化のメリットとデメリット

どのような物事にも一長一短があるように、コンタクトセンターの在宅化にもメリットとデメリットがあります。ここでは、コンタクトセンターに在宅勤務を導入するメリット・デメリットについて見ていきましょう。

在宅化のメリット

在宅勤務の導入で得られるメリットのひとつは、コスト削減です。オフィスの常駐オペレーターを最小限に抑えることで、オフィスのデスクやチェアが不要になります。

オフィスの必要スペースが削減されるため、コンパクトなオフィスに移転することも可能です。それにより、賃料や光熱費の削減につながるでしょう。また、ペンや用紙といった備品類や、交通費の支給も不要になります。コンタクトセンター運営に関わるさまざまな経費も削減できるでしょう。

人材確保の幅が広がるのも、在宅勤務の大きなメリットです。優秀な人材の確保は、あらゆる企業における重要課題と言えます。どれほど優秀なオペレーターであっても、通勤距離が遠すぎれば雇用は困難です。しかし、在宅勤務が可能であれば、遠隔地に住まう人材の雇用が実現します。

労務管理については、メール対応やチャットボットなどを導入することで、従来と同等以上の生産性を保てるでしょう。さらに、在宅勤務によって拠点が分散されれば、緊急事態におけるBCP(事業継続計画)対策にもなります。

在宅化のデメリット

コンタクトセンターの在宅化で最も懸念されるのが、セキュリティ管理です。顧客情報を取り扱う部門のコンタクトセンターでは、厳重なセキュリティ管理が求められます。しかし、自宅PCでの作業がメインとなる在宅勤務では、オフィスと同等のセキュリティ機能を担保できません。

情報漏えいは、企業にとって最も大切な「信用」の失墜を招きます。セキュリティ管理の最適化は、コンタクトセンター在宅化において今後の大きな課題と言えるでしょう。

もうひとつデメリットを挙げるなら、オペレーターの品質管理が困難になる点です。コンタクトセンターは企業と顧客をつなぐ架け橋となる存在であり、顧客満足度の向上に大きく関与します。

従って、応対品質の向上は何よりも優先される課題です。しかし、在宅勤務では十分な研修やトレーニングの実施が困難と言えます。

加えて、オペレーター同士のコミュニケーションも希薄化が避けられないでしょう。それにより一人ひとりの心理的負担が重くなることも予期されます。こうしたオペレーター個々へのストレス増大も、品質管理を難しくしている一因です。

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コンタクトセンター在宅化の実現に向け検討すべきこと

コンタクトセンターの在宅化を実現するためには、検討すべきポイントが3つあります。それが「勤務体制」「システム・ツール導入」「スタッフへのコミュニケーション」です。ここでは、在宅勤務の導入時に重要となる、3つのポイントについて解説します。

勤務体制

在宅勤務によるメリットを最大限に享受するためには、明確な勤務体制の構築が不可欠です。
在宅勤務では基本的に1人でコミュニケーション、仕事とプライベートでコミュニケーション三昧になりがちです。そのため、労働時間や時間外労働、服務規律や出退勤管理、休憩時間や所定休日など、明確な就業規則を確立する必要があるでしょう。インターネット回線の利用料や、用紙・文具などの備品といった費用負担に関する規定も重要です。

また、在宅勤務ではオペレーター同士のコミュニケーションが希薄化するため、いつでもエスカレーションできる体制の構築も必須と言えます。

そのほか、オペレーターのパフォーマンスを最大化するためには、正当な人事評価制度も欠かせません。労務管理が難しい在宅勤務だからこそ、結果だけでなく業務プロセスを正しく評価できる人事評価制度の構築が求められます。

在宅勤務に必要なシステム・ツールの導入

コンタクトセンター業務を在宅化する際に重要となるのが、システムの導入です。コンタクトセンターの在宅化が普及しない主な要因として、「セキュリティ管理」と「労務管理」の難しさが挙げられます。

そこで、強固なセキュリティ管理を実装したコンタクトセンターシステムの導入が不可欠です。「コンタクトセンターシステム」とは、通話記録の管理や進捗状況の可視化など、あらゆる業務データを一元管理してサポートするプラットフォームです。

コンタクトセンターシステムはさまざまな企業がリリースしており、それぞれ異なる機能や仕様を備えています。主な機能としては、自動音声応答機能やACD機能、通話録音機能や問い合わせ分析機能などがあります。

大切なのは、自社の事業戦略に適したサービスを選択することです。自社にとって最適なシステムを見極め、導入を検討してみましょう。

在宅スタッフへの細かなコミュニケーション

コロナ禍と働き方改革の推進によって在宅勤務が普及するなか、向き不向きの二極化が顕著になってきました。「自宅で業務に集中することで、より高い成果を生み出す人材」と、「自宅での孤独な業務に疲れて、メンタルに支障をきたす人材」に大きく分かれています。

これは優劣の問題ではなく、在宅勤務を苦手とする人もいるという事実を端的に表しています。従って、在宅オペレーターが孤立しないように、環境を整備することも重要な事業戦略と言えるでしょう。

例えば、打ち合わせ環境の整備や定期的な勉強会の開催など、コミュニケーションの場を用意するのも有効な施策です。また、優秀な成績を収めたオペレーターを表彰したり、お客様からの賞賛をフィードバックしたりするなど、モチベーションを高めるための工夫も必要です。コミュニケーションが希薄化する在宅勤務だからこそ、スタッコミュニケーションきめ細やかなケアが必須と言えます。

まとめ

コンタクトセンターは、企業と顧客をつなぐ重要な部門です。コンタクトセンターに在宅勤務システムを導入すれば、万一の事態に備えたリスクヘッジになるでしょう。また、オペレーターの出社が不要になり、拠点運営に関わるさまざまなコストの削減も可能です。自社のコンタクトセンター運営業務に課題を感じている場合は、ぜひご検討ください。

この記事の推奨者

菊池 寛子
菊池 寛子
新卒から10年以上ダイレクトマーケティング業界でフルフィルメント、通販事業の業務設計を担当し基幹システム・CRM構築などのPjtに参画。その後BPO業界に転身し、企業向けサービス、ソリューションの企画・開発を経験。現在はオウンドメディアでのデジタルマーケティングの運用を行っている。
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