RPAによる業務改善は成功するのか

 2022.01.07  村田 健太郎

RPAを活用した業務改善は以前よりも増え、自動化による業務効率化はより身近な存在になってきています。然しながら私たちの組織ではコンタクトセンターソリューションを推進する部署でありながら「RPA」関連の製品・プロダクトを公式ソリューションとしては用意していません。この記事では他のサイト等ではあまり語られないRPAの「デメリット」「失敗」なども踏まえながら独自の見解と視点で解説します。

RPAによる業務改善は成功するのか

RPAは何に使えるのか、RPAとは

私自身はWinActor、NICE、BizRoboといった複数のRPA製品を社内業務に導入した経験がありその良さも悪さも経験し、「何ができるか」ではなく「何に使えるか」を感じています。RPAに関してあまり詳しくない方のためにもRPAがどんな事に使えるのかを最初に少し解説したいと思います。

RPAが使える代表的な作業

  • ウェブサイトや社内システムをブラウザで開き、表示されたデータをExcelにまとめる
  • Excelのデータをウェブサイトや社内システムに入力し登録する
  • 複数のExcelのデータを開き加工する

もちろん細かいところを上げればきりがないのですが基本的にコンタクトセンター業務で使う場合は、上記のような作業、或いはその組み合わせで利用することがほとんどだと思います。
私がWinActorを導入した業務では決まったフォルダにおいてある複数のエクセルファイルを定期的にRPAで見にいき、データを加工・整形し社内システムに1件ずつエントリを行うという作業でした。
このようなエクセルとウェブブラウザ操作を組み合わせて行う業務はこれまでもVBAなどを利用すれば自動化は可能でしたがRPAはVBAの構文を記述する知識が無くとも自動化ができるわけです。

RPAではまず最初に具体的な作業プロセスを明確化します。
どのエクセルファイルのなんという項目のデータをどのような形式(日付、数値、文字列など)で取り扱うのか、そのデータは何行目の何列目から開始するのか、というようにかなり細かく条件を明らかにする必要があります。データエントリするウェブサイト側もURLだけでなく、そのサイトのテーブル名を軸にエントリをするのか、画像認識させて動作させるのか等を決めておく必要があります。
画像認識とは特定のボタンなど、画像に近いものを探させてそれを押すという作業をRPAに実行させることになりますが、当然ながらウェブサイトのデザインが少しでも変更されれば動かなくなってしまいます。
テーブル名などのHTMLソースを軸に動作させる場合はデザイン変更があっても問題なく動くのですがHTMLをある程度理解しなければなりません。またテーブル名を軸にしていてもウェブサイト側の改修などで動かなくなる可能性もゼロではありません。
また、「想定しないエラーを想定する」ということも重要です。本来データが入っているはずのエクセルにブランクのデータがあったら処理を止めるのか、そのまま実行して良いのか?というような実装当初には「まず起きないだろう」と思っていたことは実際の業務では往々にして発生します。これらの事前想定が甘いほどRPAはすぐに止まってしまいまともに動かない事になります。

人間にやらせれば一目でわかる、言わなくても理解できるような「ウェブサイトの項目をエクセルを見て入力して登録ボタンを押す」という簡単な動作であっても、実際にRPAに処理をさせる場合は綿密に「ロジック」に落とし込む必要があり、しっかりとしたロジック化が出来ていればミスなく安定的に処理ができる素晴らしいRPAロボットが誕生するわけです。

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RPAのメリット、特徴

RPA導入のメリットは主に以下の3点と考えます。

  • 人の作業時間を削減できる
  • 作業ミスが無い
  • システム改修の必要性が無い

ロジック化された処理は間違いを起こしません。どれだけ大量に、長時間稼働させても同じように処理が実行されます。人間がエントリ処理を行う事でオペレーションミスが発生している業務、或いはバックオフィスなどがあればRPAの導入は非常に大きな効果を生む可能性があります。

システム改修の必要が無く、現場レベルで導入ができるという点も大きなポイントになります。エントリ処理の自動化などは本来はシステムを通じて自動化プログラムを組む方がベターです。然しながら各社の情報システム部門の制約や社内方針などで既存のシステム改修が難しい場合にはRPAによる自動化は選択肢の一つとなります。

VBAとの違い

RPAについて詳しく知れば知るほどVBA(いわゆるエクセルマクロ)とどう違うのか?という点が出てきます。私の経験の中で言えばVBAでもRPAでもほとんど同じ事ができます。
ウェブサイトへの入力操作やシステム処理などもVBAで実行ができますがプログラムを書いてメンテナンスしていける人材が少ない分、RPAのほうが業務には取り入れやすいかもしれません。
今、VBAを駆使して業務効率化が出来ているならばRPAを導入する意味はほとんどないかもしれません。

RPAのロボットフローは作り手次第

RPAで自動化したフロー、或いはそれをロボットと呼ぶ事があります。これらはフローを作った人材のセンス次第で同じ業務であっても全く異なるプログラムが生まれます。
これは目的の処理結果にたどり着くための方法が無数にあり、どれをどのように採用するかは作り手の経験やセンスに依存してしまうためです。10人いれば10通りのロボットが出来上がる可能性があるわけです。

プログラミング経験が不要とは言い切れない

RPAのフロー構築には「プログラミング経験が不要」ということを耳にすることがあります。確かにプログラミングの経験が無くともフローの構築は可能で、実際にプログラミング未経験の人材がRPAフローを作っていることもあります。しかしプログラミングに非常に近い設計思想が必要で、どこでどのような条件判断を入れるとエラーが起きにくいか、ループ処理は何を条件にすべきかというような考えを働かせる必要があります。私の所感としてはプログラミング経験は確かに不要だが、プログラミングができる着眼点や頭の回転の良さのようなものがなければRPAのフロー構築は不可能です。「誰でもできる」ものではなく、確実に向き・不向きがあると感じています。

RPAの導入で起きる課題、問題点

「導入した後しばらくたって何が起きるのか?」このような観点はみなさん導入前に気になる部分ではないでしょうか。私が導入に関わった業務や、その他の情報も踏まえるとRPAの導入後によく起きる課題は以下のような点になります。

  • RPAのフローを作った人材がいなくなってしまい、メンテナンスができない
  • 作ったRPAフローが重すぎて思ったスピードで処理が進まない
  • 突然止まった際に対応できる人員リソースが無い
  • 野良ロボットが量産されシステム改修ができなくなってしまう

RPAのフローを作った人材がいなくなってしまい、メンテナンスができない

これはVBAを使った業務自動化を行っている時に良く起きる問題の一つですがRPAの導入でも同じように起きる課題です。前述したとおりRPAのフローは同じ業務でも「作る人によって違うロボットができる」のです。「他人が作ったRPAを直してほしい」というのは非常に骨の折れる作業です。作業結果だけでなくどのようなプロセスを経ているかの解析は仕組みと作り手の意図を深く理解しなければなりません。

作ったRPAフローが重すぎて思ったスピードで処理が進まない

意外に思われる方が多いのですがRPAで処理を自動化した場合、思っているよりもスピード感はありません。もちろん処理手順の複雑さ次第ではありますが私が構築したエクセルとウェブを行き来するような作業では人間がやるよりも1件の作業は遅くなり、1台のPCを占有して常時稼働させる必要がありました。
デモンストレーションなどの簡単な操作は確かに人がやるより早く処理が実行でき、一瞬で作業が終わるようなイメージがありますが実業務を実行させた場合では人間と同じか、少し遅いくらいだというイメージで導入を検討したほうが良いです。

突然止まった際に対応できる人員リソースが無い

容易に想像がつきますがRPAの導入で一番のジレンマになる点かもしれません。人材リソースを効率化、省力化するためにRPAを導入し業務効率化を行うわけですからRPAが突然止まってしまった場合は対応ができなくなるのは当然です。かといって止まることを前提にした人員リソースを確保しておくことも無駄が多いわけです。

野良ロボットが量産されシステム改修ができなくなってしまう

RPAフローを制作できる人材が社内にたくさんいる場合に起こる事象です。
いたるところで様々なRPAロボットが作られ動いている状況となり誰がどんなロボットを動かしているか、存在しているのかが分からなくなってしまう事があります。個々のロボットがきちんと動いている限り直接的な問題にはならないのですが、RPAロボットが参照しているシステム改修を行う際に問題が発生します。
システム改修を行った際にRPAが一斉に止まってしまう可能性があり、手が付けられなくなってしまうわけです。

RPAは基幹システムなどの根幹となるシステムで自動化しきれていない処理を部分的に補うのが正しい活用方法だと私は考えています。例えばエクセルファイルのデータをシステムにエントリする業務が存在する場合、RPAでの自動化よりもエクセルファイルをシステムにアップロードし、直接取り込んで自動処理できる機能があるほうがより望ましいはずです。
もっと言えばエクセルファイルにデータを入力するのではなくCRMシステムにデータを登録し、必要なエントリをシステム上で回していける事の方が望ましい状態ではないでしょうか。

私たちがソリューション導入に関してご相談頂いた際も末端の処理や作業を解決するのではなく、大元となるCRMシステムの改善や見直し、業務フローの立て直しについてご提案を行うケースが多くなっています。

まとめ

RPAに関してのメリットや導入後課題についてこれまでの経験を踏まえご紹介いたしました。
RPAに限らず手段として適切に使用すれば効果的なソリューションですが、その内容や特性を理解せずに安易に導入することはオススメできません。
業務全体を俯瞰し見直しを行うことでより良いコンタクトセンターへ変革することができます。
RPAの導入前にもう一度「本質的な問題、改善点は何か?」を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆者紹介

村田 健太郎
村田 健太郎
2002年入社後、オペレーション部門・オペレーション企画部門を約10年経験。
その後通信業界コールセンターのコンサルティング業務を担当しコールセンターへのAI導入やAIを活用した業務改善などのプロジェクトの参画。
AIや音声認識などの知見を元に現在はekubotの事業立ち上げと推進を担当。
コンタクトセンターアワード2013 最優秀部門賞受賞
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