ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?

 2023.06.12  2024.02.19

コールセンター業界において、技術の進化が顧客体験や業務効率に大きな影響を与えています。その中でも注目すべき存在がChatGPTなどに代表される生成系AI(= Generative AI)です。生成系AIでは自然な言葉での対話を行うことができます。前回の記事ではChatGPTがどのようなものかを中心にまとめました。まだ御覧になっていないかたは是非そちらも読んでいただけると幸いです。

ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?

本記事では、生成系AIがコールセンターにどのような変化をもたらすのか、ChatGPTによる具体的なコールセンター変革について考えてみたいと思います。

生成系AIの現状

はじめに生成系AI(=Ganerative AI)についてお話したいと思います。
生成系AIは、自然言語処理をベースにして自律的に文章や応答を生成する人工知能の一種です。ChatGPTがその中でも代表となるAIですが、GoogleのBARDなど同様のAIは続々と増えており今後も益々増えていく事が予測されます。
生成系AIは大量の語彙や文脈の学習がされたAIであり、非常に人間に近い対話を行うことができます。その高い表現力と柔軟性により、コールセンター業務においても有望な活用が期待されています。
既に複数のお客様よりChatGPTを活用してコールセンター業務を自動化できないか?というようなお話を頂いておりマーケットの注目度の高さを感じています。

ボイスボットソリューションのご紹介
VOC(Voice of Customer)の取得から分析までの方法とは?

2023現在コールセンターで活用する方法は?

当社ではさまざまな検証を、技術、業務、データ・セキュリティ、サービス利用などの多面的な観点で検証を進めています。ChatGPTによってコールセンターの業務では、さまざまな活用シーンが考えられますが、2023年5月現時点でのChatGPTを使ったコールセンターの完全自動化は難しいというのが今の私の結論です。AIに質問をした内容のすべてをChatGPTのような生成系AIが回答していくという仕組み自体を作る事はできます。然しながらこの夢のような仕組みは詳細を検討すると課題も多く、実用には一歩及ばないと考えます。一方で、この夢のような仕組みには、詳細を検討すると課題も多く、実用には一歩及ばないと考えます。今後しばらくは、どのシーンで、どの機能を使いこなすか、人間とAIの最適な役割分担を求めることが、最も重要なテーマになります。

次章以降で、いわゆる”質問の応答”や、それ以外の代表的シーンについて、今、コールセンターで生成系AIを活用する場合の具体的な方法を、実例を踏まえながら5つ紹介し、その利点や課題を説明します。

1.FAQの作成

生成系AIに”〇〇株式会社の〇〇サービスのカスタマーサポートで寄せられるよくある質問をQ&A形式で書き出して”というような指示をするとFAQの生成を行う事が可能です。
世間一般に広く情報が広がっているサービスほど高い精度のFAQが作成できる印象です。
一方でBtoB用のサービスなど、情報量が少ないものは表面的なFAQになってしまい使い物にならない場合があります。

また、特定のマニュアル文面などからFAQをピックアップさせる事も可能です。
以下は当社が提供するekubot VoiceLITEのマニュアルの1スライドのテキストデータからFAQを生成した際の例です。内容はウェブサイト等に載っていない情報ばかりですがそれなりに活用できるレベルのFAQが生成できています。作成までにかかった時間は約5分程度です。

ChatGPTへの指示


# 命令書:
あなたは[カスタマーサポート運営の専門家]です。
以下の制約条件を守りつつ、入力文を参考情報としながら
10個よくある質問を書きだして欲しい

# 制約条件:

  • Q&A形式で記載する事
  • QとAはそれぞれ200文字くらいを上限とする
  • わかりやすい内容とする事
  • [入力文]の内容を元に構成する事

# 入力文:
[
※長文のため割愛 図とテキストで構成されているマニュアルのテキスト部分を約1000文字記載
]

# 出力文:


ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-01

2.トークスクリプトの原案の作成

コールセンターの新たな業務開始時などに作成するトークスクリプトについてもドラフトを作成する事が可能です。あくまでドラフトになりますのでこの内容を元に肉付けをしていく必要がありますがある程度それらしいスクリプトが作成できます。
ゼロから作るよりは楽に作成が可能です。
フローチャートの形式に変換するにはまた別のAIを活用していく必要がありますがここでは生成系AIのみを活用した場合の例をご紹介します。

ChatGPTへの指示


# 命令書:
あなたは[カスタマーサポート運営の専門家]です。
以下の制約条件を守りつつ、入力文を参考情報としながら
コールセンターで利用するトークスクリプトの案を提案してほしい

# 制約条件:

  • お客様とサポートの想定トークを交互に記載する事
  • わかりやすい内容とする事
  • [入力文]の内容がコールセンター業務の概要となる事を前提に作成すること

# 入力文: [

  • 取り扱い商品は[サバの缶詰]
  • 賞味期限内のものでリコール対象の商品はすべて再度新品を発送することになっている
  • コールセンターの営業時間は9時~18時
  • 営業時間外は時間外のガイダンスが流れる
  • リコール対象の商品は返送してもらう必要はなく、破棄してもらう
  • その他リコールに該当しない問合せはお客様相談センターを誘導する

]

 # 出力文:


ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-02

ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-03

トークフローチャート形式で記載するよう指示するとこのような出力になります

ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-04

スクリプトの原案レベルとしては十分ですが、これでカスタマーサポートを行えるかというと疑問です。もう少し業務情報を肉付けしてから作成させ、人の手で最終化をする必要があります。

3.VOC(顧客の声)を発掘する作業

前述したトークフローの例と同じようなイメージでVOCを抽出することが可能です。
然しながらVOCの抽出については少し注意が必要だと考えています。多数の声がある場合には確かにそれを改善したほうが良いような場面も多いのですが、少数派の意見の中にもサービスを改善するためのヒントがある場合も十分に考えられます。
なかなか声として上がってこない意見こそ、サービス課題の真因である場合もあります。
あくまで参考情報として活用するスタンスが重要だと考えます。

実際に活用した場合の例を記載します。
実際のコールセンターのテキストデータを使う事は難しい為、Yahoo!知恵袋のデータからLINEのVOCを抽出してみます。ChatGPTだとYahoo!知恵袋のデータにアクセスできないと回答があったのでGoogle Bardの例を記載しますが、本当にYahoo!知恵袋のデータを使っているかは不明です。

Google Bardへの指示


# 命令書:
あなたは[カスタマーサポート運営の専門家]です。
以下の制約条件を守りつつ、[LINE]のサービス改善に役立つ顧客の声をリストアップしてほしい

# 制約条件:

  • 改善点は箇条書きで書き出す事
  • わかりやすい内容とする事
  • より重要なものから順番に記載すること
  • ヤフー知恵袋のデータから検索する事

# 出力文:


ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-05

  • 顧客の声を少数意見も含め漏れなくリストアップする
  • データから事実であることのみを抽出する(推測となる情報は含めない)

この2点が生成系AIでVOCを抽出する際の課題であると考えます。

4.コールセンターの応対履歴の要約

コールセンターで応対した履歴データからその問合せがどういった内容だったのかを要約する際も生成系AIは活用が可能です。
実際のコールセンターのサンプルデータはお見せできない為、当社が提供しているekubot VoiceLITEというボイスボットに私がデモンストレーションで架電した際のデータを使って要約を行ってみました。こちらの結果もChatGPTよりもGoogle Bardのほうが求めていた結果が出た為、その内容を記載します。

Google Bardへの指示


# 命令書:
あなたは[コンタクトセンター運営のプロ]です。 
以下の制約条件を守りつつ、入力文を要約してください
最高の結果を出すために不足している情報があれば私に質問してください

# 制約条件:

  • 300文字以内でまとめる事
  • 受付した内容がある場合は箇条書きで記載する事
  • うまくいかなかった対応も箇条書きで記載する事
  • 冒頭に入電日時と入電内容のサマリ、対応ステータスを記載する事
  • ヒアリングした名前はカタカナで記載する事
  • 顧客氏名、契約者IDを別途書き出す事

 # 入力文:
 [
セッションID    コールID    開始時間    終了時間    通話時間    外線通話時間着信番
号    発信番号   ステータス    シナリオ名    通話内容    リトライ数
104 75    2023/4/26 10:16    2023/4/26 10:18    0:02:11    ー    050-3183-8658    070-3190-7885    未完了    ウェビナー用デモ    "bot:お電話ありがとうございます。エクボット、ウェビナー用デモンストレーションコールです。(10:16:35)
bot:本日はどのようなお問い合わせでしょうか?(10:16:37)
user:200内容の紹介をしたいです(10:16:52)
bot:申し訳ございません。うまく認識ができませんでした。もう一度お問い合わせ内容をお願い致します。(10:16:53)
user:契約内容の紹介をしたいです(10:17:09)
bot:ご契約内容の照会についてですね。始めに、お名前をお願いいたします。(10:17:09)
user:ハタケンタロウ(10:17:25)
bot:復唱します。ハタケンタロウさまでお間違いないでしょうか?(10:17:26)
user:いいえ(10:17:37)
bot:ご契約内容の照会についてですね。始めに、お名前をお願いいたします。(10:17:37)
user:ムラタケンタロウ(10:17:50)
bot:復唱します。ムラタケンタロウさまでお間違いないでしょうか?(10:17:51)
user:はい(10:18:03)
bot:次に、ご契約アイディはお分かりになりますでしょうか?(10:18:04)
user:はい(10:18:18)
bot:それでは7桁のご契約アイディをお願いいたします。(10:18:22)
user:31EC1EC(10:18:35)
bot:復唱します。31EC1ECでお間違いないでしょうか?(10:18:36)"    1

# 出力文:


ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-06

実際のコールセンターログを使った場合にはもう少し指示内容を精査したりする必要がありそうですが概ね期待した要約結果を得る事ができました。
Googleの場合は名前を漢字に変換したがるようでカタカナで取れているものも漢字にしてしまう事がありました。

5.従来型AIの学習データの作成

Watson Assitantのような従来型のAIを活用する際に言い回しの学習データを作成する作業が必要となりますが、このような作業も生成系AIを活用することでスピーディに実行することが可能です。
ヒントとなるデータが無い場合でも、ある場合でも活用できる為今後のチャットボットやボイスボットの学習データ作成には必須となる使い方だと考えています。

ChatGPTへの指示


# 命令書:
あなたは[Watson Assitantの専門家]です。
以下の制約条件を守りつつ、[契約内容を変更したい]というフレーズを
別の言い方で15個考えてください
最高の結果を出すために不足している情報があれば私に聞いてください

# 制約条件:

  • Watson Assitantの学習データ(INTENT)として活用することを前提とする
  • 学習データとして精度が高そうな結果を出力すること
  • [契約][変更]というフレーズは15個うち半分しか使ってはいけない
  • 一般消費者が電話応対で発話しそうな言い回しにすること

# 出力文:


ChatGPTはコールセンターをどう変えるか?-07

お世辞にも精度が高そうなデータとは言えませんが何もデータが無い初期構築の際には使いどころのあるデータになります。契約と変更というフレーズが多かったので別の言い方を含めさせようとしましたが制約条件を守ってもらえませんでした。生成系AIではこのように指示を守らない事もあります。もう少しプロンプトをうまく書けば理想的な内容に出力できるかもしれません。

生成系AIの課題

見て頂いたとおり生成系AIは既に十分に活用できる一方で、コールセンターの問合せ応答そのものを実施させるには精度や対応範囲の制約が課題となります。前述した活用方法の例でも見て頂いたとおりChatGPTで生成された文章やFAQは、人間の目によるチェックが必要です。

完全な信頼性や正確性を確保するためには、人間の判断や確認が欠かせません。そのため、生成された回答をエンドユーザーに直接提供する際には、人間のチェックを経る仕組みを導入することが重要です。生成系AIをうまく活用するには要約やFAQ作成の効率化に重点を置くことが賢明です。

今後企業が行うべき取り組み

生成系AIは確実に進化し今よりももっと効率的に確かな情報が回答できる日がくると考えています。そのような進化を遂げたと仮定した場合、今企業が行うべき取り組みは何でしょうか?
私は以下の2点だと考えます。

  1. コールセンターの音声認識テキスト取得
    生成系AIのモデル生成、及びその精度向上には学習させるための大量のテキストデータが必要です。
    音声認識により応対データをテキスト化しておけば個別の業務知識を習得させるためのデータセットを作成することが可能となります。
    進化した生成系AIが出てきた際に、何もテキストデータが無い状態では学習させる事ができず従来型のコールセンターから脱却できないかもしれません。音声認識を活用しオペレータと顧客の会話をテキストデータ化しておくことは将来だけでなく、VOCの抽出など今すぐに活用できる使い方とも直結します。
    履歴の要約と組み合わせる事で後処理作業を不要とし、ACW を減らすという使い方も可能です。 
  2. ボイスボットの活用
    次に音声入出力の実現が重要です。生成系AIはテキスト生成に特化しており、顧客との対話を実現するためには音声での入出力が必要です。ウェブやインターネットが発展しサイト上でカスタマーサポートに必要な情報の提供や手続きを行うシステムが増えてきましたが現在でも電話での問い合わせは多く、どれだけ手段が充実しても電話をかけてしまう顧客は存在します。

そのため、ボイスボットの導入を行っておくことが推奨できます。既存のボイスボットを活用しながら、その脳部分を今後進化した生成系AIに置き換えることで、音声での対話を一気に高度化する可能性があります。

まとめ

生成系AIはとてつもないスピードで進化しておりこの記事を書いた半年後には状況が変わっているかもしれません。然しながら現時点ではこの記事でまとめたような活用方法を中心としながらも、今後に備えた事前準備をしておくタイミングと言えます。ChatGPTでコールセンターの応答をして完全無人化したい!というようなお客様が多いのが現状ですが、今できていないことを中心に現実的な活用方法にシフトしていく事をオススメします。

執筆者紹介

村田 健太郎
村田 健太郎
2002年入社後、オペレーション部門・オペレーション企画部門を約10年経験。
その後通信業界コールセンターのコンサルティング業務を担当しコールセンターへのAI導入やAIを活用した業務改善などのプロジェクトに参画。AIや音声認識などの知見を元に現在はekubotの事業立ち上げと推進を担当。
コンタクトセンターアワード2013 最優秀部門賞受賞
ChatGPTをコールセンター業務で活用するためのサンプルプロンプト集

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