コンタクトセンターに最適なCRMシステムの選び方

 2021.08.03  北岡 豪史

コンタクトセンターの高度化にとってCRMシステムの重要性は増しています。求められる機能は多様化し、応対履歴はもちろんのこと、内部プロセスやエスカレーションの管理、ナレッジマネジメントの基盤、チャットの基盤、メール対応、外部 FAQ やチャットボットが統合されているものまであります。また、付加サービスとして、高度な検索やデータサイエンスによる予測機能なども充実してきました。それにともない、CRMシステムの選び方は大きく変化しています。 ここではコンタクトセンターに最適なCRMシステムの選び方を解説します。

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これまでのCRMシステムの選び方

これまでのコンタクトセンターの CRMシステムの選び方は、基本的に、一般的な情報システムと同じ方法で行われてきました。業務部門からビジネスニーズを聞き出し、機能要件に翻訳し、それをもとにカスタムシステムを開発するか、市場の中から機能対応の度合いを比較して優位な製品を選択する方法です。まず、従来式の具体的なステップや特徴を見てみましょう。

システム部門主導が多い

多くの場合、システム部門が更改プロジェクトをリードし、製品や導入ベンダーを選ぶ場合が多いのが現状です。システム導入に高度な IT 知識が必要だった時代には、この方法を取らざるを得ませんでした。ユーザー部門はビジネスニーズを取りまとめ、システム部門がシステム選定情報の一部として、それを利用します。

改善に重点が置かれる

ユーザー部門がビジネスニーズ取りまとめると、どうしても、現状システムを念頭において討議が進みます。ユーザは現状業務を思い浮かべ、課題を洗い出し、その改善に重点を置きます。本来、市場や顧客が必要とする大きな変化に対応し、改革を推進するための方向性やビジネスニーズを取りまとめるはずが、なかなか、そうはならないのが現実です。

機能偏重型になる

システム部門は、ビジネスニーズを受け取ると、それを機能要件に変換します。機能要件に対して複数の製品候補を並べて機能対応の度合いを比較するため、比較機能には、現状システムの課題対応が多く含まれ、結果として、新しいシステムが現状システムに似たものになってしまうのです。非機能要件の比較もされますが、あくまで主役は機能になります。

カスタム開発主流の時代

かつてのコンタクトセンターの仕組みは、応対履歴の管理機能が中心で、基幹システムの付加機能としてカスタム開発で作られていました。今は、市場から優れた製品を選定し、コンタクトセンターの情報利用ニーズに応じて、基幹システムとは緩やかに連携をするのが一般的です。連携のインターフェース開発はウォーターフォール型で実施されますが、主役であるコンタクトセンターシステムの選定には、新しい手法が必要になります。

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なぜ、これまでの方法ではだめなのか?

これまでの方法の問題は、ウォーターフォール型のノウハウを前提とし、製品の選定に、重厚なカスタムシステムを開発する手法をそのまま用いることです。コンタクトセンター高度化をサポートする CRMシステムは、ミッションクリティカルというよりは相対的に軽い仕組みであり、企業固有機能というよりは顧客行動の変化や市場変化に対応する汎用的な仕組みです。そこでは、ある時点の詳細機能の対応の是非よりも、変化する市場へ柔軟に追従できるかどうかが重視されます。それでは、従来アプローチで、CRM製品の選定をした場合の具体的な問題を見てみましょう。

新しい姿が描きにくい

1つ目は、従来の方法でビジネスニーズを討議してしまい、高度化されたコンタクセンターの新しい姿が描きにくいことです。業務部門を巻き込んで討議しても、新しいコンタクセンターの姿を多くの人は知りません。高度化のニーズは、さまざまな視点や粒度が混在していて、現状業務や、現状システムへの改善要望からは想像しにくいものです。結果として、新しい仕組みへのニーズをまとめたつもりが、単なる現状システムへの改善要望になるか、逆にベンダー提示の教科書的な高度化で現実感のないものになります。

クラウドサービスの特徴を活かせない

2つ目は、従来の方法では製品の有力候補になるはずの、クラウドサービスの特徴を活かせないことです。優れたクラウドサービスは、パラメーターによって柔軟に機能追加や変更が可能です。ところが、機能要件を先に決めてしまい、決まった機能の対応の是非だけを製品選択の判断基準にすると問題が起こります。対応可能機能は具体論が討議されず、対応不可能な機能は代替案が討議されず、対応とも対応不可とも言えないグレーゾーン機能は、実現手段をベンダーノウハウだけに委ねることになります。結果として、機能対応表は、ベンダーがシステム開発範囲を決めるためだけに使われ、コンタクトセンター高度化の大きな方向性が見えなくなります。

顕在化していないニーズが見えない

3つ目は、顕在化していないニーズに対応できないことです。今、世の中に存在しない機能やチャネルが突然あらわれて、短期間で市場の標準になることがよくあります。それらの潜在ニーズは、コンタクトセンター内部の機能討議からは出てきません。つまり、従来の方法は、顕在化している課題への対応、決めた範囲はきっちり開発する方法であり、新ニーズが顕在化すれば、追加機能を開発し、追加投資が必要になります。予算に制約があれば、次のシステム更改まで、機能不足や対応不足で業務を続けることになります。

最適な方法とは?

どうすれば、コンタクトセンター最適なCRMシステムを選ぶことができるでしょうか。一言で言えば、ウォーターフォール型の発想から脱却し、製品選定段階から、最先端のクラウドサービスの特徴を最大限に活かすようなアプローチを取り入れることです。この考え方は、多様なビジネスクラウドの選択にも応用可能な、企業システムの選択ノウハウとして有効なものです。

あるべき姿を考える

まずは、現状システムの課題や、詳細機能の是非にこだわらず、実現したいあるべき姿を大きなコンセプトから描きます。市場の変化、顧客行動の変化、オムニチャネル対応へのニーズ、自動応答の強化、センター業務の標準化など、どのようなコンセプトでセンターを高度化しあるべき姿を実現したいかを考えます。またセンターの業務改善ニーズは、既存システムへの改善要望ではなく、ナレッジ支援、柔軟な検索、多様なレポートやダッシュボードのような、生産性や品質を抜本的に変える大きなテーマを選び、そこに現場の知見を取り入れて具体化します。大まかなコンセプトが決まれば、それに合致している製品を候補とします。

機能討議は最低限にする

機能討議は最低限におさめます。基幹システム連携や、業務に必須の仕組みは機能討議が必須ですが、コンタクトセンター高度化に必要な機能については、選定段階で詳細機能を決めません。パラメータによって柔軟に機能を変えられる製品やクラウドサービスを選択しさえすれば、詳細機能の調整や最適化は、後からいくらでもできるからです。それよりも、高度化によって成し遂げたい目的や目標を、はっきりさせることが重要です。それが定義されれば、プロジェクトを通じて、システム、業務両面で改善、改革の手段を打つこで、目的の実現や、目標の達成を目指すことが可能になります。

市場の勝ち馬を狙う

あるべき姿にもとづき、コンセプトに合致する製品を選ぶときは、市場で多く使われているもの、すなわち勝ち馬を狙うことが重要です。みんなが使っていて、みんなが高度化に成功している製品ならば、細かい機能を調べなくても、それをうまく使い込めば、高度化を実現できるはずだからです。また、市場でよく使われる製品は、不具合の改善も安心で、機能強化や将来ニーズへの対応も期待できます。技術者、コンサルタントも市場に多数いるため、導入から保守、定着化を提供するベンダーの選択肢が増えます。

局所的な価格にとらわれない

優秀な製品は価格が高い、というのが一般的な印象だと思いますが、価格だけを製品選定の判断基準にすると選択を誤る可能性があります。例えば、統合的オムニチャネル基盤として、そのシステムを導入する場合、利用中のナレッジシステム、外部 FAQ、 チャット対応システム、メール対応システムなどが必要なくなります。あるべき姿が実現され、自己解決が促進されれば、呼減による応対人件費の削減や、顧客満足度向上による売上向上効果も見込まれるでしょう。ライバル企業と同等なチャネルを提供することで、サービス向上による機会損失回避なども考えられます。このように、総合的に費用対効果を考え、製品の価格を評価することが重要になります。

製品選択より導入方法に気を配る

製品を決定したら、システムをきちんと開発してくれる会社を選ぶのが、今までの考え方でした。しかし、コンタクトセンター高度化は、システム開発というよりはむしろ、システムを使い込むことによって業務の最適化を実現し、あるべき姿を実現するものです。そのためには、高度化に向けた意思を明確にして、目的に合った導入アプローチを選択します。このアプローチは、一般的に業務アジャイルと言われ、あるべき姿を提示し、高度化の方向性を大枠で決め、業務知見にもとづいてユーザをガイドします。プロジェクトを通じてユーザと討議を重ね、プロトタイプを徐々に高度化してシステムを導入します。稼働後は継続的改善により、システムや業務を最適化します。

保守のやりかたを考える

保守や定着化のやり方も、変える必要があります。システムベンダーは約束した機能開発に特化し、システム稼働後は障害対応が中心になり、機能変更や新機能利用は、都度対応になります。優秀な製品やクラウドサービスは、パラメータを変えることで、機能を簡単に追加・変更できますし、新機能利用で、新しい業務上の効果も享受できます。レポートやダッシュボードは、業務で使いながらユーザ自身で高度化したいニーズもあるでしょう。せっかくの優秀な製品やクラウドサービスがあるのですから、継続的改善に対応する、保守や定着化サービスを選びます。基本機能でシステムを稼働させ、現場で徹底的に使い込みながら、システムや業務を最適化します。導入費用を減らして保守や定着化に充てれば、このアプローチが実現します。

新しいアプローチができる専門家に相談する

選定、導入、保守や定着化に新しい手法を使うのが難しいなら、新しいアプローチをフルサービスで提供する専門家に相談するのも一つの考え方です。システムを作るのではない、いいシステムを選択して使い込むのだ!という発想の転換がこのアプローチの鍵になります。また、システム導入より前に、コンタクトセンター高度化に向けた戦略策定を実行し、センター課題、市場動向、カスタマージャーニー、ライバルベンチマークなど実行し、コンタクトセンターのあるべき姿と、その実現に向けたロードマップを策定する、トップダウンアプローチも、あわせて検討してみてはどうでしょうか。

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まとめ

コンタクトセンターの高度化に寄与する最適な CRM を選択するには、今までのシステム開発手法を捨て、市場の優秀なクラウドサービス利用を前提にした新しい製品選定アプローチが必要になります。製品を選んだら、導入、保守・定着化を通じて、機能偏重、開発偏重に落ち入らないように、システムを使うより使い込むというコンセプトにもとづいて、業務アジャイルに対応できるベンダーを選定することで、プロジェクトの成功確率は大いに高まるでしょう 。

執筆者紹介

北岡 豪史
北岡 豪史
新卒から、コンサルティング会社にて、さまざな業種・業界向けの、ビジネスコンサルティングや大規模パッケージ導入プロジェクトに携わる。2012年に入社後は、アウトソーサーの先行業務設計部隊を母体に、ビジネス&ソリューションコンサルティングの専門部隊を率いながら、「実現するコンサルティング」を目指し、自らコンサルタントとしても、お客様ビジネスの改革・改善に取り組む。 中小企業診断士、応用情報技術者、Salesforce Sevice / Sales / Experience Cloud 認定コンサルタント
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