生成AI×テキストマイニングの最新事例と未来の可能性

 2024.06.14  2024.10.09

ChatGPTの登場以来、先進的企業だけではなく様々な業種業態において生成AI活用が促進されており、画像解析による製造業のリスクチェックからB to C窓口のボット対応まで、幅広い活躍を見せています。こちらの記事ではコンタクトセンターにおける生成AI活用の最新事例と共に、コンタクトセンター業務での運用イメージをご紹介します。

生成AI×テキストマイニングの最新事例と未来の可能性

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生成AIでできること、テキストマイニングだからできること

コンタクトセンターではお客様との応対が日々行われており、運営管理においては大きく分けて以下のような区分で業務が発生しています。

  1. お客様対応(電話、チャット、メールなど)
  2. 応対履歴の記録(音声認識ログの蓄積含む)
  3. 対応マニュアル・FAQの作成管理
  4. VOC分析(コールリーズン抽出、応対品質評価 など)

これらのシーンで既に生成AIが活用され始めていますが、そもそも生成AIはどんな特徴を持ち、なにが得意なのか?を知らなければ、業務に定着させることはできません。

生成AIでできること

そもそも生成AIとはどのようなものでしょうか。
概要をまとめると、次のような特徴を持つ技術となります。

  • データから生成
    生成AIは、与えられたトレーニングデータに基づいて新しいコンテンツを生成します。例えば、トレーニングされたテキストデータから文章を生成したり、画像データから新しい画像を作成したりできます。

  • 柔軟性と創造性
    生成AIは、既存のデータのパターンや関係を学習することで、新しいアイデアやコンテンツを生み出す能力を持っています。これにより、ビジネスやクリエイティブな分野で革新的な成果を生み出すことができます。

  • 応用範囲の広さ
    生成AIはテキストだけでなく、ソフトウェアコード、分子構造、画像など、さまざまなデータタイプに適用できます。その応用範囲は日々広がっており、企業の業務改善や新たなサービスの開発に活用されています。

コンタクトセンターではこの技術を用いて、膨大なQAや資料データを基に自動回答をするボットや、通話内容を自動要約するシステムが導入されています。
ただし、業務活用をする上で生成AIにはいくつかの課題があります。

生成AIの課題

生成AIは膨大なデータを読み込んで、人間の指示(プロンプト)に従いアウトプットする事ができます。
ただし、「聞いたら何でも答えて対応してくれるのだろう」と考えて生成AIを使用すると、いくつかの課題にぶつかる事となります。

  • 課題①
    指示(プロンプト)が適切でないと思った通りのアウトプットが得られない
    =プロンプトエンジニアリングが重要

  • 課題②
    生成AIの出力に嘘が混じることがある
    =ハルシネーションチェックが必要

  • 課題③
    トークン数単位で課金が発生する為、膨大なデータを投入すると膨大な費用がかかる
    =投入データの前処理が必要

課題①の通り、生成AIに思った通りのアウトプットを出力させることは容易ではありません。ChatGPTのようにチャット形式で会話を成り立たせるだけでも、欲しい回答が得られずあれこれと質問を工夫して…という経験をお持ちの方も少なくないでしょう。
複雑な出力をさせようとすればするほど、プロンプトエンジニアリングと呼ばれる「適切な指示をするスキル」が求められ、専門の技術者による対応が必要となります。

課題①をクリアして思うような結果が得られたとしても、その出力内容には嘘が混じる可能性があります。課題②となるこの「生成AIの嘘」はハルシネーションと呼ばれ、事実とは異なる/文脈と無関係な、もっともらしいが正しくない情報を生成してしまう現象を指します。
プロンプトを工夫してある程度避けることはできたとしても、出力された結果が果たして事実のみで構成されているのか?を確かめるためにはファクトチェック(正確性・妥当性判断)を行う必要があります。ただしこのチェックを目検で(会話の履歴や参照元のマニュアルなどと比較しながら)行うとなると、多大な工数が掛かってしまいます。

課題①②をクリアして、求めるアウトプットが正しい情報だけで生成される段階まで到達できたとしても、課題③の費用面をどうするか考えなければいけません。
トークン数(文字数)で課金されるとなると、例えば通話ログを自動要約させて応対履歴を生成しようとした場合、5分の通話はおよそ1500文字、それを日に20通話ずつ100席のオペレーターが対応したとしたら…と考えると、膨大な費用が掛かってしまう事になります。
費用を削減する為には、なるべく不要な情報を削る、もしくは必要な情報に絞る(=前処理)対処が必要です。

生成AIの課題をテキストマイニングで解決

実は、ここまでで取り上げてきた生成AIの課題はテキストマイニングによって解決することができます。
テキストマイニングは「自然言語処理」とも呼ばれる、テキスト情報を分析する為の技術です。コンタクトセンターにおいては、VOC分析を中心にFAQやトークスクリプト生成、応対履歴の要約、通話中の自動リコメンドを目的として、2000年頃から業務活用されて来ました。
先述の生成AIの用途と重なる部分がありますが、だからこそ「テキストマイニングだからできること」と「生成AIの柔軟性と創造性」を組み合わせることで、生成AIの課題を解決するだけでなく更なる高度化を目指すことができます。

テキストマイニング専門のソリューション&コンサルティングベンダーであるベクスト株式会社では、生成AIを業務活用するにあたり次のような課題解決および高度化を行い、各種製品に反映しています。

  • 生成AIの課題に対する解決策①
    課題①:プロンプトエンジニアリングが重要
    =テキストマイニングベンダーによるプロンプトエンジニアリング&UI・UXの開発

  • 生成AIの課題に対する解決策②
    課題②:ハルシネーションチェックが必要
    =原文検索、独自技術による信頼度チェック機能の搭載

  • 生成AIの課題に対する解決策③
    課題③:投入データの前処理が必要
    =不要語削除、分析結果に基づく情報の精査による投入データの絞り込み

次の第2項、第3項ではコンタクトセンターにおける実際の活用事例について、ACW削減とVOC分析にスポットを当ててご紹介します。

ChatGPTをコールセンター業務で活用するためのサンプルプロンプト集
テキストデータ分析サービス

活用事例①
通話の自動要約(ACW削減)

電話応対窓口では通話終了後に応対履歴を作成しますが、人手で応対履歴を入力する代わりに、応対内容を生成AI×テキストマイニングで要約させることで、コスト効率化が期待できます。

自動要約により得られた効果

とあるコンタクトセンターでは、平均通話時間5分、平均後処理時間3分を要し、一人当たり7.5本/時の応答を行っていました。これに対し自動要約システムを導入したところ、平均後処理時間を2分短縮=10本/時の応答が可能となり、応答率の向上や人員削減に繋がりました。

活用事例①通話の自動要約(ACW削減)01

自動要約ソリューション「VextResume+ powered by ChatGPT」はベクスト株式会社のNLP技術とAzure OpenAIのセキュアな環境で動作するChatGPT APIとを組み合わせて活用することで、事前のルール定義や辞書設定無しに高精度・高速に動作する要約機能を安心してすぐにご利用を開始いただけます。

ChatGPTは入力文字数に制限がありますが、ベクスト株式会社では独自のプロンプトエンジニアリングを施すことにより1時間を超える長時間通話に対しても高精度・高速に要約を行うことが可能となります。
また、不要表現の自動削除によるトークン数の節約や、要約結果に対する自動の信頼度チェックによるハルシネーション検知機能を搭載し、生成AIの課題に対応しています。

活用事例①通話の自動要約(ACW削減)02

活用事例②
対話ログの分析(VOC/コールリーズン分析)

電話やチャットなどの顧客応対ログに対して分析を行いコールリーズン可視化、FAQの追加やチャット・ボイスボットによる自動応答を強化することで、呼量削減や呼損率減少に繋げることができます。

対話ログの分析により得られた効果

とあるコンタクトセンター部署では、先月分の電話応対履歴データに対し、分析担当者5名が週3日程度を使って分析作業を行い、レポート作成完了までに1ヵ月の期間を要していました。これに対しテキストマイニングツールを導入したところ、分析処理~結果配信までを自動化し、前日データを含めた最新結果を翌日には配信できる体制となりました。分析担当者は定期的なメンテナンス要員として2名を配置、即時性のあるフィードバックおよび人員削減に繋がりました。

活用事例②対話ログの分析(VOC/コールリーズン分析)01

テキストマイニングツール「VextMiner」とオプション機能「VextPortal」「VextInsight powered by ChatGPT」を組み合わせることで、高精度な分析処理および結果配信、グラフ解釈までを一気通貫で実現できます。

VextInsight powered by ChatGPTはVextMinerの分析結果をChatGPTの生成機能と組み合わせることで、詳細な解説を自動生成できる分析アシスタント機能です。解説によって明らかになった各特徴に紐づく原文をシームレスに行き来できるため、結果の根拠確認(=ハルシネーションチェック)や、詳細意見の確認が容易に行えます。

活用事例②対話ログの分析(VOC/コールリーズン分析)02

ポイントサマリー機能により分析結果の根拠となる原文を「主旨」「申出内容」「事象・原因・対策」の3つの観点で要約することも可能です。これらの機能により、「グラフを読み解くスキル」に依らず誰もが根拠に基づくインサイト(=気づき)を得ることができます。

活用事例②対話ログの分析(VOC/コールリーズン分析)03

生成AI×テキストマイニングで描くコンタクトセンターの未来

ここまでで自動要約によるACW削減、分析結果の自動解釈によるVOC分析効率化&高度化についてご紹介しましたが、その他にも自動応答(ボイスボット、チャットボット)におけるQA型&トークシナリオ型の回答知識生成など、コンタクトセンター業務を強力に支援する製品・サービスの提供を行っています。

コンタクトセンターにおける生成AI活用の今後

生成AIの登場で業務効率化・高度化に大きな影響が与えられました。しかし、AI技術が進歩する度に囁かれる「人間の仕事は全てAIに取って代わられるのではないか」という期待や不安に対しては、少なくとも現在はまだその領域に達していないと言えます。
特にコンタクトセンターではお客様に寄り添った(繊細かつ正解が分からない)対応が求められるため、生成AIとテキストマイニングの技術を上手く活用しながらオペレーターの負担を取り除き、ユーザーエクスペリエンスの向上を目指して技術・人がともに進歩をし続けると考えられます。

ベクスト株式会社は毎年夏に「Vext Tech Conference」というイベントにて市場動向や最新技術のご紹介をしております。詳細は当記事の末尾に記載しておりますので、ご興味がある方はぜひご参加ください。

まとめ

生成AIは有益な技術である一方、幾つかの課題を有しています。コンタクトセンターで活用をする際は自社の課題とともに生成AIの課題を解決し、より高度化できる製品を選ぶ必要があります。
これから導入を検討される方には、まずはPOCでの事前検証から始めることをお勧めします。

執筆者紹介

山崎 幸那 氏
山崎 幸那 氏
ベクスト株式会社 営業部 テキストマイニング/データ分析・活用
テキストマイニング専業ベンダーの主任コンサルタント。
2014年3月入社より、製造、金融・保険、サービス等、幅広い業種のツール導入から継続的な運用、分析コンサルティング・教育まで、テキストマイニングに関する大小様々なプロジェクに従事。現在は応対履歴や音声認識テキスト、チャットログを始めとした、顧客企業が抱える多種多様なテキストデータ分析やプロジェクト推進の傍らで、テキストマイニングの認知度向上を目指しノウハウをVextblogにて執筆中。
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