コンタクトセンターでの生成AI活用の展望2024

 2024.02.16  2024.04.04

昨年2023年からコンタクトセンターのオペレーションにも生成AIが取り入れられ、顧客との対話をより効率的にサポートができるところまで進化してきています。顧客のニーズを理解し柔軟な解決策を提示することによって、センターは業務効率化や生産性向上だけでなく、顧客体験(CX)における革新的な価値をもたらす役割への変化が期待されています。このコラムでは2023年の生成AI活用の現在地、課題、そして2024年の展望を探って行きます。

コンタクトセンターでの生成AI活用の展望2024

コンタクトセンターにおける生成AIチャットボットの活用効果とは?

2023年コンタクトセンター業界に吹き込んだ生成AIの現在地

2022年11月に登場し、世間を賑わせている生成AI。Open AI社のChatGPTを始めとした世界の生成AIの市場規模は、2023年の113億米ドルから、2028年には518億米ドルへと達し、この期間中に35.6%のCAGR(年間市場成長率、以下CAGR)で成長すると予測されています。その中でもメディア・エンターテインメントのセグメントが最も速いCAGRで成長すると見られていますが、自然言語処理技術などの発展を見る限り、コンタクトセンター業界への影響も決して例外ではありません。また日本国内においても、生成AIの市場規模は、2023年の4.8億米ドルから、2028年には28億米ドル(4,070億円)へと成長し、期間中に41.9%のCAGRと高い伸び率で成長すると見られています。

1 2023年コンタクトセンター業界に吹き込んだ生成AIの現在地 01

※出典:ビジネス+IT

コールセンターのIT機能のなかで強化の優先度の高いソリューションを見てみると、FAQチャットボットボイスボットを軸に優先度順位に変動はないものの、生成AIの登場が影響してテキストマイニングによるVOC分析、音声認識などの自然言語処理ソリューションへの意識が高まって来ているのがデータでわかります。

1 2023年コンタクトセンター業界に吹き込んだ生成AIの現在地 02

※出典:コールセンター白書2021 / 2022 / 2023

また実際の生成AIの活用用途をみると、1. FAQの自動生成、2. VOC(オペレーターと顧客の会話)の要約、3. チャットボット、4. メール対応文章の生成とすでにオペレーションへ取り入れられていることがわかります。2024年はコールセンターシステムのクラウドシフトとともに生成AIのオペレーションへの普及が本格的に進む年となるでしょう。
※引用:コールセンター白書2023

コンタクトセンター向けAI音声認識ソリューション AmiVoice Communication Suite
ボイスボット製品市場調査

コンタクトソリューションベンダーの生成AIへの取り組み状況

このような市場のトレンドがある中で、2023年11月のCRM&デモコンファレンスでは、コンタクトセンターソリューションベンダーによる生成AIへの取り組みがこぞって注目を集めました。CallCenter JAPAN編集部の調べでは、デモの活用用途として最も多かったのが「後処理要約」の26社、ついでチャットボット・ボイスボットと連携した「顧客応対」が14社だったとのことです。
※引用:CallCenter JAPAN 2024年2月号

主なソリューションベンダーを簡単に紹介します。

KARAKURI社は、問い合わせ頻度に基づいたアプローチで、頻度の高い定型なコンタクトリーズンには定型AIを、頻度は低いがロングテールで多岐にわたる問い合わせには生成AIを活用するハイブリッド型のチャットボットを提案しています。これにより、精度向上と生成AIのコスト削減を実現し、効果的な顧客対応を目指しています。

PKSHA Communication社は、メールやチャットのログ、マニュアル・カタログ、ログデータの3パターンでFAQ作成サービスを提供。FAQ作成業務の軽減とメンテナンス負荷の低減を通じて、属人化解消を促進します。

AI SHIFT社は、オペレーターと顧客の会話を要約するサービスを開始。金融業界での実績があり、効率的なACW(アフターコールワーク)を可能にし、修正がほとんど不要な高い要約精度を誇ります。

グローバルベンダーの生成AI活用もいくつかご紹介します。

Salesforce社はEinstein GPT Serviceを用いて、Einstein Service Repliesを提供。AIによって生成された返信を利用し、オペレーターの処理時間を短縮します。

Zendesk社は「拡張エージェント応答」ソリューションで、エージェントが最低限の応答を入力し、それを文章で肉付けできるため、デジタルチャネル全体での顧客応答時間の短縮を実現します。

NICE社はEnlighten Actionsを活用し、顧客の感情傾向を監視し、感情が低下した場合や特定の行動が起きた場合にSVに警告するサービスを提供。

ジェネシス社はAgent Assistを通じて、オペレーターが顧客との会話終了後に全ての会話を数秒で要約しCRMにアップロードが可能。要約形式の標準化を通じて、次の担当者が前回の内容を迅速に把握できるようなります。

これらソリューションベンダーの取り組みは、顧客サポートの効率向上や品質向上に寄与し、生成AIの活用がコンタクトセンターにおいて広く受け入れられつつあることを示していると言えるのではないでしょうか。

モビルス社の取り組みといえば

2022年11月に生成AIが登場し、2023年の早い段階からモビルスも生成AIへの開発の取り組みを始めました。理想のゴールとしては生成AIがエンドユーザー向けの直接回答行うことを目指す一方で、まずはコンタクトセンターのオペレーション向けに着実な展開から取り組んでいます。

2023年秋にかけて電話・チャットボイス・ノンボイスにおいて音声認識や対話要約生成、FAQ生成などの実用的な機能をリリースしてきました。

今年2024年春に向けては、オペレーターを支援する機能の充実を計画しています。ドキュメント検索や回答文サジェスト、回答文提案機能など、オペレーター支援の機能の開発を徹底的に行い業務効率向上を図ります。

コールセンターのもっとも深刻な経営上の課題として、オペレーターの採用や育成に関する課題があることにも着目しています。スーパーバイザーや管理者の業務負担を軽減する目的で、採用プロセスに生成AIを活用した面接や、オペレーターのロールプレイング、理解度テスト、対応評価などの機能を実現することで、オペレーションにおける本質的な問題解決を目指します。2024年後半には、この領域の開発に注力していく予定です。

図3修正3

※出典:コールセンター白書2022 / 2023

モビルスの生成AI展開は、単純な回答提供機能以上の次元に進化し、コンタクトセンターの運用や人材育成において新たな可能性を切り拓いてゆきます。

現状の生成AI活用においてクリアすべき課題

各社の取り組みやモビルスの取り組みは業界として積極的に行うべきですが、一方で生成AIの利用にあたってはいくつかの懸念があることには注意を払っておく必要があります。

まず、セキュリティです。Microsoft Azure OpenAI Serviceなど信頼性の高い環境を利用すれば、高いセキュリティ標準とコンプライアンスにより、個人情報や機密データの取り扱いにおいてある程度信頼性を確保できますが、各企業においての個人情報取り扱いのポリシーなどは明確にしておく必要があることと、情報の機密性によっては慎重な利用判断が求められます。

2つめに、生成された情報が事実と異なる場合があるハルシネーションのリスクがあります。これに対処するためには、企業内部に蓄積されているデータやナレッジを整理し、カテゴリー分け、タグづけ、履歴管理などのナレッジマネジメントをしっかりと行い、正確性や適切な利用を確保する仕組みが求められます。

3つめは、コスト面でデータセンターGPU利用に伴う利用側の負担となる高いコストが課題となります。データセンターGPUは、生成AIの中枢である最新データセンターの膨大な計算需要に対応するために設計された専用GPUを指しますが、そのほとんどがNVIDIA1社によって牽引されてきました。また基盤モデルとプラットフォーム市場は現在OpenAI社がリードしているため、ChatGPT3.5であればかなりリーズナブルに活用できるようになってはきましたが、ChatGPT4はまだまだコストメリットを見出すには難しい状況かもしれません。特に日本企業の決裁や稟議においては、従量課金への抵抗感を示す傾向がありますので、ROI(費用対効果)を事前にしっかり見出す必要があります。

4つめはサーバキャパシティの増加による負荷です。上記のナレッジ管理や個人情報の処理が複雑化し、これが利用企業のサーバの負荷を増大させる可能性があります。

5つ目は社会全体としての膨大な電力消費による環境面での負荷問題や、多頻度の生成AI利用で情報の画一化に陥り、情報の正確性と公平性の担保も懸念されます。

最後に、生成AIを利用した文字起こしや音声認識の精度において、日本企業の運用におけるマインドセットの変革が必要になります。どうしても国民的な気質のためなのか100%の完璧を求める傾向があるため、そこを軽減し柔軟性や効率性を重視する方向への意識変革こそが重要になります。

上記の通り、生成AIの利用には技術的な進歩と同時に、倫理的な視点や社会的な側面への配慮は必要になってきます。また安全性と社会に対する影響を考慮しながら、持続可能で有益な価値提供を実現できるかが試されるのではないでしょうか。

2024年の展望 企業に期待すること

ただし、上述のような課題やリスクを前にして足踏みしていると、グローバルを含めて競争している他企業においてゆかれる可能性もあり、せっかく進歩している技術の恩恵を受け取れないことのデメリットの方が大きいので、多少のリスクを取ってでも生成AIを積極的に活用して行くことが求められます。

少なくとも社内活用でオペレーションする側の利便性、効率性を上げるということからでも積極的に取り入れて頂きたいですし、究極的かつ中長期的にはエンドユーザー側のつまづき、悩み、不満を良いCX(顧客体験)へ変えてゆくメリットがあるからこそ是が非でも取り組んで欲しいと思います。

昨今の経営のテーマになっているCX(顧客体験)にもつながりますが、プロフィットに貢献できるような、業績に直結するための役割、営業やカスタマーサクセス寄りの役割が、生成AIを活用することによって産み出された時間を活用するオペレーターやスーパーバイザー、管理者の役割となってくるはずです。

今は取り組めていなくても理解している企業は多いと思いますので、業界全体、社内全体で取り組む必要があります。生成AIを活用することは、地道ではありますがデータ基盤を整備することと、長期的に人材を育成しながら粘り強く取り組んでいくことが重要です。何か少しでも懸念があるのであればソリューションベンダーにぶつけてしっかりと壁打ちをしながら一緒に考えて頂ければ上記に挙げた課題の払拭はできると信じています。日本企業は変革に慎重ながらも、上記のオペレーションのマインド変革に加えて、独自の製品・サービス・価値観を有しており、それが競争力となりえますので、業界全体で取り組んで行けたらと思います。


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Mobilus SupportTech Labは顧客サポートを進化させるテクノロジーの調査や普及を目的として設立したラボです。具体的には調査レポートや、ホワイトペーパー、導入事例、対談、トレンド記事を発信しています。

執筆者紹介

柏原 学 氏
柏原 学 氏
モビルス株式会社 マーケティングディビジョン
執行役員 マーケティングディビジョン長


1999年 早稲田大学卒、ソニー株式会社およびソニーモバイルコミュンケーションズ株式会社にて、コンシューマーエレクトロニクスとモバイル通信業界で、セールスマーケティング、商品企画、ポートフォリオと多岐にわたる経験とグローバルビジネスでの実績を持つ。2003年~2008年の期間米国および中南米諸国にて従事。2015年末シリコンバレーから帰任。2016年モビルスに参画。製品開発、企画、CX、UI/UX統括を経て、現在はマーケティングを統括。
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